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EX14 スティーヴ ※

side:柚希  新しく住むマンションの部屋に入ると、一人の男の人が出迎えてくれた。 あれ、見た事ある。 「お久し振りです、リシェール様。」 「あ、確かアレク様の側近の!」 「スティーヴとお呼びください。」 「スティーヴさんもアレク様に見つけてもらったんですか?」 「いいえ。私の方からメディアでお顔を見つけて押し掛けた次第です。」 …きっとスティーヴさんも仕事が出来る人なんだろうな。 「スティーヴさんは何故此処に?」 「アレクシウス様…涼一様から言われて、リシェール様の警護をと。」 「……あ、芹澤柚希です。」 「柚希様、此方でも宜しくお願いします。」 恭しく頭を下げられた。 寮からマンションに荷物を移し終えて一息つくと、涼一さんが到着して部屋に入って来た。 「このマンションはどうだ?」 「広いね。部屋多いけど余らない?」 「大は小を兼ねるからな。」 僕も涼一さんもリシェールも集めているような趣味が無いから、余計に置くものが無い。 「三部屋ぐらいはその内仕事の物で埋まるだろう。」 「あ、そういえばスティーヴさんってまた部下なんだ?」 「あっちから俺を見つけて来たからな。まあ将来的に丁度いいと思ってな。」 「将来?」 「ああ。大学を卒業するまでに、あっちで帝国を再建しようと思っている。」 「そっか…未だに闇は迫害されてるもんね。」 今はルキウスで保護してるとはいえ、根本から変えないといけないしね。 「ルキウスを護る防波堤も兼ねたらいいだろう?」 「うん、凄くいいね!」 「柚希も手伝ってくれるか?」 「もちろん!」 元から僕込みの計画をしてくれてたんだって思ったら嬉しくて。 笑顔で答えて涼一さんに抱き付いた。 「柚希じゃないと防衛も出来ないしな。」 僕を必要としてくれる涼一さん。 言葉にしてくれるのはきっと僕が前世からコンプレックスになっていたから…。 「こっちでは役に立てないけど、その分あっちで頑張るね。」 「…柚希、俺には柚希が必要なんだぞ。つまり、居てくれるだけで充分こっちでも役に立ってる。」 「ん、有難う。」 「わかってないな。どれだけ必要か…わかるまで摂取してやる!」 「摂取!?ま、まだお昼だよ!」 首を吸われながら慌ててしまう。 「今からやれば、明日学校休みにならなくて済むだろう?」 そう言って僕を押し倒す。 「しまった!柚希を床で組み敷くところだった!柚希、ちょっと柚希の下に敷く物を買って来るから待っててくれ!」 「え、涼一さん!床で平気……。」 ここのフローリングには倒れても充分大丈夫な感じなのに…。 止める間も無く涼一さんは出て行ってしまった。 そういえばベッドまだ無かったんだ。 折角なのでこの間に部屋を見て回る。 覗いた感じ一部屋が充分広くて、今の寮の部屋の二倍は有りそう。 部屋の中にシャワールームが無いから、余計に広い。 浴室があるから浸かれそうで嬉しいな。 一番浴室から近いのが二人の部屋なのは計画的なんだろうな。 防音の部屋があるから、ここで異世界に行けるんだ。 便利だなぁ。 さて、一通り見たら暇になってしまった。 「柚希様、お茶にしませんか?」 凄くタイミング良くスティーヴさんが声を掛けてくれた。 見られてた? 彷徨いてたから恥ずかしい…。 リビングに行くと既にお茶とお菓子が用意されていた。 「有難うございます。」 笑顔でお礼を言うと、スティーヴさんが顔を綻ばせる。 「前々から城の者達は、皆リシェール様のファンでした。」 「えっ?そ、そうだったんですか…。」 真っ正面から言われて恥ずかしくて赤くなってしまう。 「それに…聞きました。アレクシウス様を救って下さったのも、リシェール様だと。」 「い、いえ!あれはむしろあっちのリシェールですよ!」 「物理的にはですが、心を救ったのはリシェール様…柚希様だと。アレクシウス様の力で城の者は皆呪われて、クリーチャーと化していたのです。」 あのクリーチャーは城の人達だったんだ…。 「クリーチャーと化した者達は、アレクシウス様の心からの消滅で、呪いから解き放たれたのです。私もその一人でした。私は魔力が強かったのでクリーチャーにこそなりませんでしたが、心が支配されていました。」 「そういえば…僕がアレク様に捕まった時、僕にベビードール着せましたよね?」 「…アレクシウス様がお好みかと思ったもので…。」 あの時アレク様はすぐ脱がしてしまったけど…。 もしかしてスティーヴさんの趣味?とも思ったけど、怖いから聞くのはやめた。 「ともかく、真に救って下さったのは柚希様です。ずっとお礼を申し上げたかったのです。」 「こちらこそ。前世の時はアレク様の仕事中、僕の相手をしてくれて嬉しかったです。今回も護衛してくれるなんて、こちらこそ感謝します。」 スティーヴさんに心からの感謝を笑顔で言う。 「……っ!柚希様…。」 「柚希、待たせたか?」 丁度涼一さんが戻って来た。 「お帰りなさい。スティーヴさんに相手して貰ってたから平気だよ。」 「相変わらず、お可愛らしいですね。」 「ああ、俺も未だに萌える…。」 何か二人が小声で話してる? スティーヴさんは涼一さんにもお茶を出すと、すぐに席を外す。 有能だなぁ。 「何を話してたんだ?」 「昔の事、かな。」 「あいつは前世で一番有能だったから助かる。俺が居ない分、学校で柚希の護衛も任せられるからな。」 「有難う。そういえば、何買って来たの?」 「そうだった、これだ。」 ふわふわしたクッションを幾つか僕の傍に置いていくと、すぐに僕をそこに押し倒す。 「うわー、ふわふわ!」 「気に入ったか?」 「うん、凄く寝心地がいいね。有難う。」 満足な笑みでお礼を言う。 「さて、使い心地も試そうな。」 さっきの続きとばかりにキスされる。 「ん…ぅ……。」 そのまま強く吸われる。 さっき摂取って言ってたから、本当にそれをやる気かな? 手が胸と下半身を這いながら僕の服を脱がせる。 背中や腰を上げるようにして脱衣の協力をするように動く。 僕を脱がし終えると一度キスを中断して涼一さんも手早く脱ぐ。 何となく見つめあってしまう。 「本当に柚希は何度見ても可愛いな。」 「ありがとう…。」 何度言われても恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。 「涼一さんも、かっこいいよ。」 目を覗き込ませて感想を素直に告げたら、早速硬くなった涼一さんがそこをぐいぐい押し付けながら強く口付けて来る。 「んっ…ぅん…。」 口内を丁寧に這い回る舌が喉を、歯列をと舐めると、僕も次第に下半身を硬くしてしまう。 それに気付いた涼一さんが自身同士を擦り合わせる。 感じて目を開けてしまい、キスで潤んだ目を涼一さんに向ける。 「普段の柚希は可愛いが、こういう時は艶っぽいな。」 そんなに変わってるのかな? 自分ではよく違いがわからない。 どう反応していいか困って、顔を赤くして涼一さんの目を覗き込むと、涼一さんの眼差しはちょっと怖い感じになった。 「…俺を煽って激しくして欲しいっておねだりか?」 「煽ってないよ…。」 「ふーん…なら、じっくりコースでいいな。」 言葉を口にすると涼一さんは僕を開脚させて……。 「柚希のここは、えっちな匂いがするな。」 僕の股間に鼻を近付けて匂いを嗅いできた! 「やっ、それ嫌ぁっ!」 恥ずかし過ぎて足をばたつかせようとするけど、僕の足を掴む涼一さんの腕はびくともしない。 そのままどんどん後ろに顔を移動させていく。 「お願い!激しい方が好きだからぁっ!」 やめてと必死にお願いする。 いくらしっかり洗ってるとは言え、やっぱり気になる。 既に舌だって挿れられてるけど、それとは違うって言うか…。 「仕方無いな。」 どうにか涼一さんが折れてくれるけど、全て計画的だったのは間違い無いと思う。 「…意地悪…。」 「たまに苛めると可愛くてつい、な。」 少し尖らせた僕の唇を吸ってくるので、すぐに可笑しくなって笑ってしまう。 「拗ねた顔も可愛いが、やっぱり柚希は笑ってる顔が一番いい。」 「時折意地悪する涼一さんも、好きだよ。」 「可愛いことばかり言う口だな。」 唇が再び塞がれる。 繰り返し食まれる。 「…先程からだいぶ待っていたのだが、終わらなそうなので返事だけくれるか?」 「!?リシェールっ!」 予想もしないタイミングで掛かったリシェールの声に、ラブラブモードから我に返った。 先程からって、いつから居たんだろう。 真っ赤になって慌ててしまう。 結構恥ずかしい事も言ってたし。 「…風情はどうした?」 機嫌悪そうな涼一さん。 「では後何時間掛かるか教えろ!どれだけ玄関で待っていたと思ってる。今日来いと言ったのはお前だろう!それに此処はリビングだ、どうやっても通らざるを得ないだろう!」 いたたまれない僕は服をこそこそと着ていく。 そういえばリビングだった! 喧嘩にならないかはらはらしながら様子を見る。 「だから私に宛がわれた部屋だけ教えろ。」 「どこでも好きに使っていいと言わなかったか?」 「お前が仕事で使う部屋がわからないと、私が不便にする事になるだろう。」 「その場合後で部屋を変わればいいだろう。」 「二度手間にしてどうする。」 涼一さんは服を着ながら会話をしているけど、行為の中断が決まったせいか不機嫌そうだ。 「リシェールと隣なら行き来楽だよね?」 咄嗟に僕の意見を入れてみた。 「わかった。それで文句は無いな。」 「そんなに行き来するのか?」 「何か不満でも?」 睨み合う二人。 何だか似た者同士に見えて来た。 「リシェール様、お部屋にご案内します。」 スティーヴさんがリシェールの手荷物を持って、今決まった部屋に連れて行った。 「そ、そういえば夜ご飯ってどうする?」 「ああ、随分時間が経ってたな。デリバリーでいいか?」 「引っ越し蕎麦?僕は引っ越し自体は初めてだから、引っ越し蕎麦初めて食べるよ。」 「初めて……そうか、柚希は初めてか。」 何故か機嫌が良くなった涼一さんに頭を撫でられる。 「…柚希の初めて…萌える。」 ん?機嫌良くなってくれたから良かった。 三十分程して、リビングで四人でお蕎麦を食べた。 スティーヴさんは別に食べると言い張ったけど僕がお願いした。 涼一さんもリシェールも部下の扱いに慣れてる様子だったけど、僕が落ち着かないので。 「今日は食べ終わったら涼一さんの家に帰るよね。ベッドとかっていつ頃入れるの?」 「今日は引っ越し作業だったから、来週辺りに見に行こう。柚希が気に入るベッドがいいだろう?」 「ありがとう。でも涼一さんも気に入った方がいいと思うから、二人で意見出そうね。」 「柚希…可愛い!」 何か感動されて抱き締められてしまった。 リシェールだけで無くスティーヴさんも居るから、顔を真っ赤にしてしまう。 スティーヴさんに視線をやると僕達の事を温かい眼差しで見ていた。 「柚希、私に合うベッドも一緒に選んで欲しい。」 「あ、うん。一緒に行って見てみようね。」 笑顔で答えると、何故か舌打ちする涼一さん…。 涼一さんを睨むリシェール。 「あ、そろそろ帰らないと、明日もまだ学校だしね!」 仲がいいような悪いような…。 スティーヴさんはどう思ってるのか、愉快そうに二人を見ていた…。 自分を犠牲にして闇の人達の地位向上の為に戦っていたアレク様。 今度こそ叶うといいな。 「僕も手伝うけど、一人でも多くスティーヴさんのようにアレク様を、涼一さんを支えてくれる人が増えてくれたら…。アレク様の、涼一さんの負担が減ってくれたら助かるよね…。」 「え?柚希…。」 「ん?……あっ!僕声に出してた!?」 三人に感動の眼差しを向けられてしまう。 うわ、恥ずかしい! 真っ赤になる僕を涼一さんが強く抱き締めてくれた。

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