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第18話 仁の好きな人

キスをする二人の姿は、 仁に取って見慣れたものだろうけど、 時としてはやるせない気分になるのだろう。 目を伏せて黙り込んだ仁には、何処か哀愁が漂っていた。 まるで知っていたのに知らなかったような、 嬉しいけど、見たくない物を見たような、 そんな何とも言えない表情から仁の好きな人が 光か陽向であることは直ぐにわかった。 “そっか、そう言うことか……” 普段は鈍い僕でも、 仁の顔はとても分かりやすかった。 二人を見た仁の周りは、 まるで時が止まったように、 空気がピンッと張り詰めた。 触ってしまうと直ぐに崩れてしまうような そんな危うさが彼の周りに醸し出された。 彼の表情からは、 何処かあきらめにも似たような、 それでいて二人を祝福するような そんな複雑さが伺えた。 僕はポンと仁の肩に手を置くと、 仁は僕をみて悲しそうに微笑んだ。 「今見たことは秘密な」 仁がそう言うと、僕は彼に向かってニコリとほほ笑んで、 「行こう!」 そう言って僕は仁の腕に僕の腕を絡ませて、 陽向達の所へと引っ張って行った。 「陽向〜、光〜! お腹減ってない?!」 僕がそう叫ぶと、 二人は僕たちの方を見て、光が 「ヨオ! 遅かったな! 一体何やってたんだよ~ 迷子になってるのかと思ったぞ! ほんと、ドンくさいな!」 そう言って悪態をついてみせた。 僕はチラッと仁の方を伺った。 仁が小さく呼吸を整えたかと思うと、 「あっ、お前〜 そう言うことを言う奴にはこのご馳走は無しだな! だから陽向だけに……」 とお皿いっぱいに乗せたご馳走を光の目の前にチラつかせながら、 仁はもう普通の態度に戻っていた。 陽向は仁からお皿を受け取ると、 「僕、もうお腹ぺこぺこ!」 そう言って先ず、魚でできたクリームコロッケみたいなのにかぶり付いた。 口元に付いたクリームが、 陽向のかわいらしさを更に引き出している。 光はそんな陽向の口元をペロッとなめると、 「ギャ~、何?!人前で!」 と騒ぎ出す陽向をよそに、 何度も彼の頬にキスをしていた。 目のやり場に困った僕だけど、 仁は何食わぬ顔でそのやり取りを見ていた。 僕は何とかその場の雰囲気を変えようとして、 「それにしても凄いパーティーだね。 横これだけの人物を集められたものだよね〜 それにあれ、本物の大統領でしょう? 僕ビックリしちゃった! アメリカ人の僕でさえ、遠目にも会ったことないのに凄いね!」 と話題を変え始めた。 でも光は不思議そうな顔をして僕をみると、 首をかしげながら、 「え? 大統領だよな? 初めて? そうなのか? もしかして前に会ったけど覚えてないだけだったとか?」 と僕に向かって言ったので、 「へ?」 と思いもしなかったセリフに戸惑った。 「ちょっと待って、大統領だよね? 会ったことあるって……そんな筈はないよ? しつこい様だけど、大統領だよね?  いくらなんでも会っていて、覚えてないって事はないよ?」 僕がそう言うと、 「それはそうだろうけど……おかしいな? 他人の空似? でも大統領、お前の名前を知ってたぞ? お袋か誰かが前もってセキュリティーの為に 招待客の素性を伝えてたのかな?」 光のそのセリフに、 僕は訳の分からない冷や汗が出始めた。 “まさか……、まさか…… 僕のやっている研究って大統領まで話が届いてるの?! それで大統領は僕の名前を知っている?! きっとそれはセキュリティーなんかじゃない。 大統領は裏の話を知ってるんだ! それくらい僕のやっていることは危険な事なんだ!” 僕はそれくらい世界をひくっり返す事ができる様な研究をしている。 “どうしよう? 陽向達の近くにいるのは 彼らを危険に巻き込んでしまう事になるかもしれない……” そう思っていると、 「お前、俺たちに相談があったんだろ? 今がチャンスだと思うけどどうだ?」 光にそう言われたけど、 新たに浮かんだ “危険” と言う疑問に躊躇してしまった。

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