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番外編【当たり前に】奏斗side 1

 今日は四ノ宮と一緒に、真斗に会うことになった。  付き合うことになったって連絡したら、会いたいなって言われて、四ノ宮に聞いたら、いいよって即答してくれたから。  真斗には色んなことを知られてる。  と言っても、オレが一夜限りの関係を持ってた、とかは当然知らないけど。  四ノ宮とは終わった、と伝えていたから、安心させたかった。  真斗は弟なのに、この件に関しては、心配かけてばっかりだったし。  真斗は、四ノ宮さん推し、なんて言ってたし、四ノ宮は、真斗とか呼んでたけど、近くで会うのはほとんど初対面みたいな感じだった。最初に、隣同士だって判明した時に少し会ったのと、後はバスケの試合を観客席から応援しただけ。四ノ宮は真斗のことを応援して見てただろうけど、真斗からこっちは、そこまで見てもなかったし。  喫茶店で待ってた真斗に近寄った時、実はほとんど初めましてだよねと思って、気まずいかなと二人を見ると。二人は、顔を見合って、なんか楽しそうに笑い合った。  四ノ宮は真斗の前でもいつも通り。  真斗はいくつか質問したら、もういいやと思ったみたい。  四ノ宮と真斗は、楽しそうに、今度バスケしよう、とか話してるし。  ……なんかオレは、嬉しいのが抑えきれなくて、ずっと微笑んでた、気がする。  真斗と別れて歩き出すと、なぜか真斗はそのままオレ達を見送ってる感じ。振り返ってバイバイすると、ちょっと笑って手を振り返してくれる。 「真斗ってさ」 「ん?」 「奏斗の兄貴みたい?」 「……んん?? んー……」 「なんか弟っぽくないよね?」  クスクス笑う四ノ宮に、オレは、んー、と考えながら、もう一度振り返った。やっと逆方向に歩き出した真斗を見て、また四ノ宮に視線を向けた。 「真斗にはいっぱい心配させちゃったから……なんか、ちょっと、精神年齢だけ、オレのせいであがっちゃった気がしてる」 「なるほど……」 「母さんは、どう声をかけていいか最初分かんなかったみたいでさ。父さんが結構すごかったし。家の中で庇ってくれてたの真斗だし」 「ん。そっか」 「……真斗が居たから、オレ、少しは保ててたのかもしれない」 「ん」  四ノ宮はじっとオレを見つめて、それから、ふ、と微笑む。  手がぽんぽん、と背中に置かれる。 「真斗居て良かったね」 「うん。でもちょっと悪かったなーと思ってるけど」 「大丈夫だよ。奏斗のことが好きだからしてた心配だし、色々考えられるようになって、大人っぽいのは、悪いことじゃないし」  言いながら、四ノ宮は、クスクス笑う。 「でもなんか、奏斗の方が弟みたいに見えて、可愛くて笑っちゃうけど」  そんな風に言われて、苦笑いを浮かべていると、背に触れてた四ノ宮の手が、肩に触れた。 「これから安心させてあげられたらいいんじゃないの。で、今度は、奏斗が、真斗の話とか、聞いてあげれば?」 「……ん。そだね」 「奏斗にはもうオレが居るし」 「――――」  ぱ、と四ノ宮を見上げて、数秒見つめ合った後。  ふ、と吹き出してしまった。 「四ノ宮も年下なんだけどなー……それに、いつも思うけど」 「ん?」 「……普通の時に、よくそんな、まっすぐ言えるよね。照れるとか、ないの?」 「無いなー。つーか、知ってるでしょ、オレが思ってること全部。繰り返してるだけだし」 「それだって照れるじゃん……」 「いいよ、奏斗が照れてんのは可愛いから。オレは全部言うけど」 「もー外で大きい声で可愛いとか言うなよ」  オレは小さめの声でそう言うのだけど、四ノ宮は「奏斗が可愛いなんて通りがかりの皆も納得するから大丈夫」とか、訳の分からないことを言って楽しそう。 「声でかいってば」  ただでさえ、四ノ宮と歩いてると目立つんだからさぁもう。  とことこ速足で歩きだすと、笑いながら、待ってよ、と腕を引かれる。  とん、と、四ノ宮の体に背中が軽くぶつかる。 「じゃあ小さく言うから」 「言わなくていいってば」 「――――」  オレの耳に、唇を寄せて、両手で隠して、内緒話。  ん、と聞く体勢を取ってしまうと。 「奏斗、大好き。照れてんの、すげー可愛い」 「――――」  オレはもう、眉を寄せて、四ノ宮から離れて、また歩き出す。 「もーほんとに……」 「これならいいでしょ?」  クスクス笑いながら、隣に並ぶ四ノ宮。 「真斗、いつ泊りに来るかな。好きなもの聞いとかないと」 「……うん」  楽しそうな四ノ宮の笑顔に、ふふ、と笑いが込み上げる。 「さっき、ごはん美味しいとこって言ったじゃん、オレ」 「うん。言ってたね」 「真斗が、それが一番って、四ノ宮さん、気を悪くしないの?て聞いてた」 「へえ?」  四ノ宮はちょっと首を傾げて、それから、ふ、と笑う。 「つか、オレ、嬉しかったけど? 奏斗に美味しく食べてもらいたくて頑張ってる訳だし。胃袋つかめてるな~て思いながらトイレ行った」  楽しそうに笑う四ノ宮の顔を見ながら、全部聞いて。  ――――……あぁ、なんか、ほんとに……。  我慢できなくなって、四ノ宮の腕をちょっと引いて、唇を耳に寄せた 「……オレも、好き」  言うと、ふっとオレを見下ろして、めちゃくちゃ見つめてくる四ノ宮。 「早く帰ろっか」 「え? 映画みて帰るとか言ってなかった?」 「早く二人になりたい」 「え。うそ。映画みようよー」 「早く帰ろうよ」 「嘘だろもう、今言ったの無し、やっぱ、無しってことで」 「もう聞いたから、無しは無し!」 「えー……」  なんて、言いながら。  どちらからともなく、ぷ、と吹き出す。  ああもうなんか。  ……毎日、楽しいなぁ。なんて。思いつつ。  映画行くか帰るかで、延々、笑いながらのやりとりが続いた。  ――――映画はちゃんと行ってから、帰って。  帰ってすぐ、抱き締められたけど、ね。 ◇ ◇ ◇ ◇ 真斗サイドおまけ終了♡  (2024/1/16) また違う番外編で♡

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