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第13話 光ママ

「キャー、ホントに金色綿菓子みたいにフワフワ〜 可愛い〜、可愛い〜 ねえ、陽一お婆ちゃんの髪みたいじゃない? 陽一お婆ちゃんもすっごいフワフワの髪だったのよね〜」 会って早々、未だ挨拶も済まないまま、 光のお母さんが僕の髪をワシャワシャと掻き回した。 「あ〜 茉莉花さん! 紹介もまだなのに、 なんて事するんですか〜」 陽向が慌てて止め入ったけど、 僕の頭は既にグチャグチャのヘロヘロになっていた。 「陽一お婆ちゃんちゃんって?」 乱れた髪を直しながらそう陽向に尋ねると、 「簡単に言うと、光のお祖父ちゃんのお婆ちゃんだよ」 と言う言い回しに、少し頭の中で階級を換算してみた。 ”光のお祖父ちゃん、(グランパ)の、お祖母ちゃん(グランマ)と言う事は…… お祖父ちゃんがグランパだから、その上がグレートグランパ…… その上になるから……グレート、グレートグランマだ!” とやっと、ずっと前のお祖母ちゃんだと言う事が理解できた。 「へーじゃあ、どっちかって言うと、 ご先祖様みたいな感じなんだね」 僕がそう言うと、 「ご先祖様って言い回しが凄いよね! サムって僕よりも日本人みたい! この中で一番、仏壇に手を合わせている姿が想像できないのに!」 そう言って陽向は笑っていた。 僕もへへへと言って得意げに笑っていたけど気を取り直して、 “ねえ、光ママ紹介してくれないの?” そう陽向に耳打ちすると、 「そうだね、そのために来たのに、 全く茉莉花さんが初っ端から大胆な行動してくれるから!」 そうブツブツ言いながらも、 「じゃあ、紹介が遅れたけど、 これが光の母親の茉莉花さん」 と言った後、 “彼女の事は茉莉花さんって言わないと、 ゲンコツ食らわれるから気を付けてね?“ とセリフを追加で耳打ちしてきた。 「チョット〜 陽向君! 最後の方、しっかり聞こえたから!」 そう言う光ママに、 「全く、茉莉花さんって地獄耳なんだから、 噂話も出来ないね!」 そう言って舌を出してお茶らけていたけど、 そんな二人のやり取りからは、 本当に仲が良いだなという事を伺わせた。 「あの……これ…… こんな豪華なパーティーには恥ずかしいくらいみすぼらしいんですが……」 そう言って小さな花束を差し出すと、 彼女は凄く喜んで受け取ってくれた。 「嬉しい! こんな可愛らしい花束もらったの初めて! 早速ブリザードフラワーにしておかないとね! 何時までもこの可愛さが楽しめるわね! 今日は美味しいもの食べてゆっくりしていってね。 今度は私のアフタヌーンティーにも是非いらしてね」 彼女はそう言い残すと、 ヒラヒラと蝶の様に人の合間を縫って、 スーッとどこかへ行ってしまった。 僕はクルッと陽向の方を向くと、 「忙しい人なんだね、 所で光と仁はどこに居るのかな?」 そう尋ねると、 陽向は既に目をある一点に向けて、 そこをジッと睨みつけていた。 その時の彼の表情が何とも言えなくて、 僕はどうしたのだろうと思った。 陽向の目線の先には勿論光が居たのだけど、 光が話をしているのは普通のオジサンで、 陽向は何故、彼らをあんな目をして見ているのか僕には謎だった。

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