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第307話 白き世界の幽囚 其の九 ★

「──……──っっ……!!」  その叫び声は言葉にならなかった。  一度捨て置かれた胎内の法悦が、『香彩(かさい)』のものと相俟ってこれでもかと襲い掛かる。一気に奥を責められた衝撃は、香彩を白濁を伴わない悦楽の境地に追いやった。  その白い背中を反らせ、身体を震わせる。  法悦は、これでもかとばかりに、ぎゅうと竜紅人(りゅこうと)の熱楔を奥へと誘い込むように締め付ける。その狂おしさに竜紅人は、低く唸りながら射精感の促されるがままに、どくどくと熱を放った。 「……ぁ……ぁ……っ!」  数回に分けて吐き出される、真竜の白濁の熱さを感じる度に、胎内(なか)の快楽に襲われる。  しかもそれは自分だけではなかった。  もう一人の自分が感じている気持ち良さもまた、香彩の脳裏を犯し、淫らに染められていく。 「──っっ、あぁぁぁ……──っ!!」  まさにそれは拷問のような、淫悦だった。過ぎる法悦は気持ち良さの暴力のようだと、片隅でそんなことを思いながら香彩は、いやいやと激しく頭を振る。  そんな香彩を極上の馳走だとばかりに、竜紅人が荒い息を吐きながら舌舐めずりをした。  灼熱を胎内(なか)に吐き出しながらも、なお硬く抽送する剛直に、香彩は悲鳴にも似た嬌声を上げる。 「はぁ……あっ、あぁ……ああっ!いやぁ……っ」  既に蕩け切った二つの花蕾からは、受け止め切れなかった熱が溢れ、(いざらい)を伝っていく。  それでも激しく穿ち、胎内(なか)を捏ね回す剛直は衰えることを知らなかった。竜紅人が動く度にその秘蕾からは煽情的な水音が聞こえ、その白濁が泡立つ。  じゅく、じゅくと。  わざと水声が立つように腰を使う彼をどこか恨めしく思うも、その音すらもう最早、快楽の材料でしかない。 「……はぁ……かさい……」  くつり、と竜紅人が耳元で笑い、甘く掠れた声で香彩の名前を呼ぶ。  舐めて、と壮絶な色気を含んだ低い声が耳に吹き込まれて、剛直を食む胎内(なか)の締め上げが(いら)えの代わりとなった。  二人の香彩の間に差し出されるのは、竜尾の先端だ。この先から溢れ出る蜜の甘さをよく知っている。  香彩は少しだけ顔を動かして、竜尾の先端を口腔に咥え込んだ。男根を口淫するように、硬くした舌先で円を描きながら舐めて吸い上げる。口の中に広がる花の蜜のような甘い体液を、こくこくと喉音を立てて飲み込む。  この先端が先程まで『香彩』の淫口を責めていたのだ。そう思うだけで湧き上がってくる苦い嫉妬の心のままに、香彩は先端を強く吸った。低く呻いた竜紅人の声を聞くことで溜飲を下げる。  仕返しとばかりに奥の蕾に、鈴口をぐっと捏ねるように擦り付けられて、香彩はくぐもった艶声を上げた。  気付けば『香彩』も負けじとばかりに、竜尾を舐めている。香彩が飲み切れずに伝う真竜の蜜を、薄桃色した舌を突き出して味わうその姿は、まさに自分そのものだ。  

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