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第1話
とんとん、と優希(ゆうき)は指で自分の顎をつついた。
目の前には、要人(かねと)。
彼は優希の仕草に照れた顔をした後、顎を撫でた。
そこには、少し伸びた髭が。
「おかしいかな」
「ううん」
二人並んで、道を歩く。
幼い頃から何年も変わらない、二人の日常を歩く。
「伸ばすのか、髭」
二人の通う高校の校則では、髭は違反ではない。
教室には数名、髭を整えている男子がいる。
「似合うかな?」
それは伸ばしてみないと解からないな、と優希は笑った。
「イメチェンか? それとも、早く大人になりたいのかな」
「両方さ」
要人の眉尻は下がり、情けない表情になってしまっている。
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