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第25話
「すいません。あいつ、ちょっと…えっと、あの、あ、アホなんで」
庇いきれないのか、篠田のようやく絞り出した言葉に万里がぷっと吹き出した。それを神原が窘めるようにして睨み、そして大袈裟なくらい大きな息を吐いた。
「まぁ、うちのもアホなんで、余所の人間をどうこう言えませんけどね。ですけど、あまりに度が過ぎる事は控えていただかないとね」
「はい…」
まるで上司に怒られたような感じで篠田は肩を落としたが、多分、この人って関係ないよなと万里と雷音は思った。
篠田は仁見とは仲が良いように見えた。だが篠田は一課の人間だ。とんだとばっちりだと思う。
「あのー、車に居た組員の人に聴取を取りたいので、警察へご同行願う事になるんですけど問題ないですかね?」
篠田が神原に伺いを立てるように聞いているが、これではもう立場逆転だ。
何だ、この画。コメディーか。
「それは、構いませんよ。ああ、でも仁見さんに聴取されるのは遠慮願いたいですね」
「仁見は聴取はさせてもらえないんで、大丈夫ですよ」
篠田は笑顔でそう言うと小さく頭を下げて、ではまたと行ってしまった。
しかし聴取をさせてもらえないとはどういうことか。考えられる事といえば、無謀な聴取が多すぎて外されてるということだろう。
初対面の万里への対応をみれば、聞くまでもないということだ。
「お前も、あれくらい避けろ」
神原は篠田が居なくなった途端、苛立ったように言って万里を睨みつけた。
そうか、神原はキレるとこうなるのかと雷音は神原のもう一つの顔を楽しむように、その様子を眺めた。
「いや、無茶言わんといて。あれで抵抗とかしてみ?下手したら、公務執行妨害とか言い兼ねへん勢いやったさかいね。まぁ、やて…所詮は刑事はんの型にはまった格闘スタイルって感じやね。な、小山内」
「はい…」
え?あれだけでそれが分かったのか?と雷音は呆然としてしまった。
万里の強さはBAISERで柴葉達とやり合ったのを見ているので知っているが、そんな首を絞められただけで相手の力量まで計れてしまうものなのか。
「助けてくれておおきに」
ふと声を掛けられ、雷音は、あっと声を出した。
「いや、俺は何も出来なかったんで」
「ふふ、そないなことあらへんよ。あの敵意剥き出しのワンちゃんは、あんたがおらんかったら俺のこと殺してたかもしらんもんね。なんやっけ?」
「仁見 瑠璃王警部補です」
「るりちゃん。名前はかいらしいのに」
「ご両親を極道に殺され、家に火を放たれた生き残りだそうですよ」
神原の言葉に万里の身体が一瞬、強ばったのが分かった。雷音も驚いたが、そう説明されるとあの敵意も納得出来る。
「そっか…」
万里は小さく言うと、大きく嘆息して星一つない空を見上げた。
その表情は微笑んでいるように見えるが、どこか悲しんでいるような心寂しさが垣間見えた。思わず名前を呼びそうになり、それをぐっと堪えて拳を握った。
「おい、お前と一緒にするんちゃうぞ」
神原は、どこか憤懣やるかたない口調でそう言うと、スマートフォンを弄りだした。
「そうやねぇ、ほんまにねぇ…。ほな、そろそろ行こか」
神原にそう言う万里の表情は儚げで、雷音は息を呑んだ。
そうだ、万里の両親も極道に殺されたのだ。言うなれば万里も仁見も同じ境遇で、ただ進んだ道が正反対だったというだけ。
万里が自分の両親の事件を、どう感じているのかは分からない。何も感じていない訳はないだろう。
雷音は万里の背中を見送ると、ふうっと息を吐いて、万里が見上げていた夜空を同じように見上げた。
「え?柴葉を見たのか?」
明神組の事務所で、神原は聴取から戻ってきた組員が出した名前に声を上げた。
神原の隣に座る万里は、へぇ…っと口の中で言葉を転がせた。
「柴葉の車が目の前に停まって、あいつ、また来やがったって思って。ほんで車降りて、柴葉に近づいた瞬間にドカンですよ」
近くで吹っ飛ばされた組員二人の顔には、飛び散った破片が当たったのかところどころに擦り傷が見えた。これだけで済んだのが不幸中の幸いか。
「で、他には誰も見はれへんかったん?柴葉以外」
「あ、はい。柴葉がハンドルを握ってて、護衛も弾除けもおらんかったんで一人やと思います。車にも人影見えへんかったし、あいつだけやと」
万里はそれを聞いて、何も言わずに煙草を咥えた。
「お前ら、稲峰組のことサツに話してないだろうな?」
「それは言ってません。あそこに居たのもたまたまやて言いました。信じてなかった感じですけどね」
「分かった。ご苦労だったな。今日はもう休め。店には他の連中を行かしてるから、また明日から頼む」
神原の指示に組員は頭を下げて部屋を出た。神原は隣で煙草を燻らす万里の顔を覗き込んで、何を考えている?と問いかけた。
「やて、変やろ。柴葉が護衛もつけんと?一人で?しかも顔バレバレで爆弾?」
「柴葉がやったっていう証拠はない。だが、柴葉がやってないっていう証拠もない」
「脅しってこと?」
「柴葉はどうかは知らないが、稲峰はうちとやり合うつもりはないみたいだけどな。でも、あの安曇っていうのは欲しいみたいだけどな」
「ふーん」
「でも、うちに勝手な真似をしてくれた落とし前はつけんとあかんよなぁ」
「柴葉んとこ行くん?」
「ハッパかけるだけやから、お前は来んな。お前が来たらややこしい」
神原は万里の額を指先で跳ね上げて、出入り口で姿勢良く立つ小山内と共に部屋を出て行ってしまった。
「ハブんなよなー」
万里はつまらんとソファに転がって、だが、落ち着かないと起き上がり煙草を灰皿に押し付けた。
柴葉とは一度顔を合わせただけだが、そこまで頭が悪そうには見えなかった。安曇を奪おうと強引ではあったが、明神組との力の差は歴然で、それを心得ているようだった。
その明神を激怒させるようなことを、わざわざするだろうか?それよりも、なぜわざわざ顔を見せたのか。
明神は風間組の番犬であり特攻隊でもある。武闘派と呼ばれるだけあって、日々、トラブルは尽きない。ようは敵は稲峰組だけではないということだ。
顔を見せなければ誰がやったのかはっきりするまで時間もかかっただろうが、柴葉はわざわざ現れた。
神原の、やったという証拠もやってないという証拠もないというのは、このことなのだろう。だからそれを確認しに稲峰組に出向いた…。
「あー、やっぱ行きたかったー!あー。そうね。うん、せやね。うん。そうや、行ったらええやん。こそっと」
万里はそうと決まればと事務所のドアを開けた。案の定、ドアの前には舎弟が居て、万里を見ると頭を下げた。
神原め。全く信用してないな。
「どちらに?」
「遊びに行こうかなー思て」
「ほな、車回しますさかい」
「おいおいおいー、野暮なことしたらあかんえ?女のとこ行くのに、弾除けや護衛やて格好悪いやろ?」
「せやかて…」
「へっちゃらやて。こっから近いさかいに、何もあらへんし。神原も今日はこっちに戻らんで屋敷に戻るやろうから、大丈夫やて」
な?と言うと、舎弟は渋々と頷いた。
「顔立ててくれておおきに。これで何や美味いもん食うてんか」
万里は舎弟のスーツの胸ポケットに数枚のお札を入れると、肩を叩いた。それに舎弟は大きな声で礼を言って頭を下げたが、万里は堪忍ねーとほくそ笑んだ。
稲峰組の事務所から少し離れた車内で、神原はその一際目立つビルを眺めていた。
案外、儲かってるじゃないか。そんなことを考えていると、運転席のドアをコンッとノックする音が聞こえた。
運転席に座る小山内がウィンドウを開けると、舎弟の男が頭を下げた。
「稲峰は中に居ます。ですが、柴葉は居ないようです」
小山内がルームミラーで神原を見ると、神原は顎を動かした。それを舎弟も確認して、後ろに停めてあった車に走っていった。
小山内がライトをパッシングさせると、前に停まっていた車のブレーキランプが灯った。そして、ゆっくりとそれぞれの車が動きだす。神原は足を組んで、顎を撫でた。
「また殴られたら、顎、外れそうや」
「全力で御守りしますんで、安心してください」
小山内はそう言うが、こんな若頭補佐で申し訳なく思う時がある。
守ってもらわないと、まともに敵対組織に乗り込むことが出来ない。若頭補佐でありながら、チンピラ以下の連中と殴り合うことも出来ないのだ。
せめて打たれ強くなろうと思うが、あれは馴れるものではない。やはり、どっちに転んでも格闘技や暴力などとは相性が悪いらしい。
黒塗りのAMGが次々と現れ、稲峰組の玄関は慌ただしくなった。
見るからに堅気でないであろう車輌と、アポなしの訪問。まぁ、無理もないかと神原は肩を竦めた。
車が停まり、息を吐く。この瞬間がいつも嫌いだ。
車から降りた瞬間に乱闘開始なんて日常茶飯事の組にいると、悪いことばかり想像してしまう。何なら、ドアが開いた瞬間に発砲も有り得るのだ。
後部座席のドアが開けられ、観念して車から降りると次々と飛び出す稲峰組の舎弟が怒号を浴びせてきた。
「何じゃワレ!!」
こういう任侠映画に出そうな極道が仁流会には少ないなと、それを見ながら思う。何だか、こう、レアキャラに逢った気分。
「仁流会明神組だ」
神原が名乗ると男達は一瞬怯んだように半歩下がったが、負けてなるものかとまた前に出て粋がった。
あまりにうるさいので神原が右手を挙げると、周りに控えていた舎弟が一気に稲峰組の連中に殴り掛かった。邪魔者が居なくなったところで、小山内と数人の舎弟を引き連れて神原はビルに乗り込んだ。
ビルはまだ新しかった。一気に成長したという稲峰がここぞと建てたのか、ようやく築いた城という事か。
一階には受付カウンターがあるだけで、あとは趣味の悪い銅像が飾られているだけだった。その奥のエレベーターに乗り込むと小山内と他の舎弟が乗り込んできた。
少し広いエレベーターだが、小山内と小山内よりも少しだけ小柄だが、神原よりも断然、身体つきの立派な舎弟が数人乗り込むと圧迫感を感じた。
舎弟は予め調べていたのか最上階のボタンを押した。
緩やかに上がるエレベーターは神原達をあっという間に最上階に運んだ。扉が開くと、そこに人相の悪い男たちが待ち構えていたが、神原の舎弟はそれを躊躇なく殴りつけた。
顔面を拳で殴られた男は血飛沫を吐き出しながら吹っ飛んだ。痛そうだなとそれを横目に見て、こういう連中が居るということは、やはり稲峰はこの階に居るということで間違いがないらしい。
神原は眼鏡を指先で上げると、小山内を見た。小山内は神原の前に、まるで盾のようにして歩いた。
次々と威勢よく襲い掛かってくる男を、神原の周りを固めた舎弟が倒していく。まるで人間戦車にでも乗ってる気分だ。
これが万里ならば先頭切って大暴れするのだろう。やはり連れてこなくて正解だ。
前を歩く小山内が止まり目を向けると、そこは立派な扉の前だった。ここだなと思った神原は、小山内に頷いてみせた。
小山内はその合図にノックもせずに、ドアを蹴り破った。重層な扉は簡単に蹴り破られ、神原と小山内で中に踏み込んだ。
他の舎弟は邪魔が入らないように出入口で門番をしている。さすが小山内が鍛えているだけあって、よく分かってるなと思う。
中に入ると小山内が乗ってもビクリともしなさそうな高級な書斎デスクに両肘をついて、手を組む稲峰が居た。その両脇には鍛えられているなと一目で分かる厳めしい顔をした男が、小山内たちを睨みつけていた。
ふと足元を見ると、真っ白なタイルが埋め込まれている。趣味が悪いなと顔を上げると、稲峰の後ろの絵画に眉を顰めた。
「これはこれは明神組の若頭さんがまた、何か御用で?」
「若頭補佐だ」
神原は稲峰に近づくとデスクに腰掛けた。稲峰は余裕な素振りを見せるが、その額にはじんわり汗を掻いている。
「派手なこと、してくれたな」
「派手な?何のことっでしゃろ?」
「知らないと?」
神原が眼鏡の奥から酷薄な視線を向けると、稲峰は空笑いをして頷いた。
「あの、爆破のこと言うてるんですか?あれは、うちは関係ありませんで。アホが個人で突っ走ったんです」
「アホ?…おい、柴葉はどこだ?」
「裏切りもんは、いらんでしょう」
稲峰は背凭れに凭れ掛かり、厭らしい笑みを浮かべた。
「どういうことだ?」
「もともと、あれには手ぇ焼いてたんです。先代が亡くなってもうて、世代交代してんのに何かっちゅうと牙向けてきよる。今回かて、明神さんと波風立てよう思うてへんかったのに、粋がってこの始末や。さすがにワシも情があるもんで、大目にみてやったところはあるんですけどねぇ。最終、ワシに噛みついてきたもんで」
「殺ったんか」
「いやいや、そんな物騒な。ちょっと、灸据えて落とし前つけさすだけですわ。まぁ、そのうち路地裏でも彷徨ってるんちゃいますか。野良犬みたいに」
へへへと笑う稲峰に向かって、懐に忍ばせておいた銃を素早く取り出した。
ヒィッと情けない声がして両脇に居た男が弾かれた様に動いたが、片方の男を小山内が押さえつけ神原がもう一人の男を睨みつけた。
「動くと、弾くぞ」
神原は凄むと長い腕を伸ばし、稲峰の胸ぐらを掴むと眉間に銃口を当てた。銀色に光るそれは、今にも火を噴かんばかりで稲峰は首を馬鹿みたいに振った。
「や、やめ…!!」
「BAISERに手を出すのは、もうやめろ」
「あ、あれはっ!あれは、あれ…柴葉が勝手にしたことっで!!」
「お前は何でも勝手にだな。ここは誰が大将だ。お前だろう?」
「せ、せやかてっ!!」
反論を繰り返そうとする稲峰に、神原は引き金を引いた。火薬の匂いと耳を劈くような音が部屋に響く。
稲峰は息を呑んだ。神原は口角を上げて笑うと、それから数発、発砲した。
「ひぃぃっ!!」
稲峰は仰け反って恐怖に声を上げたが、それ以上逃げようにも神原が書斎机の上で腰を滑らし、稲峰の胸ぐらに長い脚を押し当てているので身動きが取れずにいた。
弾はすべて、稲峰の後ろに飾られた絵を貫いていた。
「悪いな。俺、この絵、嫌いでな」
神原はそう言うと、稲峰の膨れ上がった腹に足を置いて組んだ。固い革靴の爪先が、その肥やした腹に刺さり稲峰は顔を歪めた。
「今度、BAISERの周辺で稲峰組の人間一人でも見たら、俺じゃなく明神組の若頭自ら、お前の首を取りに来る。知ってるだろ?明神のルビーの強さは。お前も極道で商売続けたいなら、仁流会に手を出すような馬鹿な真似はやめろ。早死にしたいならいいけどな」
神原は銃を直すと身体をくるっと回転させ、机から羽のようにふわっと飛び降りた。それを確認した小山内は、男から手を離した。
「ドア、開放感あっていいだろ」
神原はそう言って笑うと、部屋の前で待っていた舎弟たちと帰って行った。まるで嵐のように。
その後ろ姿を稲峰は鬼の形相で睨みつけていた。
自分の年の半分も生きていないような若造が、その看板だけで大きな顔をする。これがどれだけ腹立たしく、苛立つことか。
ぎりぎりと奥歯を噛み締め、神原達を乗せたエレベーターが閉まった途端、稲峰は書斎の上の電話などを手で払いのけ奇声を上げた。
万里はホステスの華奢な肩を抱いて、街を歩いていた。こそっと神原達の後を追いかけようと思ったが、事務所の駐車場の車両が全て出払ていたのだ。
結構な人数で行ったなと出払っている車両の数からそれが分かったが、いかんせん、足がないとどうにもならない。
電車やタクシーで行くようなマヌケな真似をして、もし神原にそれがバレたら非常に厄介だ。これはもう、諦めるしかないかなと思っていたら、組の縄張りに軒を構える店のホステスに捕まった。
これは遊べという神様からのお達しだろうと、都合の良いように解釈して店に向かうところだったのだ。
「明神さん、最近遊びに来てくれへんから、みんな寂しがってんねんで」
「堪忍やでー。毎日毎日こき使われて、休みももらえんやったんよ。えげつない話やろー?」
「あ、わかったー。神原さんや」
「せやせや、あいつ、ほんまに俺のこと好かんのやと思うわ。好かんってゆーか、嫌悪」
「嫌悪って酷い言い方やん」
ホステスはそう笑ったが、本当にたまにというか常に思う。めっちゃ嫌われてるよねって。仕方がないことだが。
ふと、賑やかな界隈で一際人が集まる場所が目に入った。店の壁に赤色灯が反射していて、万里は首を傾げた。
「事故か?」
人ごみの向うは自動車道だ。見通しが良く、事故が多い場所ではないので酔っ払いがハンドル操作を誤ったかとそこを覗き込んでみた。
黒の高級車が横転している。歩道と車道の間に植えられた樹木はなぎ倒され、相当なスピードでぶつかったようだ。
救急隊が必死に車から運転手を引きずり出して救助しようとしていたが、ぐにゃりと曲がった運転席に挟まれた運転手はなかなか抜け出せないようだった。その運転手の顔を見て、万里は蟀谷を動かした。
「すごい事故やねぇ」
ホステスは万里の腕にしがみつくようにして、その惨状に顔を青くしていた。
ストレッチャーにはすでに救助された同乗者が乗っていて、万里はサングラスを少しズラして、それを見た。そして、ふっと笑うとサングラスを上げホステスの腕を引いて歩き出した。
「明神さん!?」
「今日は杏璃ちゃんの指名代、俺に請求しといて。せやけど俺は用事出来たさかい、一緒にはおれんねん。堪忍」
万里はそう言いながら杏璃をタクシー乗り場まで引っ張っていくと、財布から万札を取り出し杏璃に持たせた。
「え!?こんなにいらんよ!」
「ええねん、せっかく逢えたんに遊んであげられへんさかいね。たまには店休んで、好きなもん買うてリフレッシュしたらええ」
万里は杏璃の頬にキスをすると、じゃあねと杏璃をタクシーに詰め込んだ。杏璃は渋々、タクシーに行先を告げ、万里はそれに手を振って見送った。
そして踵を返すと、首を回した。
「神さんは遊びより、こっちゃをしろって言うてるんやね」
万里の赤い目が、ギラッと光った。
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