王都から離れた辺境の街で、魔物の大量発生があり、辺境伯からの緊急要請に応え遠征に出ていた宮廷魔道士長のライオネルは辺境の地で久々に魔法を存分に使って満足し、いつものように遠征隊とは別に自分の護衛騎士をおいて一足先に空を飛びながら家路についていた。 「（ん？　なんか王都に異物が混入してるっぽい？）」 　王都の結界は現在宮廷魔道士長であり、国1番の魔道士でもあるライオネルが一手に引き受けている為、異変等に真っ先に気がつくのはやはりライオネルになる。 　異物が差し障り無いものならそのまま放置でも構わないが何かあった場合を考えると、一応はこの国を守る為に存在する宮廷魔道士なので、異物が問題無いものなのか把握しておく必要がある。 　一直線に王宮へ向かっていた足を止め、一度王宮へ戻るかそのまま異物のある方へ行くか暫く考えた後、取り敢えず簡単な調査だけ行おうと思い、ライオネルは異物のある方へ行く事にした。 ♢♢♢ 　王都の繁華街。繁華街が賑わうのは夕方からの為、今のような昼間は人が少ないが全く人通りがない訳でもない為、有名人であるライオネルはフードを被り街中を進んで行く。 「（ここか）」 　なんの変哲もない高級娼館の1つ。ただ、異物はこの建物の地下から感じる。 「（物置にしては随分広いし、生命反応が所々に纏まっているな。……違法建築かな）」 　王都の商業地区や繁華街は物置以外地下に通路や隠し部屋等設置することは基本的には認められていない。 「（うーん。異物が星屑とかなら影響そんなに無さそうだし、見て見ぬ振りしても良いけど……。一応ここまで来たし確認しておくか）」 　ライオネルは異物が混ざった事は分かっても、その目で見るまで何が混ざってるいるかは分からない。 　世界は幾重にも重なっており過去にもこの世界には無いものが落ちてきたりする事はちょこちょこあったのだ。それをいち早く察知して危険ではないかどうかを確認する事も宮廷魔道士の1つの仕事なのだ。 　ライオネルは一度高級娼館の前を通り過ぎ路地に入ると気配と姿を魔法で消し、そっと高級娼館へ戻り警備の脇を通り過ぎ入り口へ入っていく。 　が、地下への道が案内人無しに簡単に見つかる訳もなく、焦れたライオネルは異物がある隣の部屋へ直接転移する事にした。 　転移して周りにバレていない事を確認すると、異物を感じる部屋へ向かい中をこっそり覗いてみる。 　そこには色白の全裸の少年が2人の男に犯されていた。 「ほら、四つん這いになって前の口で奉仕しろ」 　客の1人がベットの端に膝立ちになる。少年はノロノロと四つん這いになり、言われるがまま客の陰茎を咥え奉仕する。後ろにいた客も少年の後肛に自分の陰茎を差し込むと尻を叩きながら自分の快楽を求め激しく突く。 　口で奉仕させていた客が物足りなくなったのか、少年の前髪を掴みイラマチオへ移行した時。 　一瞬少年と目があった。 　ライオネルは気配も姿も遮断している筈なのに、目があったかもしれない事に驚いたし、何よりその色白の肌に表情があまり動かない整った綺麗な顔、諦めているような目なのに、諦めきっていない紫の瞳がまぶたに焼き付いた。 　ーー欲しい。 　イラマチオをさせていた客は最後少年の口の中に射精し、全部飲み終わるのを確認するまで頭を抑え込み、手を少年から離さなかった。 「俺はキツめがいいんだが、後ろが緩くなってきたな」 「あ、なら良いものあるぞ、暫く来れなくなるから今日はオプションを付けたんだ」 　そう言ってイラマチオをしていた客は部屋の隅にいき何かを準備して戻って来た。その手にあったものは 「じゃーん。火かき棒。コイツの苦悶の表情が良いんだよ。当てた瞬間後ろの穴でねじ切られないようにしろよ。あとお前が火傷しないようにな」 　少年はぼんやり火かき棒を見ている。と、予告無しに客は少年の背中に熱せられた火かき棒を押し当てた。 　ーージュ…… 「う、ああぁ、あぁ……」 　肉の焼ける音と匂い、そして少年は少しの呻き声と苦悶の表情を浮かべる。 「おー。締まる締まる。食いちぎられそうだ」 　後ろにいる男は興奮したように腰を振りたくる。 　火かき棒を当てた男は少年の顔をニヤニヤ観察した後、2本目を準備し始めた。 　ライオネルは一瞬で中に入ると、素早く男2人を昏倒させた。本当は調査だけで踏み込むつもりは無かったのだが、これ以上この少年が傷付くところを見ていられなかったのだ。 　少年は酷い脂汗を流し、荒い息を吐きながら、静かにこちらを見ている。 「だ、大丈夫か？」 　ライオネルは声をかけてから”大丈夫な筈がないじゃないか”と気がつくが動揺した頭では深く考えられない。 　取りあえず、治癒をしようと近付き再度声をかけてしまう。 「ち、治癒の回復魔法はかけるが、何かして欲しいものはあるか？」 　また聞いてから、”一刻も早く治療して欲しいに決まってるじゃないか”と自分に突っ込みを入れたが、今度は回答がかえってきた。 「して欲しいこと……」 　少年は真っ直ぐにライオネルを見つめると、今までの無表情が嘘であったかのように口角をあげ、微笑むと可愛らしい表情で 「じゃぁ殺して」 　と言った。 「へっ？」 　ライオネルは笑顔と話の内容の乖離に一瞬呆けたが、自殺されては困ると、そっと少年に近付くと眠りの魔法をかけ崩れ落ちた少年を抱きとめる。 　裸で倒れてる男2人と意識を失った全裸の少年と、不法侵入中のライオネル。 「うーん。どーしよう」 　少年の治癒を行いながら、器用に頭を掻く。 「取り敢えず持って帰るか」 　今回の異物は”生物”だった事に少年を抱きとめてからライオネルは気が付いたのだった。