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第33話 幸せな日々
それから離れていた時を埋めるように、2人は話し合ったし常に一緒にいた。
今では、紫音は執務をこっそり手伝っているし、ライオネルも紫音の鬼上司っぷりを垣間見た。
紫音の手伝いのおかげて執務は早く終わる日が多くなり、空いた時間は散歩に行ったり、城下町へ行ったり、本を読んだり平凡な日常とも言える日々を紫音とライオネルは2人でゆったり幸せに過ごしている。
ーーそんな生活が1ヶ月が過ぎた頃、紫音が倒れた。
「(ん? 横になってる? あー。とうとうライの前でやっちゃったのか)」
まだしっかり覚醒する前のぼやけた頭で、直前までの記憶と現状から結論を導き出す。
今まではふらつきそうになる前にちゃんと座って休んだりしたのだが、今回は予防する間もなく急に意識が無くなった。
ライオネルの前でだけはやりたく無かったんだけどなぁと周りを見回すと倒れた執務室ではなく、ライオネルのベットに寝ていた。しかも昼間だった筈なのに今は夜で随分長いこと意識を失っていたようだ。
すると、食事を運んでくれていたらしいライオネルが紫音に気がついた。
ライオネルは素早くテーブルに食事を置くと、ベットに駆け込んできた。
「シオン〜。大丈夫?」
ライオネルは紫音を抱きしめながら声をかける。顔は見えないが、声が震えているので相当心配をかけたようだ。
「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
ベットの上で食事を取ったあと、眠りにつこうとライオネルに抱きしめられながらベットに横になる。
暗くした部屋の中、ライオネルが小さく言った
「おいていかないで」
という言葉に、紫音は寝たふりをして答えず
「(ごめんね)」
と心の中で謝るしか出来なかった。
ーーそして、倒れた次の日から、微熱が出始めた。
「(あー。本格的にお別れの時間が近付いて来たんだなぁ)」
心配したライオネルに今日は執務室へ行かず安静にしているように言われた紫音は、ライオネルのベットで寝ている。
「(この1ヶ月、何気ない日常がこんなに幸せな事なんて知らなかった。俺ばっかり幸せにして貰ってバチが当たらないかな)」
ーー次の日も微熱は下がらなかった。
昨日いっぱい休んだからと執務室に行こうとしたら、熱が下がったらまた執務室に一緒に行こうとライオネルに言われた。
「(熱はもう下がらないんじゃないかな)」
と思ったけど、ライオネルには言えなかった。
ーー次の日はもう微熱ではなく普通に熱があった。
熱が上がっている事にライオネルが辛そうな顔をする。
紫音もやはりもう良くなる事はほぼないと確信したので、気になる事は死ぬ前にやっておくべきだと、今日の夜、話をしようとライオネルを誘った。
ーー夜。
紫音はベットに横になりながら、ライオネルはベットサイドで寝る前のお酒を飲んでいる。
紫音はそんなライオネルに聞きたかった事を話す事にした。
「ねぇライ。SEXしないの?」
ーーゴホッゴホッ。
ライオネルがむせた。あまりにも直球すぎたのだろうか?
ライオネルが落ち着くのを待つ。
「あー。急にどうした?」
「恋人だとヤるものなんでしょ?」
「んー。……まぁそうだな。でもシオンは気持ち良いと感じた事ないんだよな?」
「そうだけど……でも、ライが気持ちよくなってくれればきっと嬉しいと思うよ」
この1ヶ月の間、お互いに話した時、どんな話題からその話になったかは覚えていないが、SEXで1度も気持ちいいという”快楽”を感じた事がないと言ったらライオネルは驚いていた。
その時に、恋人は身も心も繋がりたいからSEXをすると教えてくれた。
そして同時に、ライオネルと紫音はガッチリ心が繋がったから焦って無理にする必要はないんだとも言ってくれて、結局今まで体を繋げたことはなかった。
「じゃ、シオンが元気……になったらしてみよっか」
紫音の頭を撫でながら優しく微笑むライオネル。
やっぱりライオネルも、薄々思ってるよね?
もう、元気になる事はない
ということ。
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