14 / 696

第14話

自動車が停止したのは隣町との境目にある土手。 キャンプが出来る川縁は誰もいない。 車もだ。 暗くて見張らしも良く、絶好のカーセックス場所。 憩いの場所として使っている人達には申し訳ないほど、暗がりではそういう為の場所に見えてしまう。 「お待たせ。 良い感じに焦れてんな」 振り向く恋人の顔は既に男のそれで、頭の中が更に溶ける。 「早く……触ってください…」 「もう待ち切れねぇ?」 「ローター、が……」 運転席から後部座席へと乗り込んできた長岡は、ニヤニヤと緩む口元をマスクで隠したままじっと見詰めてくる。 放置の次は視姦か。 折角目の前にいるのに。 触れられたい。 触れて欲しい。 ベルトと前を寛げ、長岡の腕を掴んだ。 「ははっ、そんなにかよ。 此所だと見られるかもだぞ。 さっきみたいにジョギングしてる人が通るかも知れねぇ。 ほら、上の橋をトラックが通ってる。 それでも良いのか」 「…い…い、ですから……」 トイレからどれほど我慢した事か。 もう、疼いておかしくなりそうだ。 臍の下辺りがジクジクする。 勃起した時みたいで、それとはまた少し違う。 アナルもローターじゃ足りないと伝えてくる。 コンドームを装着していても良いからいっぱいにして欲しい。 淫らな我が儘は、今はまだ言葉にする事こそないが、長岡に伝わっている。 その証拠が、この顔だ。 焦らしに焦らして楽しそうに笑っている。 マスクをしていたって分かる。 目が、本当に楽しそうだから。 「あ……」 短く切り揃えられた爪先があたたかな下着越しに陰茎を掻いた。 たった一搔き。 それでも、恋人なら与えられたモノには違いない。 「こんだけで十分? 今日は、これでイくか?」 「ほし…い…」 コートの上から握る手首を少しずつ股間に近付けていく。 綺麗な人の綺麗な手を、そんな場所に近付ける罪悪感。 授業中、多くの生徒に見られる手をそんなところへと近付けていく興奮。 息が浅くなる。 心拍数が上がる。

ともだちにシェアしよう!