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第47話 フェロモン

俺は後ろからあがなえない肌がざわつく何かを感じた。皆が分かるのに、俺にはなぜかよく分からないもの…。俺は恐る恐る振り返った。祥一朗がクスクス笑っていた。 「ふふ、雪弥は本当、変わってる。空気が違うことは分かるみたいだけど、それ以外はよく分からない、でしょ?」 俺は何て答えていいか分からずに言った。 「正直に言うと、イエス。今も何か感じたけど、それが何か分からなかった。」 祥一朗は玄関の鍵をロックすると、俺の手を取って歩き出しながら言った。 「今雪弥が感じたのは私のフェロモンだよ。今あえて飛ばしてみたんだ。どう感じた?」 俺は首筋を手のひらで撫でながら言った。 「…なんかここがざわつく様な、拒否できないような感じというか…。」 祥一朗はふふふと楽しそうに笑いながら俺をソファへ座らせた。 「ある意味正しい。フェロモンは相手に自分を受け入れさせるためのものだ。フェロモンが効く相手には一番感じる首筋にそれが感じる。相手のフェロモンを受け入れると、自分からもフェロモンを出すんだ。 今、雪弥からも甘いフェロモンが立ち昇っているよ。それは私をゾクゾクさせて、堪らない気持ちにさせる。…今、雪弥はどんな風に感じるかい?」 俺は目を閉じて、自分の身体に意識を向けた。身体の奥の方に熱い何かが感じられる。それはこうしてる間にもじわじわと俺の身体を侵略していく様だった。俺は目を開けて、祥一朗の切れ長の真っ黒い瞳を見つめた。すると急にドキドキと心臓が速く鼓動を打ち始めて、あっという間に吐く息が荒くなった。この感覚は身に覚えがある。俺の奥深くで囁いてるあの声が聞こえる。 俺は怖くなって祥一朗の腕を握りしめた。俺の様子がおかしい事に気づいた祥一朗は眉を顰めて尋ねた。 「…雪弥、大丈夫かい?」 「祥一朗、俺怖いっ。もう一人の俺が身体の奥にいるみたいで。そいつが祥一朗を食べろって言うんだっ。」 祥一朗は優しく俺を抱きしめると言った。 「もう一人の雪弥って、多分本来皆が当たり前に感じてる本能だと思うんだ。トラウマで、雪弥は自分の本能から目を背けた。今発情期が来て、自分の本能と融合しようとしてるんじゃないかな? それに私たちは鎖で縛られた関係だ。だから雪弥の望みは、私の望みだよ。雪弥が食べたければ、私を食べなさい。もっとも、私は喜んで食べられたい。」 そう言って悪戯っぽくウインクすると、サッと俺を抱き上げて浴室へ連れて行った。

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