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第1話
▶︎勇者は魔王をやっつけた!
▶︎勇者は後ろを振り返った。しかし仲間の姿がない。
▶︎世界と魔界をつなぐ扉が閉じられていく。
▶︎勇者は魔界に閉じ込められた!
勇者は魔界の扉を開けようとした。
しかし扉は固く閉ざされ、結界が張られている。
勇者は仲間を呼んだ。
しかし返事がない。
勇者は祈った。
しかし何も起こらなかった。
魔界の扉は開かない。魔物も仲間もいない暗闇の世界に一人だけになってしまった。
勇者はそれでも仲間を疑ったりはしなかった。そうできないのが勇者の性分だった。
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扉を開けようと、何度も体当たりしたり、切りつけたり、魔法で攻撃してもびくともしなかった。魔力がなくなり疲れ切った勇者は壊滅した魔王の城の床で眠った。何度試しても扉は動かない。
何度目を覚ましても勇者は魔界にいた。太陽も月もないない空、溶岩の湖、岩ばかりの山。荒れた魔界を出て豊かな地上に帰りたかった。
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長い年月が経ったが魔界の扉は開かない。願いや祈りも通じない。魔界に知性あるものは勇者しかいなかったので言葉すら忘れそうだ。
魔王が倒れ、管理するものもいなくなった城は朽ちて行った。たとえ魔王の作った城であっても、生命がいた名残が消えることを寂しく感じた。
勇者は時々自然に発生する魔物を倒してはそれを食べて飢えを凌いでいた。魔物を倒して手に入る高価な金属や宝石も人がいない世界では役に立たないものだった。ただ、美しい鉱石を集めることは、娯楽も何もない世界ではとても楽しいものだった。
勇者は宝石を集めては魔王の城に並べて眺めていた。
特段気に入った特別大きなダイヤモンドを玉座に置いて、大事に扱っていた。
そんな宝石集めも長い月日が経つうちに飽きてしまった。魔物を倒しているうちにレベルも上がり、簡単に倒せるようになったことで刺激がなくなった。宝石は王座のダイヤモンドより大きなものが出なかった。
魔界の扉は開かない。長い年月何度開けようとしても決して開かなかった。その度に小さな絶望味わった。
そうして、希望を抱いては絶望を味わうということを繰り返すうちに勇者は希望を抱かなくなった。深い絶望だけが残った。そして勇者は魔界の炎に身を投げて死んだ。
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勇者は深い眠りから目を覚ました。長くて嫌な悪夢を見ていたようだった。
かつては日常の一部に過ぎなかった温かい布団や柔らかいベッドにすら感動して涙が流れる。大きな声で泣いているとコンコンと誰かが部屋をノックした。
「お..お目覚めですか...!?」
ドアの向こうから声がした。
人の声など随分と長いこと聞いていないような気分だ。
「この寝床を用意してくれたのはあなたですか!どなたかわかりませんが本当にありがとうございます!」
喉が閉じて大きな声は出せなかった。人と喋ることが随分と久しぶりのことに感じた。
「あなたをここに連れてきたのは王様です。王様があなたに会いたがっています。身支度が整ったら部屋の前にいる私に声をかけてください。」
どうやらここはどこかの城のようだ。かつて世界の全てを巡った勇者ですら、この城がどこにあるか覚えていなかった。
身支度を済ませてドアを開けるとそこには二足歩行のドラゴンがいた。少々面食らったが、エルフの里、人魚の城、動物の街などたくさんの世界を見てきた勇者は動揺しなかった。
「それでは案内しますね」
そのまま流されるように王のいる場所へと連れて行かれた。
どれだけ旅に慣れていても見知らぬ国の王様に会うのは緊張するものだ。
大きな扉が開く。
「おお!!勇者よ!!目覚めたか!!」
王は嬉しそうな声で語りかけてくる。しかしこの男はどう見ても魔族だ。
いつの時代も魔族は人間と敵対していた。
それなのにどうしてか敵対心を感じなかった。
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