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1-対面式ドリンキングバード(6)
人事部の人に簡単に社内の案内をしてもらって、その後。
案内してくれた人は、ではまたって言って、戻って行った。
折よくお昼休みみたいだし、俺はお昼ご飯にしようかな。
教えてもらったばかりの食堂に行って、適当にメニューを選び、トレーを持って席につく。
まだ混む時間には早いみたいで、あちこちに空席が見える。
さーてさてさて、いただきます。
メインのおっきい唐揚げに早速齧り付く。ん。まあまあだな。
もぐもぐと昼食を一人満喫していると、スーツのポケットでスマホが震えた。
ぷるるっ。
誰かからメッセージだ。
こんなド平日のお昼時に誰だろう。心当たりはない。
『しろやん! 今お昼?』
久しぶり、もなしに、勢いよく体当たりしてきたのは、大学時代の友人だった。
――そうだよ。会社の食堂で食べてる。
『しろやんもしかして転職した?』
何で知ってるんだろう。
――うん。今日初日。
『ちょっと後ろ向いて!』
は? なんだよもう、食事中だって言ってるのに。
俺はしかたなく箸を置いて振り返った。
途端に、こっちに向かってやって来た男が一人いた。
「ほんとにしろやんじゃん! 全然変わらな過ぎて逆に人違いかと思った!」
ひょろりと背の高い痩せた男が、人の良さそうな笑顔で俺の向かいの席を引く。
いかにも良い人然としたこいつは、灰谷 九次 。大学の同窓生で実際良い奴だ。
「灰谷、東栄に就職してたんだ」
「そうだよ。あっ、ちょっと待っててね。俺も飯買ってくる。ここ取っといて」
「うん」
灰谷がカウンターに向かうのを、付け合わせの漬物を齧りながら見送った。
この感じ、学生時代を思い出すな。
午後から講義があるんで、早めに来て食堂で昼食を摂っていたら、午前の講義を終えた灰谷が食堂に来て、なんとなく合流する情景。
……ぱりぱりもぐもぐ。
灰谷は案外早く戻ってきた。
「今日の日替わり定食、美味しいやつだったー! このね、メンチカツが好きでさぁ」
喜々として俺の向かいに座る。
その様子を見ていて思い出したけど、灰谷は喜怒哀楽のうち、喜と楽の割合が大きいんだった。陽気で幸せな奴なんだ。
そして。
「きのぴーはこっちに座りなよ。ほら、早くしないと担々麺のびちゃうよ」
「いえ、私は……」
灰谷が後ろにもう一人連れている。
この声は聞いたことがある。それどころかさっき聞いたばかりの声だ。
心臓がどくんと跳ね上がる。
「久しぶりの再会なんでしょう? お二人でゆっくり旧交を暖めたらいいじゃないですか。私は向こうで食べてますから」
「なんでよー。旧交は夜飲みで暖めるしきのぴーが気を遣うことじゃないの。いいから座る! ごちゃごちゃ言うなんてきのぴーらしくないよ! のびるよ!」
「そんなすぐに麺はのびませんよ……。はあ。私らしさってなんですか……」
不服そうに灰谷の隣の席についたのは、城崎さんだった。
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