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第1話
「やだよ。そんなカチューシャ」
『猫耳をつけて』と年下の恋人の日依 に頼まれ、そう返事をした。
断った理由は単純。
こいつが以前『猫耳って可愛い』と言ったのがテレビで流れたオレより若いアイドルの猫耳コスプレ姿だからだ。そんなことを知ってる立場で『いいよ』なんて言えない。
「え? 速見 さん、何か怒ってます?」
こういう時、嘘が吐 けない自分にヘドが出る。
「……オレはアイドルじゃないから猫耳なんてつけない」
日依が目も口も見開いたまま固まる。
「……な、何だよ?」
固まったまましばらく動かないから、怪訝 に思って聞いたら、突然吹き出した。
「あー、そういうことですか! 可愛いなあ。確かにそんなことあったような気がしますけど僕が可愛いと言ったのは『猫耳』であってアイドルじゃないです。速見さんがつけたら可愛いだろうと思って」
……何だ、そうだったのか。
「そんなわけなんで猫耳つけてくれますか?」
こうなったらもう頷 くしかないだろ。
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