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第29話 揶揄うトム

“仁?!” 他人に対して気難しそうなトムが、 仁に直ぐに打ち解けたことには驚きを隠せなかった。 それに二人の親密そうな雰囲気が何故か心に刺さった。 僕は気が付けばヒソヒソと囁き合う二人を引き離していた。 「トム!」 僕の突然の大声に皆がびっくりした様にして僕の方を振り向いた。 「サム…… どうしたのそんな大声出して?!」 今では状況も呑めてキッチンで朝食の支度をしていた陽向が タオルで手を拭きながらこっちへとやって来た。 僕はキョトンとした様に目を丸くして陽向の方を向くと、 初めて自分が大声を出していた事に気付いた。 少しその場の雰囲気を気まずくした僕は目を少しそらすと、 どもったように 「だっ……だってほら、ぼ……僕とトムは…… も……もう少し込み入った話をしないと…… そ……、そう! ほら、カブちゃんが……」 そう言い繕う様に焦って話す僕に、 「カブちゃん?」 そう陽向が尋ねた。 僕は陽向の方をもう一度向くと、 「あっ……」 と声を漏らして、俯いた。 「お前、大丈夫か? 腹でも減ってるのか?」 そう言って仁が僕の顔を覗き込んだ。 そんな僕をトムはニヤニヤとして眺めていたけど、 「ちょっとゴメン! ぼ……僕、トムとちょっと話すことが……」 そう言い残すと、 そそくさとトムの腕を掴んでベッドルームへと引っ張っていった。 そんな僕を陽向と仁は目をパチクリさせて眺めていたけど、 僕は耳まで真っ赤になっているのが自分でも分かった。 自分でも何故そんな不審な行動を取ったのか分からない。 本当の僕はこんな焦ったような態度をとる人間ではない。 こんな事は初めてだ。 急いでベッドルームへ入りドアを閉めると、 “フ~” っと息を吐きだしたかと思うと、 トムはいきなりそんな僕を見て笑い出した。 「何? 何がそんなにおかしいの?!」 僕がトムに食って掛かると、 トムは僕の頬にキスをして、 「俺のベイビー・ブラザーは本当に可愛いな」 と皆から姿が隠れた途端兄バカを発動させた。 僕は顔をトムからそらすと、 「辞めてよね、 僕もうすぐ30になるんだよ?! 何時迄も兄さん達のベイビー・サミーじゃ無いんだよ! それにしても何?! 僕の大切な友達にあの態度はないでしょう?!」 そう捲し立てた。 トムはそんな僕もお構いなしに頭を撫でると、 「何だ?! ヤキモチか?」 とニヤニヤしながら言い始めた。 「ハ〜?! ヤキモチ?! 一体何にヤキモチ?! ヤキモチの対象が無いでしょう?! それに仁にちょっと距離が近いんじゃ無いの? 初対面でそれは馴れ馴れしいでしょう?!」 そう言うと、トムは更にクスクスと笑って 「ほら、だから、それがヤキモチなんだろ?」 と更に訳のわからないことを言い始めた。 僕はトムをキーっと睨むと、 「だから、何で僕が仁にヤキモチを焼くの?!」 そうムキになって返すと、 「だってお前、仁の事好きなんだろ?」 とまたまた訳のわからない事を言い出した。 「だから、何で僕が仁の事を好きだって思う訳?! トムの見た僕には、どこにもそんな要素はないでしょう?! 何処をどう見たらそう見える訳?! それに僕にはちゃんとジュンと言う小さい時からの想い人がいるんだから、 そんなトムの勘での思い付きみたいな事は仁の前では呉々も口にしないでよね!」 そう言って攻め寄ると、 トムは自分に向けられた僕の指を自分の掌で押し戻すと、 フフンと鼻で笑って、 「ジュンね〜 お前、未だそんな事言ってたのか?」 と僕の長年の想いをバカにした様にしていった。 そんなトムの態度にイラっとした僕は、 「ジュンの事探せないと思ってるんでしょう?! 絶対見つけ出して恋人になってトムをギャフンと言わせてやる〜! 陽向や仁も協力してくれるって言うし、 絶対見つけてやるんだから! その時は覚えておいてよね!」 そうトムい顔に向かって投げかけると、 彼は目を見開いた様にして僕をキョトンと見た後、 首を傾げた。 「何その態度?! 僕をバカにしてるの?! どうせ見つからないと思ってるんでしょう?!」 そう言った途端、彼はまたニヤニヤとして、 「ふーん、仁達も協力ね〜」 そう言うと、僕の頭をまたクシャッとして、 “面白いな…… お前ら、本当に気付いて無いんだな” そう聞こえるか聞こえないかの様な、 独り言の様なか細い声で呟いた。 「え? 今なんて言ったの? 僕に言ったの?」 そう聞き返すと、 僕を見下ろし、 「まあ、いずれ分かるさ。 その時が楽しみだな」 と意味深に微笑んだ。 「え? それってどう言う……」 そう言いかけた時、ベッドルームのドアのノックの音がした。 「サム、邪魔して悪い……仁だ。 エントランスに ダンケンって言う奴が来てるんだけど……」 そう言って仁がドアの向こうから話しかけて来た。 「ダンケン……?」 僕が誰?と言う様な顔をすると、 「お、来たな」 とトムが言うので、 「トムのお客様?」 と尋ねると、トムは僕の頭をポーンと叩いて、 「何だお前は、自分のメッセンジャー兼 ボディーガードの名前も知らないのか?」 と言いながらベッドルームのドアを開けた。 そしてポンと仁の肩を叩くと、 「さあ、始まるぞ」 そう言い残してリビングへと歩いていった。

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