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第12話 偵察(ルイス視点)
ーー主人の居ない執務室。
執務室の中には執務机とは別に、近くに簡易応接セットがあるので、そこに件の少年こと紫音を呼び出した。
ライオネルがハマっている少年について周りに聞き取り調査をしていたのだが、不自然なほどに存在感がなく、当たり障りのない情報しか得ることができず、王宮に来て1月は経ったのに驚く程紫音の性格等が判断できる材料が無かった。
ライオネルが、紫音の世話係として侍従を付けているのだが、服はクローゼットの中に入れているものを自分で着ているようで、洗濯物はちゃんとカゴに入れて置いておいてくれ、食事を部屋の中に運ぶ時はいつも居ないが、しばらく経って下げに行く頃には全て綺麗に食べた後、食器を纏めて置いといてくれる為、初日にライオネルに住居の説明と紹介されて以来、紫音と会った事がないらしい。
表面上ライオネルと紫音をくっつける事に協力する姿勢は見せているが、あくまで紫音という存在に害がないと判断出来たらの事であり、害があると分かったら、恨まれようともライオネルから紫音を離すつもりである。
その為に、情報収集していたのだが、全く集まらず、これではらちがあかないとルイス自ら会って判断する事にしたのだ。
「ご足労いただきありがとうございます。宮廷魔導士でライオネル様の補佐官を努めているルイスと申します。そちらにおかけください」
「はい。紫音と申します。失礼します」
「紅茶ですが良かったらどうぞ」
「ありがとうございます」
それにしてもとルイスは紫音を見る。綺麗な黒髪なのに、前髪を鼻の下まで伸ばしていてのびるに任せている姿はどうみても野暮ったいし、確かに色白で華奢ではあるが男の体型だしどう見ても、ライオネルが惚れ込む程の少年には思えない。
そう思いつつも、見た目ではなく中身かと、探っていく事にする。
「随分野暮ったいようですが、どーやってライオネル様を誑し込んだのでしょうか?」
「(誑し込んだ? 側から見たら誑し込んだと見えるのか)……分かりません」
「分からない? あなた男娼なんでしょう? 体を使って誑し込んだのじゃないですか?」
「(確かにライが初めて俺を見た時全裸だったな。その時に一目惚れしたと言っていたし、しかもお金を娼館に払って俺を抱いてるのだから俺は男娼か。)そうかもしれません」
「(あれ? まだヤッてないんじゃなかったでしたっけ? しかも反論も怒りもせず認めてしまう? なら)ただの男娼如きがライオネル様の近くにいつまでもいられると思わない方がよいですよ。それに貴方はいつまでただ飯食らいでいるんです?」
「(確かに。与えられるままでいたけど、普通は”仕事をして糧を得る”んだっけ)おっしゃる通りです。申し訳ございません。可能であれば私に仕事をお与えくださいませんでしょうか?」
「何でもするの?」
「はい。ライオネル様の不利益にならないことで私が出来ることであれば。」
「( ”ライオネル様の不利益”を考えられるとは、そこはしっかりしてるのですね。でも……)何でもと言いましたね。……では手始めに元男娼らしく私に奉仕してみなさい」
ルイスは紫音が男娼になりたくてヤッていたのではない事をライオネルに聞いて知っている。こちらに来たばかりで右も左も分からない中娼館に売られてしまい、どちらかと言えば抵抗出来ずに無理矢理されていた事も。
流石に嫌なことを言った場合に、どう言う反応を示すか見たいと思っての言葉だった。怒るのか、上手く避けるのか、嫌だという事を隠して大人しくいう事を聞くのか、媚びを売ろうとするのか。
「かしこまりました」
答えは特に表情を変えず即答だった。この王宮で幼少の時よりライオネルの側にいたルイスは優れた洞察力、推察力とその経験から隠そうと思っている表情や心の内を暴くのは得意だ。そんなルイスだが、紫音が何を考えているかルイスには分からなかった。
一方紫音は手慣れたもので、ルイスの足元に跪くと、ルイスの腰帯を外し陰茎を取り出して口に加えようとした。
ルイスは考えている事が分かる自信があった為、今回分からない事にかなり動揺して思わずされるがままになっていたが、本当にやってもらうつもりはなくこれ以上はまずいと止めようとした時
ーーガチャッ
「予定がズレたから俺も参加……」
「「「……」」」
ライオネルは自分の執務室なのでそのまま入室し、護衛についていたアインも入ってきた。
そこで見たものはソファに座っているルイスが紫音の頭を押さえ自分の陰茎を咥えさせているように見える姿。
ルイスからすれば実際には止めようと慌てて、紫音の頭を押さえているだけだし、紫音もまだ取り出した所で咥えてはいない。
因みに紫音は”鍵掛けるの忘れちゃったのかな”と呑気に思っていた。
そんな4人の時間が一瞬止まった後、
「ルイス……」
低い唸り声と共にライオネルの魔力が膨れ上がる。
ルイスはタイミングの悪い男である。
そして、”終わった”と思った。
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