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甘々クリスマス

 あれはX'mas一週間前の事でした。X'mas一色な世間のムードなどいつもは素通りして通りすぎるはずの家までの帰り道。普段と同じく仕事の後は、車で適当なラジオを聞きながら家で待ってるはずの恋人の事を考えたり仕事の事を考えたり、外の景色は気にならず、気にするのは信号の色と安全運転、のはずだったのに、珍しくツリーが目に入りましてね、近くの駐車場に停めてその店まで戻りました。  目についたのは真っ白な30センチ程の高さのクリスマスツリー。まだ何も飾ってなく、その白さは私の恋人の悠生と出会った時の事を思い出したんだなと分かりました。  まだ何にも染まっておらず、殺しのやり方だけを教育され育った少年、悠生。  悠生を自分の色にしたくて、最初は興味半分で手を出し、結果としてハマってしまったのは私の方なんですけどね。あんなに年下の少年に。自分が少年趣味なのは分かってましたけど、悠生はハーフかクォーターのような、中性的な目鼻立ちの整った美少年でした。なんか、恋人のことを美少年とか言うのは多少気恥ずかしいですね。  この真っ白なクリスマスツリーを、悠生が好きなように飾ったところを見てみたい。少しニヤけてしまった口元をマフラーをずらして隠しながら、レジにそのツリーを持っていきました。  玄関を開くと明かりがついていて暖かい空気が待っている。悠生が一緒に住むようになってから、1人暮らしの時とは違って、部屋に明かりがついている、暖かい空気が流れてくるっていうのは大変良いものです。  人はこの温もりが欲しくて誰か隣にいてほしい相手を選ぶのでしょうか、なんて大分穏やかになった自分の考え方も大きな変化ですね。二人になったことで、私も悠生も変わったようです。 「ただいま」 「お帰り。……それ何?」 もちろん聞いてきたのは買って帰ってきたクリスマスツリーの事。 「何って、クリスマスツリーですよ?知ってますよね」 「知ってるけど…それって飾るの?」 「そうですよ。悠生が飾りつけしてくれませんか?」 「俺が?!いいの?!」 「ええ、もちろん。今は任務もなくて暇だって言ってましたし、悠生が飾ったクリスマスツリーが見てみたいなと思って買ってきてしまいました」 「うわぁ、ありがとう!」 悠生はあたふたと自分が着けていたエプロンを脱いで、ツリーを受け取ってくれました。あぁ、エプロンに作りかけのカレーが少しついたんですね。  悠生はツリーをテレビの横に置いてみたり少し考えてる様子でした。 「これさ、クリスマスイブまで俺の部屋に置いといていい?」 「?いいですよ?」 「見ちゃダメだかんな?」 そんないたずらっ子みたいな表情は可愛くてズルいですよ。全く、最近どんどん色んな表情が出てきて、鎖に繋いで家の中に閉じ込めておこうか?というダメな妄想を掻き立てられるくらいに可愛くてなってきましたね。出会った頃の無表情で諦めた感じの投げやりさは全く見受けられません。あの頃は、いつ死んでも別にいいとでも思ってたんでしょうかね。今ではエプロン姿がすっかり似合って…やっぱりあまり人目に触れさせたくないです。  朝の筋トレを済ましてから昨日博美さんが買ってきてくれたクリスマスツリーをしみじみと見る。俺が飾っていいんだってさ。孤児院の時もツリーくらいはあった。でも年下の奴らが「ゆー、これかじゃりたい」「てっぺんに着けたいから抱っこして!」とか煩かったからな、自分で飾りを楽しむなんてしたとこはなかった。ボスに引き取られた屋敷にはそんなもんなかったしな。つくづく俺って普通の子どもが小さい時楽しんでたんだろう事をしてないのかもしれないなって、たまに考えてみたりもする。たまにだけど。こんな風に仕事がない時は自分の時間があって、考える時間があったりするから余計にだ。  別にこれまでの境遇を嘆いてるわけじゃなくこんなもんだ、こんな星の元に産まれたんだって思ってるし、今はその、人並みに幸せな時間かな…って、こんな事博美さんには言わねーけど!とにかくやった事ないツリーの飾りつけにワクワクしてる自分がいて、悪くねーなって思ってる。それもこれも博美さんと出会ったおかげかと思うと、今での境遇があったから出会えたんだとか考えてて、夢見る少女か俺は!って一人突っ込みしてみたり。そんな自分も、まぁ、悪くはねーかな。  薄暗くなってきた頃、ようやくツリーの飾りを買いに外に出た。いつも外に出る時のスタイルで、フードのあるコートのフードを被っていく。こうすれば買い物してても店員もそんな無駄には話かけてこないだろうし、金髪も隠せて悪目立ちしない。  何より殺し屋の顔があちこちで目撃されて覚えられたりでもしたら格好がつかないだろ?そんなに俺の顔見る通行人もいないだろうけど、念のためってやつだ。  クリスマスムード一色の街はきらびやかだった。このイルミネーションが綺麗に見えるのも、今は大事な誰かがいるおかげだと思う。やめやめ、最近こんな思考になりがちなのがこそばゆい。  楽しい飾りを見つけるために商品に注目していく。ツリーの色が白だから、基本何でも似合うよな。キラキラした丸い玉ぶら下げるのが定番て感じがする。それからてっぺんには星。シャカシャカした長いマフラーみたいなのも必要だな。グリーンにするか。マスコットは要らないけど、この熊のだけ可愛いから2個買おう。  思い付くままにかごに入れていったら、いつの間にか沢山になってた。この量があのツリーに着けられるのか?いいや、どうにかつけてやる、とレジに向かったところで見つけてしまった。あっ、これ…、これも買っていこう。  大量の飾りを買い込んで、外を歩いたら寒かったのであったかいカフェラテを買い、飲みながら帰っていった。  そしてクリスマスイブ当日。俺の部屋に隠してあったクリスマスツリーはテレビの横に設置した。ケーキとチキンは買って帰りますよと言ってた博美さんを待つ準備はオッケー。プレゼントも用意したし、ピザも届いたしな。  人生初めて買ったプレゼント、気に入ってもらえるか分からないけれど。博美さんなら何でも喜んではくれる気がする。後は、尾行の指示だけでなく、普通の会話も出来るようになったコードネーム「I」に聞いた話も信じて用意しなければ。    カチャリと鍵を開ける音がして博美さんが帰ってきた。 「お帰り!」 「ただいま」 「なんか荷物沢山だね」 両手に抱えたチキンの匂いがする袋とケーキの箱を受け取りテーブルに置く。 「もうピザも届いてるよ」 「悠生、これ」 『これ』と言って渡されたのは荷物の中で一番大きな存在感を放っていた花束だった。50本はあるんじゃないか…この大きさはって思ったけど花束受けとるなんて恥ずかしい事出来なくてチキンとケーキを受け取った。これって言うからには俺が受け取るようなんだよな、このでっかい花束…。 「えっと…花瓶だよな。待ってて、持ってくるから」 「いいから受け取って」 受け取ってと言われてしまったからには、両手でおずおずと、でも落とさないようにしっかり受けとる。 「生花は枯れてしまうから興味がなかったんですけどね、通りすがりに、悠生が持ったら似合いそうだと思ったらつい買ってしまって…」 「ついって量じゃねぇし」 いつもは余裕な博美さんが照れてるのが可愛くて、大人もこんな表情すんだなって面白くて、俺の買ったプレゼント渡したらどうなるんだろって、花束を花瓶に入れてすぐ渡してみたくなった。 「博美さん、これ。なんか、珍しいもん貰ったから嬉しくて、俺からのプレゼントも早めに渡す」 花束よりは小さな袋に入ったネクタイは、自分でも頑張って選んだつもりだ。 「悠生がこれを私に…?」 「そうだよ。あんたいっつもネクタイしっかりして行くじゃん。他の奴らはスーツでもネクタイはしないのに。だからいくらあっても困らねーだろと思ってさ」 「ありがとう。嬉しいよ」 抱き寄せてきた博美さんの顔がちょっと凶悪になったのは、今ではの付き合いで気づいてしまった。  料理もまだ食べてないのに、俺が先に喰われてる。 「っん、はぁっっっ、これ!外さないと、イケねーし!あ"っ…」 「似合いますよ。悠生がくれたネクタイをそこに巻いた悠生」   博美さんは綺麗にラッピングされた箱からグリーンベースのネクタイを出すとニヤリと笑って、ソファーに俺を連れていき寝かせてから服を脱がせていった。ちょっと凶悪な顔した時は何かしら良からぬ事を考えてるって覚えたけど、この普段温厚な人がサディスティックな所を見せる時が、実は堪らなく癖になってしまってる。  キスもそこそこにまさかのちんこにネクタイをぐるぐる巻きにされて縛られた。これがどんな風になっていくのか、怖いのもあり好奇心もあり、ただただ息を荒くしながら見つめていた。 「悠生…何でお尻にこんなの入ってるんですか?」 「それは…Iが、クリスマスっていったら性なる日で、ハァ、エッチするって言うから、っん、解しておいた方がいいと思って…」 「ふぅん、Iくん。悠生に裸エプロン教えた子でしたね。今度お礼でもしなきゃなりませんかね」 後半は小声で聞こえなかった。 「な、に?」 「いいえ」 にっこり微笑んだ顔がいつもの営業スマイルのような顔ではない。すぐにアナルビーズを抜いて、博美さんのを挿れられるんだ…と思ったら、ネクタイを巻かれているものがズクンと反応したのが分かった。巻かれていて重さがあるせいか、反応が自分で感じとりやすい。博美さんがお尻に手を伸ばしいよいよ、いよいよ、一気に抜くんじゃなく、一粒一粒ゆっくり抜かれていく。 一番大きくアナルが開く時が分かるほどに遅くゆっくりだ。拡げられて、収縮してを繰り返す。 「触ってないのに乳首勃ってますね」  「言うなよ!もぉっ、早く…」  「早くなんですか?」 こちらの表情を見下ろしてにやにや笑ってる。悪趣味だ。 「早く、挿れてよ…」 「あぁ、これを戻すんですね」 「あぁぁぁっ、、」 出ていったビーズを戻された。それじゃない! 「ちがっ、博美さんの、それ!挿れてって言ってんの!」 もどかしくて足で大きくなってるそれを弄ってやった。 「くすっ。全く。行儀の悪い足ですね」 「っか、ふぁぁっ、あ"ぁ"っ」 両足を上に抱えられてそのまま突っ込まれた。まだお尻に入ってるたのに!棒と球体が中を弄って、壁を擦ってたまにいい所を掠めていっては痛みも伴って、喘ぎ声なんて可愛い声じゃなく呻き声と涎だけが出ていく。人を殺す時に感じた他人の皮膚にナイフが刺さる感触、生を感じた。今はこの瞬間が一番生きてる感じがする。快感と痛みとが次々に襲ってくるこの時間。いつもは余裕ぶった大人が、俺の上で必死な顔して動いてるのが見える時間。 「出す、出させて!外せって!」 「いつもながら可愛くない頼み方が、最高に可愛いですよ、悠生」 長い指が絡められているネクタイをほどき終わり、先端を掠めていった時に吐き出した。 「はぁ、はぁ、博美さんまだでしょ?」 「気づいてなかったんですか?あなたの中で出してしまいましたよ…。全く、外に出す余裕も無くされるなんて」 「あっ…」 博美さんが出ていく感覚と、おもちゃを出す感覚でまた感じてしまった。 「すみません。お風呂で掻き出してから夕飯にしましょうね」 吐き出して力が抜けた俺をお姫様抱っこで浴室に連れてく。俺が頼ってもいい腕。  結局風呂場で立ったまま壁に手をつけて二回目をしたからのぼせた。おっさん、まだ若いな…。 「すみませんね悠生…。あっ、これですね飾ってくれたクリスマスツリーは。こちらを見るのが先でしたよね。くすくす、沢山飾りましたね。色もカラフルで……」 誉められてる幼児みたいでくすぐったい。 「これは……」 「えっ、クリスマスツリーに願い事も吊るすだろうが。博美さん知らないの?」   『博美さんが元気で長生きしますように』 「これって、プロポーズですか?」 「いや普通に博美さんのが10は上なんだから、先に年とるじゃん。出来るだけ介護したくないから健康でいろよって願い」 「そんな長く一緒にいてくれるつもりなんですね。ありがとうございます」  照れ隠しなのか黙ってしまった悠生には座っててもらってチキンを温め、ケーキを切り、今から二人だけのクリスマス。  孤児院では七夕だけでなくクリスマスツリーにも願い事を吊るすのでしょうか。それともボスの家で学んだのでしょうか。  どちらにしろ盛大に間違えて覚えてて、愛しい言葉を書いてくれるんですから私の完敗です。あなたの為に健康ってものに気をつかってみようじゃないですか。その代わりあなたも死なないで、無茶しないで下さいよ。 ☆オマケ☆  博美さんから悠生へのプレゼントは夜中クリスマスツリーの下に博美さんが置いといたらしいですよ。フリルがついたエプロンと、その下の包みにはフードのついたモッズコート。  朝目を覚ました悠生は、ツリーの下に置いてあるプレゼントを見て、初めてサンタが来た…と呟いたとか呟かなかったとか。    Merry X'mas

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