2 / 6

第2話 俺のヒーロー

 容姿端麗で頭もいい玲生は俺の自慢の親友で幼馴染。気の小さい俺は幼少期からイジメられたり、からかわれることが多かった。そんな時、玲生はいつも俺に駆け寄って味方になり盾になってくれた。そう、俺からみたら玲生はヒーローそのもの、憧れを抱くのは必然だった。  小学校、中学校は当たり前に一緒にいられるけど、高校はそうはいかない。頭の良い玲生は早い段階から志望校を決めていて俺は初めて焦りを感じた。「好きな人と同じ高校に進みたい」そんな理由で進路を決めるなんて、と思ったけど、どうしても彼から離れるのが嫌だった。ただ玲生の隣に居続けたいという邪な思いで俺は猛勉強をし、見事玲生と同じ高校に合格を果たした。  入学式当日──  真新しい制服に身を包んだ玲生と一緒に登校した。ずっと変わらないいつもの朝。まだ見慣れない制服姿に少しだけドキドキする。そんな俺を見透かしてか、わざとらしく顔を寄せ「制服似合うね。かっこいい」なんて恥ずかしげもなく言葉にして褒めてくれた。俺なんかよりずっとずっと玲生の方がかっこいいのに……  意識してるのはもちろん俺だけ。「かっこいい」なんて、別に深い意味はない。それでも好きな人に褒められれば素直に嬉しい。  入学から数日が過ぎた頃、クラスが離れてしまった玲生の噂を耳にした。心配していた通り、早速玲生のことが好きだという女子の噂。モテるのは百も承知。でもどうしたってヤキモキしてしまう。 「──好きだからって付き合おう、とは思わない」  玲生のその言葉に俺はずっと縋っている。好意を寄せられても彼の中には「付き合う」という概念は薄いのだと心の中で願っていた。  でも、もし玲生に好きな人ができてしまったら? 当たり前に立っていた玲生の隣は俺の場所ではなくなってしまう。それは想像するだけで耐え難く、その時が来てしまうのが猛烈に怖いくせに俺は何もできないでいた。  そもそも俺は「男」だし玲生の恋愛対象ではない。周りの女子たちを差し置いて告白なんてしてしまえば玲生は凄く驚くだろう。最悪、隣に立たせてもらえなくなるかもしれない。さらに軽蔑されでもしたら俺はもう立ち直れない。  好きだから、大好きだから、付き合いたいと思っちゃだめなんだ── 「あ、そうだ優弥。今日はさ、大事な用事があるから先に帰ってていいよ」  休み時間、不意に玲生に呼び止められた。 「え? うん、わかった」  大事な用事って何だろう。いつもならこういう場合はちゃんとした理由を教えてくれるのに、なんで? と聞く間もなく行ってしまった。何だかはぐらかされているような気がして悲しくなる。こんな些細なことでも気持ちが落ち込んでしまう自分が女々しくて情けなかった。

ともだちにシェアしよう!