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第10話 甘えた(ライオネル視点)
紫音が泣いた後、言いたくない事は言わなくていいから、今迄の事を話してくれないか? と俺が言うと、紫音はポツポツと生い立ちを掻い摘んで話してくれた。研究所生まれで親は存在しない事、洗脳に近い教育を受けていたこと、国の政策の方針転換で里親が付きその里親に愛された事、里親と過ごした幸せな期間は3年間で終わってしまったこと、訓練所で訓練の後戦争へ14歳の時から駆り出されていた事。
ライオネルからしたらまだ18歳なのにこんなに綺麗な顔の下でヘビーな人生を送っている事を知り驚いていた。
そして、ライオネルにとっては嬉しい誤算だが、シオンが超絶可愛くなった。
恐らくずっと心を押し殺してきた反動なのだろう、ライオネルに心を開き精神年齢が少し幼くなったようだ。
こちらではシオンは小柄な事もあり12歳位に見えていた為、ある意味見た目通りに見える。
この話合いは朝まで続いた。
因みにヤッてはおらず健全なオールだった。
♢♢♢
ーー執務室。
「それで最後は小声で『もう行っちゃうの? 』って離れ難いように俺の服の袖を掴みながら上目遣いで寂しそうに言うんだよ! もう何度押し倒そうかと思ったよね」
「はいはい。心が通じ合って良かったですねー。(いつもより手を動かしてるから文句が言いにくい)」
ルイスは棒読みで答え、ライオネルをうかがう。
一睡もせずに執務に取り掛かるライオネルの目の下には隈ができてるが、幸せオーラが充満していて、書類仕事もいつもより捗っているようだ。
「それにしても彼もハードな人生を送っているのですね。えーとシオン君でしたっけ」
「本当に」
ルイスの言葉にアインが頷きながら肯定を返す。
ライオネルは2人には紫音に聞いた生い立ちを話していた。そういう話に弱いアインは目元が赤い。護衛業務中でなければ泣いていた事だろう。
「(ライオネル様はますます、シオン君にハマっているように見える。これは対策が必要かな)」
お花畑が満開のライオネルに対してルイスは先のことを思った。
これを機に、自分の住居と図書室の往復しかしていなかった紫音が時々、王宮の庭園でライオネルとお茶をしていたり、散歩していたりする姿を人が見かけるようになる。
ライオネルの少年への視線は誰が見ても明らかに優しい目をしており、”第三王子に本命現る”と噂が駆け巡ることになった。
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