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紺野瑠衣
小さい頃、身代金目的の誘拐にあったことがあった。
当時警察官で勤務していた、渡辺さんに助けてもらい。
命を救われた。
そしてなにかの縁で渡辺さんの元で働いている。
いろんなことを教わり、頼もしい師匠だった。
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俺はどうにかシェルターに入り、遺跡から脱出することができた。
花咲という男は自分を犠牲にして仲間を助ける。
そういうやつなのかもしれない。
渡辺さんが言うより悪いやつではないのかもしれない。
それに俺があの時、本心だよって言ったのが原因だよな…。
5歳も違うのに大人げなさすぎる…。
遺跡の入り口にはまだ渡辺隊がいた。
声をかけようとしたら話声が聞こえてしまった。
「基地に戻ろう」
「いいんすか、紺野置いて行ってしまって」
「花咲同様、調査時に死んだってことでいいだろ」
「そっすね」
「それに俺、あいつに好かれてる理由わかんねぇんだよな」
「え? そうなんですか?」
「ああ、だってどこであったかもしれないやつだしな」
…え?
出るに出られなくなってしまった。
情けない、あんな大人に憧れてしまうなんて…。
「どうしました?」
「うぉ!!」
後ろから突然声をかけられた。
「出ていかないのですか?」
「あ…なんかいいや、それよりも俺たち死んだことになってるんだって、とんずらこいちゃう?」
「俺はまだ後始末を終わらせてないのでとんずらできません」
と出ていく。
5歳下の18歳でこの言葉…こっちのほうが圧倒的に大人だ。
基地に帰ると、渡辺隊が報告をしていた。
俺も後ろに付いていくと驚いた様子だった。
今の議長は岩崎コーディーの父親でかなりご立腹だ。
「翔太!! 大丈夫だったか?」
「ああ、問題ない」
「そうか」
「おかえりなさい」
「ただいま」
渡辺隊とは違う、温かい環境。
見下して貶めて、それしかできない大人たちとは違う。
医療部の部隊長、盤上さんも認めている人、そして俺の幼馴染、水野も
水野が横に立ち。
「俺、決めたんだこの先、花咲さんについていくって」
…。俺だけが迷ってる。
どうしたらいいのか、後2年後正式に花咲は隊長になり、話が進められていくんだと…。
俺は一度、渡辺隊に捨てられている、自分のエゴで花咲の元に行ってもいいのか。
「瑠衣が迷うの珍しいね、花咲さん、今はまだ不安定な部分もあると思うけど、根はやさしいし、絶対に裏切らないでいてくれるから俺は安心するよ、それに医療部の腕前がすごい」
にかっと笑っていた。
水野をこんなにも笑わせられるなんてすごいことだ。
俺も信じてみようかな。
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