“プッ、トムってば、 仁の事、勘違いしてるな。 カモフラージュに頼んだ事、 きっと仁達の事調べてて、 レーダーに引っかかったんだな…… でも仁達には一杯迷惑かけてるし、 トムにまで出てこられると、 ちょっとややこしくなるかもしれない……” 僕はそう思うと、 急に焦って言い訳をし始めた。 「トム！　何を言ってるの？！ 彼はそんなんじゃ無いよ！ 確かにカモフラージュで恋人役をお願いしたけど、 仁は僕が来日した時からずっと僕を助けてくれてる大切な友達なんだ！ 変なこと言って、彼らを僕の事情に巻き込まないで！」 そう言うと、トムは又口角を上げて、 「フフン」 と笑った後、 「まあ、今の所はそう言う事にして置いてやろう」 そう言うと、意味深な笑みを浮かべた。 そしてまた仁の方を向くと、 「私の自己紹介だったな」 そう言うと、 彼らの座る前を右に左にと歩き出した。 まるで軍隊のコマンダーのように。 2、3、度行き来したかと思うと、 陽向の前で立ち止まり、 陽向の顔を覗き込んだかと思うと、 “プッ” と吹き出して、 「君は陽向と言ったかな？」 といきなり英語で陽向を名指しに話始めた。 陽向は自分の名前が聞き取れたのか、 ”ヘッ？“ としてトムを見上げた。 僕はトムの腕をつかむと、 「トム！　日本語話せるでしょう？！ ちゃんと日本語で話してあげて！ どうしてそう意地悪するの？！」 そう言うと、トムは僕を見てニヤニヤとすると、 「陽向は可愛いな」 と僕に耳打ちした。 それが光に聞こえたのか、 彼は流暢な英語で、 「俺たちを揶揄うのもここまでにしてもらおうか？」 と丁寧ながらも、 少し怒った様な口調で言い始めた。 陽向は訳が分からず、 トムと光の顔を交互に見ていたけど、 トムは又フッと笑うと、 「いや…… 日本には可愛いΩが沢山いると聞いていたので思わず……」 と綺麗な日本語で話し始めた。 僕は陽向がトムのタイプど真ん中行くのを スカッリ懸念していた。 彼はこんな見てくれの割には 割とロマンチストな所があり、 誰かと付き合っては、 やっぱり違うと我儘を良いっては別れてを繰り返し、 もう直ぐ40にもなろうと言うのに未だに独身だ。 僕は慌てて、 「トム！　陽向にはちゃんと光と言う番いがいるんだから！ それに彼らはもう結婚もしてるんだから くれぐれも変なちょっかいは出さないよに！」 そう言うと、 陽向に直接向かって流暢な日本語で、 「済まなかったな。 君が余りにも魅力的だったので」 そう言って陽向の手の甲にキスをした。 光も仁も、 “は～っ？！” としたようにしてトムを見ていたけど、 陽向は陽向で、照れ笑いをしながら、 それがアメリカ流の挨拶と思ったのか、 「エへへ～、凄く日本語お上手ですね」 とトンチンカンな受け答えをしていた。 今手にキスをされた事は気なならない様だ。 僕はハラハラの連続で胃がキリキリとしてきた。 「トム！　自己紹介しないんだったら、 僕が勝手にやろうか？！ それでも良いんだったら、 洗いざらい、ある事、ない事、何でも喋っちゃうよ！」 少し起こった様な口調でそう言うと、 トムはもう一度咳払いをして、 「君たちの事は既に調べさせて貰ったよ」 と、また自己紹介とは違ったことを言い始めた。 「トム！　いい加減にして！」 そう言う僕を又仁が遮ると、 「まあ、そうだろうとは思いましたけどね」 と言う返答に僕は更にビックリした。 すぐに仁の方を向くと、 「え？　そう思ってたって……一体……」 と、少し困惑した。