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○○しないと出られない部屋

そこは何もない部屋だった。 僕はその日、自室で趣味のテラリウムに没頭していた。一段落してカタリとピンセットを置いた時に軽い眩暈のようなものを感じる。目を瞑りゆっくりと瞼を開くと、次に僕がいたのはその何もない部屋の中だった。 「おや、これはどういう事でしょう」 口元に手をあて考え込むようなポーズをとる。眉尻が下がり一般的には困っている顔になっていると思うのだが、ここに片割れがいたら『ジェイド、楽しそ~じゃん』と言われていたかもしれない。存外、こういった事態には慣れているもので。 「何方かのユニーク魔法でしょうか」 ワンルームくらいの広さのその部屋は真っ白な壁で四方が囲まれていて窓も扉もない。こんなおかしな部屋、オクタヴィネルの寮にはなかったハズだ。壁に近づき手で触れ「攻撃魔法は効きますかね」などと考えていると背後から声をかけられた。 「…ジェイド?」 「……フロイド」 「ねぇこの部屋、なに?」 僕同様、突然この部屋に放り込まれたらしいフロイドが疑問をぶつけるように僕に聞いてきた。 「さて。僕も先程この部屋に招待されたばかりなものですから」 「てことは、どっかの雑魚の仕業ってことかぁ。めんどくせぇ」 僕の解答にすぐさま状況を理解するフロイド。さすが僕の兄弟です。感心しますね。でも一点気になることもあります。 「ところでフロイド。何故ハッピービーンズの服装をしているのですか?」 「…んえ?……あれ?ホントだぁ」 僕に指摘され初めて気づいたらしい。手足を上げ下げして自分の服装を確認するフロイド。それから僕の方に目を向けにやりと笑う。 「そういうジェイドは式典服だね」 「……え」 そう言われて僕もあらためて自分の服装を見る。…確かに式典服だ。部屋に戻った時に部屋着に着替えていたはずなのに。 「前々から思ってたけどぉ、式典服着てるジェイドってえっちだよねぇ♡」 「僕も思っていました。ビーンズのフロイドは雄みがあって素敵ですね♡と」 んふふ。とお互いを見つめ笑いあう僕たち。 そこへパッと現れた1枚の白い紙。ひらひらと足下に落ちたその紙を、僕は拾い上げる。 「なにそれぇ」 「さて、何でしょう」 『どちらかが“負け”を認めたら出られます』 そんな一文しか書かれていない紙。僕と一緒に覗き込んでいたフロイドが不機嫌な顔になる。 「はあ?なんだこれ?まだこんな事やらせようとする雑魚がいんのぉ?」 「僕も驚きました。こんな使い古されたネタで僕たちを閉じ込める方がまだいたなんて。思考が化石化されている方なのでしょうか」 「部屋から出たら、ぜってー絞める」 「ふふ。僕もお手伝いしますよ」 殺気を顕にするフロイドに同意して物騒な笑みを浮かべる僕。これはここを出てからも楽しめそうです。 「それはいーとしてさぁ。どっちかが負けをってことはオレとジェイドで戦えってこと?」 「そうなりますね。でもそれは今の僕には向いていない勝負法なのでお断りします」 「へぇ~。もう負けを認めんだあ」 「おやおや。そのように聞こえました?僕はただこの格好で戦ってもあなたを満足させる戦いが出来ないと言ってるだけですよ。それともフロイドは自分優位の勝負の方がよろしかったのでしょうか?」 動きやすく機能性もあるビーンズの衣装。フロイドの身体能力を高めイベントでの彼の活躍にも魅力にも一役買っていた。 それに対して重厚で厳粛とした雰囲気の式典服。フード付きで丈の長い上着は戦い向きのものではない。相手がフロイドでなければハンデにもならない事だが、フロイド相手では遅れをとる要因になるだろう。 「ん~。べつにぃ?さっさとここを出たいだけだし。ジェイドを負かせば出れんでしょ?」 「ふふふ。僕も早く出たいと思っていますけど、僕が負けてと言うのは嫌ですね。どうせな らフロイドに勝って出たいですから」 「あは。オレに勝つ気でいんだ?ジェイドぉ」 「勿論です。僕に負けるのはあなたですよ。フロイド」 互いの言葉に気が高ぶっていくのが分かる。鋭くなったフロイドの眼光に全身にゾクゾクとしたものが走る。 「んふふ。い~よ~。ジェイドのやりたいのでヤッてあげる。それでもジェイドが勝つことはないけどねぇ。で?何にするぅ?」 「おや。慈悲深いフロイドに感謝しなくては。そんなあなたには負けの2文字をプレゼントして差し上げますよ。でもフロイド。せっかくなら楽しみませんか?」 目の前にいるフロイドの顔に手を伸ばし妖しげな手つきで頬に触れる。指をつつっと滑らせフロイドの唇をなぞるとその柔らかな感触にドクリと胸が高鳴り堪らなく口付けたくなった。 「ふぅん。ジェイドがヤリたいのってそうゆーことなんだぁ?そんな物欲しそうな顔になっちゃって。ジェイドってばやらしいね。い~よぉ。楽しいことしよっかぁ♡」 「あなたこそ僕が欲しいって顔になっていますよ、フロイド。今日は僕があなたを楽しませて差し上げます。最後の1滴まで搾り取るので覚悟してくださいね♡」 「ヤれるもんならヤッてみなよ、ジェイド」 「ええでは遠慮なくいかせてもらいますね、フロイド」 挑発するようなフロイドの顔を両手の平で包むと、顔をゆっくり近づけ唇を合わせる。ちゅっちゅっとリップ音をたて唇を食むとフロイドの唇が薄く開き舌が僕の唇の中へと侵入してきた。フロイドの舌を迎え入れ自分の舌を絡ませる。ぬちゅぬちゅとした肉厚な舌の動きに頭の芯が犯されていく。 「……ふ、……ぅ、ん…」 「………ン、…」 「…は、…ぁ、ふ…ぅ、ん、」 「……………ふ、ジェード、トロ顔じゃん」 くちゅくちゅと絡まっていたフロイドの舌が離れていき名残惜しく感じていると、彼にニヤニヤとした顔で笑われた。 「…ふふ、だって…きもちいいですから。…もっとほしいです…フロイド」 「……、っ」 「……フロイド?」 「………あ、…いや。…ジェイドってさあ、ホントえっちぃよねぇ」 「…おや。…でもフロイドは、こんな僕も…すきでしょう?」 「あは。すきぃ♡……なあ…わかる?」 フロイドが僕の身体に腕を回し腰を押しつけてくる。下半身にあたるそれは布越しでも分かる程、硬度を持っていた。僕はフロイドの顔に触れていた手を下ろすと服の隙間からその手をしのばせ、直接フロイド自身に触れる。…ぴくりと反応するフロイド。 「…もうこんなにして。かわいいですね、フロイド」 「…ジェイドだって勃ってんじゃん。オレのに触って感じちゃった?」 「……え、ちがっ、」 「それともちゅーの時かなぁ?…もう湿ってんじゃん。かわい~ねぇ」 僕のモノを服の上から触るフロイド。状態を探るように動く手に僕の腰はぴくん、ぴくん、と揺れてしまう。 「……は……ん、」 「…手でしてあげよっかぁ?」 「…………や、です」 このまま主導権をフロイドに渡したくなかった僕は、その場に彼を押し倒す。そして馬乗りになると口角をあげてフロイドを見下ろした。 「…僕が、シてあげますからね」 「………は、……あ、…ン、」 自分の指で自分の後孔を解した僕は、フロイドの怒張を手で固定しゆっくりと腰を下ろしていく。 何度も身体を重ね何度もそれを受け入れていても、初めのナカを押し広げられていく感覚に身体中が快感に震える。 「……ふ…ぅ、、ン…。………はぁ」 全部をナカに収め胎内でフロイドのモノを感じていると、僕の下で黙って見ていたフロイドが口を開いた。 「……ぜんぶ、はいったねぇ」 「………はい」 「……ジェイド、きもちいい?」 「………ええ」 「…じゃあさ~」 「………なんでしょう?」 「…うごいていー?」 「………え?、、ダメです」 「なんでぇ?オレもう、ガマンできねぇんだけどっ」 「もう少しガマンしてください」 「ムリ!目の前であんなジェイドのえっちぃとこ見せられて、ガマンなんてできるわけねぇじゃんっ」 「、フロイド」 「、、っ、んっ」 僕は後孔にキュッと力を入れフロイドのモノを締めつける。途端に顔をしかめるフロイド。 「…なんだよぉ。急にしめんなよ、ジェイド」 「ふふ。あなたが聞きわけないからですよ。いま、動きますから。……僕を感じて…フロイド」 「……ン、…」 僕はフロイドの逞しい腹筋に手をつき腰を浮かせる。ずるりと抜ける陰茎が僕のナカを引っかく。 「…は、ぁ、」 たまらず声が漏れてしまうが構わず、また腰を落としナカでフロイドのモノを締めつけ奥へと擦りつけた。 「……、…ン、ん」 フロイドから溢れる声。 僕は気分の高揚と一緒に腰の浮き沈みを激しくしていく。ぐちゅん、ぐちゅんと結合部から水音がし始めると腰の動きは止まらなくなった。 「……は、あ、…ふろ…ぃど」 「…………ン、…。、、」 「……ぃ、…で…す。……き、もち…ぃ、…」 「……、…っ、…」 「…………ふろ…の、…ぁ、おく…あた、…て…ン、…ぃ……、」 「……、…は、」 「……ん、…は…ぁ、…い…ぃ、」 「……じぇ、…ぃど、…だめ、」 「…は、…ん、ぁ、…ふろ、…ど……い、しょ…に……」 「………、…じぇ…ど、」 「……あ、…あ、……ふろぃ、ど」 「……じぇ、ぃど、…じぇー、ど、」 「…ん、ぁ、あ、…ふろいど。フロイドっ。ああっ、、」 「…くっ、ぅ、、んん、っ」  頭の奥が白く弾けるのと、胎内に熱が吐き出されるが同時だった。身体の力が抜け静かにフロイドの体に倒れこむ。頬が触れたそこでは呼吸を整える大きな胸筋が揺れていた。 「……ふふ」 「…ジェイド。なぁに笑ってんの?」 「いえ、別に」 「…あっそ。ねぇ、まさかと思うけどこれで終わりだと思ってないよね?」 「え?」 「え?じゃねえよ」 「? フロイドが僕にイカされたので終わりでしょう?」 「イカされてねぇし!一緒にイッただけだし!」 「同じでは?」 「ちげーよっ。その証拠に出る為のドアがまだねぇだろ」 「………え」 フロイドに言われ体を起こして部屋をくるりと見回すと、最初と変わらず何もない部屋のままだった。 「……何故でしょう」 「だってオレ、負けたって思ってねぇもん」 「………え」 「あたりまえだろ。てわけで今度はオレの番だかんね」 そう言うとフロイドは僕との体勢を入れ換えた。繋がったままのフロイドのモノは全く萎えていない。むしろ自由に僕のナカを暴けると質量が増したように思える。 「…ち、ちょっと待ってください、フロイド」 「だぁめ。もう待たねぇよ」 「そんな。せめて少し休憩を、、ん、」 言葉の途中でグイッと突き上げられる熱量。そのまま奥をぐりぐりと擦られる。 「…あは。休憩なんて必要ねぇじゃん。ジェイドの奥、もっとほしいって締めてくるよ」 「そんな、ちがっ」 「素直じゃねぇ口は黙ってな」 顎を掴まれ強引に口づけられる。そんな手荒いキスにも身体が反応してしまう。 「……んふ。身体は正直だねぇ。ジェイドがかわいくて、オレ、手加減できねぇかもぉ…♡」 ペロリと唇を舐めるフロイドの顔は捕食者のそれで。 (……ああ。…食べられてしまう……………♡) と、僕は思ってしまった。 「………ジェイド。…ジェイド」 ぺちぺちとジェイドの顔をたたいてみたが、全く反応がない。 「…やべ。…やりすぎちゃったぁ」 ジェイドが二度目の絶頂を迎えた時、ふっと扉が現れカチリと鍵の開く音が聞こえた。 だけど、散々煽られていたオレはそれで終わる事ができなかった。何度も何度もジェイドに劣情を打ち付け結果抱き潰してしまった。 「……あとで怒るんだろうなぁ」 ジェイドを抱きあげ、目を覚ましたらどうやってご機嫌を取ろうかと考える。 「…けど、勝負にこれを選んだジェイドに勝つ気なんてねぇよなぁ」 いつだってオレの腕の中で可愛く乱れるのだ。オレがジェイドを抱き潰すのだって、当然初めてじゃない。 目を閉じたままの愛しい番にちゅーをする。 (…とりあえずキノコ料理でも作るかあ…) そんな事を思いながら部屋を出たのだった…。

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