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第44話
5ー8 クズだから
うん。
アルコール依存症なら治療するのは難しいけど、でも、詐欺師と殺人鬼に比べればずっとましだな。
俺は、アザゼルさんに言った。
「アザゼルさん、俺、この人がいいかな」
「うん?」
アザゼルさんがちらっと俺の方を見た。口許が少し歪んでいるところを見れば、アザゼルさんも同じ意見なのだろう。
「私もこの男がいいと思うんだが。しかし、この男は、本当に戦えるのか?」
「それは、もちろん!」
ガザックが答える。
だが。
「あんたら、俺なんか買い取ってもだめだぜ」
不意に3人目の男が口を挟んだ。
「俺は、どうしようもないクズだからな」
マジですか?
なんか、俺は、その男の言葉に胸を鷲掴みにされるのを感じていた。
なんだろう?
何かが、ある。
男のことをガザックが手に持っていた鞭で打ちすえた。
「うぐっ!」
男が痛みに顔を歪めた。
「この!恩知らずが!」
男が体を追って呻いた。
ガザックは、かまわず男を打ち続けた。
「裏通りでいきだおれていたところを助けてやったのに、このろくでなしが!」
「やめないか!」
アザゼルさんが立ち上がってガザックを制した。
冷ややかな風が吹いた。
一瞬、部屋の中の温度が下がるのを感じて俺は、ぶるっと体を震わせた。
アザゼルさんが本気で怒っている?
「あの!」
俺は、立ち上がるとガザックとアザゼルさんの間に入った。
「俺、この人がいい。この人に決めました」
俺は、3人目を指差してガザックに告げた。
「でも、この人は今は、病気で戦えないんじゃないですか?それを思ったら10,000ジーズはちょっとお高くないですか?おまけにこのドワーフもつけてくれるならその値段でもいいですが」
「なんですと?」
ガザックがいろめきだった。
「この私が不良品をすすめているとでも?」
「だって」
俺は、3人目に近づいていくとぽんっと胸元を叩いた。
「この人はもともとは筋肉質だったんだろうけど、今は、こんなに痩せてるし。酒毒にやられて手足も少し震えてますよね?本当なら、この人はもう売り物にはならないんじゃないですか、ガザックさん」
「何を!」
「しかし!」
俺は、ガザックに向き合うと奴に向かってにっこりと微笑んだ。
「もしもきちんと治療したら、もしかしたら使い物になるかもしれません。でも、そんなことしてたらガザックさんにとっては、うれしくないことになりますよね?我々が買い取ってから治療して働けるようにするんですからその分、値引きしてくれてもいいんじゃないですか?そこを値引きはいいから、もう1人、そこのドワーフをおまけにつけて欲しいといってるんです。お互いに困ることなんてないでしょう?」
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