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第1話

 大学主催のパーティや各学科主催の文化祭はいつも盛況だ。  特に日本語学科が年に一度開く日本文化祭は、大学がもっとも力を入れる行事の一つで、日本語専攻の学生だけでなくこの大学に数多く在籍する日本人留学生も巻き込んで、かなり盛大に行われる。  親日派の国だから、日本文化研究や舞台発表はどれも趣向を凝らしていて見応えがあるし、模擬店やバザーなども多く出て、日本文化祭は学生だけでなく一般来場者にもとても人気があるらしい。 「早瀬(はやせ)さんは初めてでしょ」 「ああ。日本文化祭?」 「そう。すごく楽しいよ。今年の出し物、何にしようかなあ」 「去年は何したの?」 「うちのクラスは浮世絵の研究発表と当日はメイド喫茶だったよ」 「…へえ」  浮世絵とオタク文化が同列というのもなかなか興味深い。 「早瀬さんは何したい?」 「え、俺? 俺は関係ないでしょ」 「ううん。留学生もどこかのグループに入るよ」  どの出し物にも模擬店にも日本人留学生が一人はアドバイザーとして配置されると言う。 「そうなんだ。何でもいいけど、楽しそうなのがいいな」  そう話したのが先週のことで、日本のマンガやアニメが大好きだと言う実行委員がやりたいと言いだして、俺は執事喫茶の担当アドバイザーになった。  アドバイザーも何も、俺は日本で執事喫茶なんて行ったことはない。  それでも俺よりもよほどマンガやアニメに詳しい日本語専攻の学生たちと一緒に、あれこれ企画して準備するのはとても楽しかった。  そして、日本文化祭当日の今日はタキシードを着て「お帰りなさいませ、お嬢様」などと言って、たくさんの女子にケーキセットを運んできゃあきゃあと騒がれた。  全体的に小柄な体格のこの国で、平均的日本人よりちょっと体格のいい俺は頼りがいのある雰囲気に見えるらしく、ここに来て日本にいた頃の十倍くらいモテるようになった。  俺としては女子に騒がれるよりは、かわいい男の子に運ぶ方が断然楽しいのだが。

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