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雪虫2 25
不格好だし、セキには吹き出されたけど、オレなりにベストを尽くして出来た会心の作だ。
まぁ、ちょっと、縫い目が粗すぎたりして小さい貝殻なんかはぽろぽろ落ちるらしいけど……
「ほつれたかな……雑巾縫って練習しなきゃ」
「君、ホントちょくちょく古風だよね。巾着の一枚くらい大神くんはうるさく言わないだろうに」
確かに、大神の様子を見ていると小さな袋を買ったからってどうこうは言わないだろう。
でも、そうじゃなくてオレがそうしたいって話だ。
「なんか、雪虫のすべてがオレの与えたもので出来上がったらいいなって、思っちゃって……オレが作る物を食べて、オレが作る物を身につけて、オレが作る物の中で過ごして欲しいって、なんとなくだけどそう思うんだ」
「独占欲って奴かねぇ?拗らせると大変だよ?」
そう言われても、雪虫をオレだけのものにしたくてしたくて、もうすでに拗らせている気はしないでもない。
「何?なんの話してるの?」
とんとんとん と軽い足音を立てながらセキが盆を持って階段を降りてくる。
盆に乗せられているプリンのカップは……よし!空っぽだ!
「雪虫をオレの作ったものだけで生活させたいって」
「…………あ、うん」
明らかにちょっと引きましたって間をとって、セキはそう返事をする。
「なんだよ、言いたいことあるんなら言えばいいだろ」
「言いたいことなんかないよぉ。でも、俺がそれを大神さんにされたら嬉しいなぁ とは思うかな」
「若い子の感性わっかんないなぁ」
「若いとかじゃなくて、コレはオメガの感性だと思うんですよ。番のものに包まれてたいって。番のもの以外一切の不純物を含みたくないって感じはわかる!」
そう身を乗り出されて言われてしまうと、オレよりセキの方が拗らせてるんじゃ……
「大神さんの精液だけで生きていきたいっ!」
拳を作って叫ぶほどのその思考はだいぶやばいと思う。
「ってことは、一回多めの5ミリリットルとして、カロリーも多めに見積もっての5キロカロリー。成人男性の一日の必要カロリーが2200とすると、一日に440回の射精が必要になってくるけど。射精一回の消費するカロリーを考えると効率悪いよね、でももしかしたらラットに入ったら近いことはできるのかなぁ……記録は三日で十四回ってのを聞いたことはあるけど……一度ラット時における射精の限界回数ってのを知りたいなぁ」
「「…………」」
人をすぐに実験対象にしようとする辺り、一番やばいのは瀬能かもしれない。
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