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「――どうした?」 「何が」  問うてくる茂が何か言おうとするのに構わず、もう一度キスする。茂の腹に手を回して、Tシャツの中に入れた。何度もその肌を撫でた後、今度は下着の中に潜らせる。 「――ん、藤代」  茂が唇を離して呼び掛けてくるが、離された唇で今度は茂の頬に口付け、それから耳たぶを軽く噛んだ。茂がわずかに肩をすくめる。下着の中に入れた手で下生えの感触をなぞり、その下にある温かくて柔らかいものを軽く握ると、茂がかすかに反応した。 「あ……なあ」 「ん?」 「……」  しばらく触った後そこから手を放し、そのまま茂の下腹を撫で、手に触れた臍の穴をくすぐる。 「……なあ」 「ん?」  同じ遣り取りを繰り返す。茂は呼び掛けた後の言葉を口にしない。その代わり、高志の太腿にその手を伸ばして触れてきた。 「……勃ってる?」  体を密着させているせいで、茂の臀部の形や弾力が直接高志の下半身に伝わってくる。その双丘の間に無意識に自身を押し付けているうち、高志の下半身は少し硬くなってきていた。  そしてその変化を茂も背後で感じたようだった。 「勃ってない」  高志がそう言ってごまかすと、茂が呼吸で笑う。そのかすかな振動を感じながら、高志はもう一度その耳の下にキスした。 「……勃ってる」  やがて高志が認めると、茂は「うん」と頷いた。高志は様子を伺うように、その首筋にまた口付けた。 「――細谷」 「ん?」 「体、しんどい?」  仄めかすと、茂はまた少しだけ振り向いて笑う。 「もう一回?」 「お前が平気なら」 「ていうか、風呂入る前に言えって」  茂が冗談ぽくそう訴えてくる。 「ごめん」  高志は茂の肩に軽くあごを載せた。 「後でもう一回入って」 「お前、どうした?」 「何が」 「……」  とぼけて問い返すと、茂は何も言わなかった。高志が二回目を求めるのは初めてだった。 「しんどい?」  もう一度聞くと、茂は首を振った。 「大丈夫。でもこのままして」 「え……後ろから?」 「うん」  その言葉は少し意外だった。再会して再び体を重ねるようになってから、茂は常に顔が見える体勢ですることを望んだ。現にさっきまで抱き合っていた時にも、いつものように茂は仰向けの姿勢で高志を受け入れた。高志自身、大学時代の、体を強張らせていたあの茂の背中を思い出せば、後ろからしたいとは思わなかった。 「このままして」  茂がもう一度言う。  頭の中で必要な動作を一通りシミュレーションしてから、 「少しだけ動いていいか。準備するから」 と高志が言うと、茂は枕に顔を伏せるようにしながら頷いた。

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