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1-対面式ドリンキングバード(1)

『接待』って言葉があるじゃん。 お客さんをもてなすこと。 ビジネス絡みのお客さんをもてなすシーンで使うことが多いよね。 食事したり、ゴルフしたりとか。 で、俺、白田有理(ゆうり)城崎(きのさき)部長も今接待してるんだ。 そう。接待する側。俺はもう帰るんだけどさ。はは。 「では、私はここで失礼いたします」 俺は笑顔で頭を下げた。 先方の竹田部長と武藤さんも多少酒が入っているとは言え、にこやかに見送ってくれる。 「城崎さん、白田さん、今日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いします」 いたって和やかな空気がこの場を暖めている。 俺の経験から言っても、接待としては『成功』と言っていいと思うんだ。 いやまあ、胸張って経験豊富って言い切るほど場数を踏んでる訳ではないんだけども。 そういう訳ではないんだけども。 でもさあ! 納得なんかできないじゃん!! あ、ごめんね急に大きな声出して。ちょっと気がたかぶっちゃってさ。 接待の場で、なんでお客さんをおいて俺だけ先に帰らされるの!? なんで? どういうこと? どういう意味? 笑顔を見せてくれているけど、実は俺、踏んではいけない地雷踏んじゃったのかな。 それとも、俺が気づいてないだけで、無礼者だった? 無礼過ぎて怒り心頭に達して、もう笑うしかない、みたいな。逆に。 そうなんですか? どうなんですか、部長? 手荷物を抱えてわざとのろのろ退出しながら、横目に城崎部長を見やる。 一瞬目が合ったけれどすぐに逸らされて、先方に分からないよう、早く退けと後ろ手で追い払われた。 ただそれだけの仕草でも今の俺の心にはぐさりと突き刺さる。 そんな……。しっしっ、ってしなくても……。 俺のハートはガラスのハートなんですよ……。 そもそも、この場に城崎部長がでてくる必要なんてなかった。 俺と、もう一人一緒にこの案件を担当している先輩社員の二人で応対する予定だった。 それなのに急に先方から、部長も同席したいと連絡があった。 先方の部長まで出てくるなら、こちらも相応の対応をしなければならない。 慌ててうちの部長――ここにいる城崎部長――に確認したら、問題ない、出席するとのお言葉をもらった。 当日は二人で来るとのことだったので、まだ幼いお子さんをお風呂に入れるという重要任務を背負っている先輩がなんとなく抜けて、俺と城崎部長の二人で接待する、いつの間にかそういうことになった。 まさか最終的に俺も追い出されることになるなんて予想だにしていなかったんだけど。

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