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第49話 祥一朗side雪弥との出会い

私の下で痴態をさらけ出して、欲しがる雪弥は美しいだけではなかった。蕩けた金属の様な瞳は、私を捕らえて離さない。真っ赤な唇は見方によっては、妖の様だった。私は、この美しくも怪しい魔物に取り込まれたのかもしれなかった。 普段の私は誰に対しても優しさをむねとしているけれど、雪弥を前にすると私が本来持っている猛々しい猛獣の本能が出てしまう気がした。それは私にとって、恥ずかしくもあり、心地よくもあった。雪弥の鎖に縛られてる限り、私はこの本性を隠す必要がなく、有りのままで雪弥を愛していいのだ。 それが何を意味するのかは、私は深く考える事を放棄してしまった。ただ目の前の、誘惑の塊の様な美しい魔物を味わって、私の猛々しさを味あわせたかった。 身体の大きかった私は、中1年で発情期が来た。男と女、男と男、性別などお構いなしに、ただ目の眩む様な性欲を吐き出す事だけに囚われていた。ほとんどの人間がそうだったと思う。相手が誰だとか、そんな事は重要ではなかった。 鎖に縛られるほどの関係も持たず、1、2回相手をして、チェンジをする、ただのダンスの様な身体の関係だった。相手はほとんどが年上で、それこそ鱗川家にあやかろうとする人間も多かったけれど、自分が選ぶと言うよりは部屋に送り込まれてくるといった具合で、家の者がそこら辺は取り仕切っていた様に思う。 自分も周囲の状況に関心はなく、発情期明けに学校へ行った際の上級生からの秋波を煩わしく感じるほどだった。自然、性欲を吐き出すだけの相手を選ぶ様になっていったのも仕方がない事だろう。生徒会長をしていた事もあって、相手を見つけるのも簡単で、後腐れのない相手を見極める事も上手くなった。 そんな私が、なぜか黒崎雪弥の事は常に動向をチェックしていたのはどうしてなんだろう。 雪弥が秋良の同級生として私の前に現れたのは、私が中3の時だった。中学部でも生徒会長をしていた私は、入学式の挨拶の時に演台から眺め見下ろした新入生の中で、目に飛び込んで来たのが黒崎雪弥だった。 まだ短めの髪で背も高くなかったけれど、妙に印象的なその姿に私は惹かれた。それが誰か詮索する間もなく、上級生の間に可愛い一年がいると噂になった。それは雪弥のことだった。直ぐに黒崎は秋良や、白獅子、古虎という派手な同級の連中に、あっという間に取り込まれたけれど、本人はそれを何とも感じてない様子なのが私の印象を更に強めていた。 私の目は自然雪弥を追いかけていた。

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