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第400話 竜の寵愛 其の七
それが見てみたかった。
お前の艶美で愛らしい姿を見ていた蒼竜が、忌々しいと思う程度には。
いつか見せて貰いたいもんだ。
喉奥でくつりと笑いながら竜紅人 がそんなことを言う。
慈愛と色欲に満ちた目で見つめながら、どこか酷薄にも口の端でにぃと笑みを浮かべる竜紅人に、香彩 の顔は更に熱くなる。同時に背筋に何やら薄ら寒いものが走った。先程も嫌な予感を感じたばかりだが、それが更に強くなる。
いつか、と竜紅人は言った。だからいつか来るのだろうか。
寝台に座る竜紅人に向かって、離れた場所で衣着を脱ぎ捨てた自分が、白い裸体を晒しながら歩く、そんな日が。彼がどんな瞳で自分を見つめるのか、どんな言葉を自分に掛けるのか容易に想像が出来てしまう。背筋を先程のものとは全く違う、官能に満ちた粟立つものがぞくぞくと駆け上がって来て、香彩は身体を震え上がらせた。
その震撼が直に伝わったのか、竜紅人が先程よりも更に深く妖艶に笑む。
「今は思念体じゃねぇけど……分かる。お前が何を想像したのか」
「──っ!」
「二人の時間はこれからたくさんある。それはいつか絶対に見せてもらうとして、だ。かさい……今は仕置きの方が先、だな」
「え」
尾骶を弄んでいた竜紅人の手が、香彩の背中を支える動きを見せた。そのまま少し身体を持ち上げられて、彼に跨っていた体勢から、押し倒されるような体勢になる。背中への衝撃が少しでも和らぐようにと、添えられた手が優しく抜かれた。背に厚手の敷物の感触がしたと思いきや、両の膝裏を持たれて足を開かされて、香彩は顔に朱を走らせる。
全てが良く見える体勢だ。
若茎の綺麗な裏筋も、まあるいふぐりも会陰も、蒼竜の熱をとろりと流しているひくついた後蕾も。
全てを目の前にいる想い人に見られているこの体勢は初めてではないが、決して慣れることはない。恥ずかしくて堪らないというのに身体を奥がどうしても疼き、ひくついた後蕾からは熱が更に溢れて臀を伝っていく。
「こんなにも溢れさせやがって……」
はぁ、と竜紅人が熱い吐息を洩らしながら、香彩の足を更に前へと倒した。
敷物と背中の間に冷たい何かが入り込んできて、香彩の上半身は半ば強制的に起こされる。視界の端に捉えたそれは竜尾だった。だが竜尾はいつもよりも大きく、そして長いように思える。足は未だに竜紅人に前に倒されていて、身体の柔らかい香彩でも少し苦しい。
「りゅ……う……っ!」
訴えるように香彩は竜紅人の名前を呼んだ。
だが応えの代わりに返ってきたのは、竜尾のしゅるりと擦れる音だけだ。
気付けば背中を太い尾身によって支えられながら、足を山稜のような形で大きく開脚した状態で、上半身ごと長い竜尾によってぐるりと巻かれて固定されていた。
「──りゅ……!」
声を上げようとした香彩は、巻き付けられた竜尾ごと宙へ持ち上がっていく自分の身体に、思わず言葉が詰まる。
似ていた。
夢床で香彩の罪悪感の化身でもあった蜘蛛によって、竜紅人の望むように拘束されていた、あの時の体勢に。
竜尾によって縛られた状態で竜紅人と目が合う。
愛しい者を見る色を乗せながらも欲にぎらつき、そしてどこか怒気を含んだそれに、香彩はひくりと喉を震わせた。
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