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Extra:待ち合わせ

「校舎北側の裏門で待ってて」  携帯に届いたメッセージにはそう書かれていたのに、もうかれこれ一時間近く、俺はここで待ちぼうけを喰らっている。  ──まぁ仕方ない。あいつの気まぐれはいつもの事だ。  錆びた門扉に背中を押し付けてズルズルとしゃがみ込み、ポケットから煙草のパッケージを取り出した。  かろうじて一本だけ残っていた煙草を唇に挟み、火をつけようとしたところで、冷たい雫が鼻先に当たる。 「ち……っ、降ってきやがった」  例年なら、そろそろ梅雨も開けていい頃なのに、じめじめと鬱陶しい空気が纏わりつく。  最初はポツポツと、時折当たるだけだった雨が段々と大粒になり、半袖シャツから出ている汗ばんだ腕を濡らし始めた。  口に咥えた煙草にも、ボトッと大きな染みが付く。 「くそっ……」  慌てて胸いっぱいに吸いこみ、長く吐き出しながら地面に煙草を揉み消していると、頭に当たっていた雨の感覚が、ふわっと何かに遮られて感じなくなった。 「濡れるよ?」  少し高めのハスキーな声が上から落ちてくる。  見上げると、天使のような微笑を浮かべた伊織が、傘を差し掛けてくれていた。 「なんだよ、誰のせいで濡れたと思ってんだよ」  あからさまに不機嫌な声でそう言いながら立ち上がり、伊織の手から傘を奪い取り華奢な肩を抱き寄せてやる。 「……暑苦しい」  桜色の唇を尖らせて、お前は文句を言うけれど。 「一時間も待たせた罰だ。駅まで我慢しろ」  そうして、少しだけ強引に、その唇を奪ってやった。  ──Extra:『待ち合わせ』 END

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