129 / 139

ふたりきりの時間③

 顎先に指を添え、上を向けられた。  この後きっと僕は、彼にキスをされて……そしていつもみたいに押し倒されて、意識を飛ばすまで抱き潰されてしまうに違いない。  でもそれが分かった上で、僕はこの人の部屋に足を踏み入れた。  それどころかもしかしたら抱かれるのを期待し、楽しみにしてすらいたかも知れない。  予想した通り、当たり前みたいに僕に触れた西園寺さんの柔らかな唇。  自らの意思で口を開き、彼の舌先を迎え入れた。  背中に腕を回し、夢中でキスを求める僕。  こんなはしたなく淫らな自分も、彼と出逢うまで知らなかった。  しばらくすると西園寺さんはクスクスと楽しそうに笑いながら、呼吸を乱し、半ば放心状態にあった僕の耳元で囁いた。  ちょっと上ずった、色っぽい声。  それに反応し、体がビクンと震えた。 「陸斗くん、寝室に行こっか?」  まだ余裕らしきその表情が、ちょっぴり憎たらしい。  ......僕はここが何処なのかって事が分からなくなるぐらい、キスに夢中になっていたというのに。  だから僕は無言のまま彼の体に馬乗りになり、再び口付けた。  驚いたように見開かれた、彼の瞳。  だけどそんなのは、ほんの一瞬で。  ……西園寺さんはニヤリと口元を歪め、僕の腰に手をやったかと思うと、既に大きく隆起したモノを僕の後孔にグリグリと押し当てた。   「んっ......ふぁ......!?」  予想外の刺激に、また体が震えた。  それに驚き、彼の顔をじっと見下ろした。  するとペロリと舌舐りをして、西園寺さんは意地悪く告げた。 「ホントいやらしくなったよね、陸斗くん。  まぁでもそうなるように、俺が仕込んだんだけど」  仕込んだって、何だよ?……らっきょうや、梅干しじゃあるまいし。  調子に乗るなと、言ってやりたかったのに。  ……僕の唇からは、ただ卑猥な吐息だけが溢れた。

ともだちにシェアしよう!