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雪虫2 13

「それに傷やったらしずるの方がよっぽどヒドイやん?なんなんそのアオタン」 「あお ……?これは護身術?を習ってるだけだよ」  水谷に加えて大神のお陰でオレの体は見た目だけで言うと、紫色のまだら模様になっていた。 「ボウリョクふるわれてるんやないんね?」 「まぁ」 「君はあそこで何してるん?掃除にご飯に、えらいしっかりやってるやん?」 「オレは、あそこで雪虫の世話をしてる。それが仕事だから」  世話をしてる って言うか、一緒に暮らしてたんだけど。 「え⁉仕事て……まだそんな年やないやろ?お母さんらはどないしとん⁉」 「  げ んきで、やってると 思う」  思うんだけどなー。  その筋の元気でやってるってどこまでが元気なんだろうなぁ。 「連絡取ってないんか?あんま、ええ親やなかったんか?」 「んー 」  いい親かそうでないかで言うなら、碌な親じゃなかったとは思う。  昔は貧乏だったけど、常識のある両親ではあった……とぼんやりと覚えている。けれど、いつの間にかパチ狂いに女狂いに手癖の悪さに借金持ちにってなって、息子を切り売りし始めて……  でも、昔は、小さい頃は、……楽しかったこともあった。 「……まぁ、普通かな」 「普通て……」  前髪から雫を滴らせながらみなわがきゅう と眉間に皺を寄せる。 「でも、雪虫はオレの運命の番だし、世話することは全然苦じゃなくて、むしろ楽しいって言うか」 「運命⁉」  バシャン ってみなわが飛び上がった拍子に盛大に飛沫が飛んで鼻に入る。 「は な、いーったっ  」 「運命の子なん⁉雪虫って、実験の時に衝立の向こうにおる子やろ⁉」  肩を掴まれてがっくんがっくん揺さぶられたせいで、目が回りそうになるから慌ててみなわを押し退けた。  「ちょ  」 「ぁ あの子が、しずるの運命なんか?」  何度も何度も確認されると流石に気恥ずかしくて、湯の中の手をもぞもぞと組み替えながらコクリと頷く。 「つ……番になるんか?」 「そりゃ当然だろっ」  もちろんそれに付随するアレやコレやを考えると、更に恥ずかしくなってくるんだけども。  まぁそこを突っ込まないのは、バース性の人間達にとっての暗黙の了解ってことで。 「だから、今、体も鍛えてるし、勉強もしてるし、オレが出来ることを必死になってやってんだよ。雪虫のこと守ってやりたいから」 「   っ」  お湯に浸かっていると言うのに、みなわの顔色は冴えないまま口を真一文字に引き結んでいる。  いつものあの雰囲気との違いに…… 「な、なんだよ  」  怯んでしまうオレはまだまだダメダメなんだって思う。  瀬能なら茶化すだろうし、  大神なら一蹴するだろうし、 「 な なんや。なんなら童貞貰いついでに首の一つも噛ましてやろか思てたんに」 「首は二つも三つもないですよっ」  ついでに童貞は雪虫に捧げるしっ! 「第一、あんたパートナーだっているんだろ⁉そんな不誠実なことしてどうすんだよ!」 「あー……覚えとったんかぁ」  呻いたみなわが、やられた と言いたげなふうに大袈裟に額を押さえて天を仰いだ。

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