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第1話

「お父さん!お父さんの初恋の人は誰だったの?」 僕は娘の頭を撫でながら答える。 「そうだね。とても魅力的な人だったよ。」 「いつのお話?」 「高校生の時だったかな。」 「もっと教えて!」 「うん。分かったよ。少し昔話をしようか・・・。」 娘にせがまれて彼との思い出を語ろうする僕の心は高校時代に戻っていった。 「トオル!すまん、遅くなった。帰ろうぜ。」 声を掛けてきたのは幼馴染のホムラだ。 彼はバスケ部に所属している。確か一年生ながらエースとして活躍しているはず。 夕暮れの教室で彼に差す茜色の光は彼の精悍さを一段と際立たせていた。 彼からわずかに香る汗の匂いとそれをかき消すように広がる制汗剤の匂いが僕の鼻腔を刺激する。いつの間にか僕の下半身ではテントが立っていた。 「別にわざわざ誘ってくれなくてもいいのに。」 わざとぶっきらぼうに言う。 「そんなこというなよ。幼馴染じゃないか。」 「部活の人たちと帰って方が楽しいと思うけど。」 「そうか?俺はトオルといる時間が一番楽しいよ。」 彼は何の気なしにこのようなことを言うのだ。僕が一体彼に対してどんな劣情を抱いているのかも知らないで。 「どうしたんだ?」 「いや、なんでもない。」 そう言って僕は読んでいた本をカバンにしまうと椅子から立ち上がる。 「帰ろう。」 「ああ。」 僕たちは教室を後にした。 彼のことを意識し始めたの中学生の時だった。 何気なく組まれた肩から彼の体温を感じなぜか胸が高鳴るのを感じた。 それ以来彼は僕にとって性愛の対象になり始めた。 「トオル。おーい。大丈夫か。」 彼の言葉で現実に引き戻される。 「ん。ああ。どうした。」 「トオルにちょっと相談があるんだ。」 「何かな?」 「いや、実はマネージャーから告白されてさ。」 「えっ・・・。」 絶句する僕を見て彼は笑う。 「そんなに驚くことかよ。」 「いや・・・。うん。それで、相談っていうのは。」 「ああ、どうやって断ろうかなと思って。」 「そうか。断るのか。」 内心ほっとしていた。彼が誰かのものになることなんて耐えられそうになかった。 「でも。なんで断るんだ?別に今付き合っている人がいるわけじゃないだろ。」 「そうだけどさ。こんなこと初めてでさ。女の人と付き合うってこともまだよく分からないし。」 「うーん。でも僕も良く分からないぞ。とりあえず相手を傷つけないようにだと思うけど。」 「どうやったら傷つけずに済むんだ?」 「好きな人がいるとかじゃないか。」 「それが一番かな?」 「いつ相手に言うつもりなんだ?」 「明日の昼に返事をするって言ったんだ。」 「直接?」 「ああ、直接。中庭で。」 「そうか・・・。」 「そうだ。トオル、断る時一緒に居てくれないか。」 「えっ。なんで?」 「トオルが居たら心強いんだ。ダメか?」 「いや、いいけど。」 話しているうちにお互いの家の前に着く。 二人の家は道路を挟んで向かい合うように建っていた。 「じゃあな、トオル、また明日。」 「ああ、また明日。」 そう言って彼は家に入っていった。 「ただいま。」 家のドアを開ける。 「お帰り。」 父が僕を出迎えた。 「母さんは?」 「突然、出張が入ったみたいでね。今日は帰ってこないよ。」 「そっか。」 「御飯の準備はもう出来てるけどどうする?」 「先にシャワーを浴びてくるよ。」 父にそう答えた僕は部屋にカバンと制服を置きシャワーを浴びる。 ホムラが告白をされたなんて。確かにホムラは身長も高いし、運動神経もいい。人当たりも良いからモテないはずがない。いままで告白されなかったことが不思議なぐらいである。 ホムラが断ると言ってくれて良かった。彼がもし付き合うと言っていたら、僕はまともじゃいられなかったかもしれない。 ホムラのことを考えているとムラムラと勃ってきた。ホムラは僕が告白したら受け入れてくれるだろうか?女の人付き合うのが分からないのなら男とは付き合えるのだろうか? 冷静さを見失っている気がする。落ち着きを取り戻すため一度抜く。 そうだ、ご飯の準備が出来ていると父が言っていた。早く上がろう。 「ごちそうさまでした」 部屋に戻り、読みかけていた本を開く。文字を目で追ってはいるものの目が滑ってばかりで内容が頭に入ってこない。考えているのはホムラの事ばかりだった。 もう寝たほうが良い。ベッドに入り目を閉じる。 「ああ、ホムラ」 ホムラのモノが僕を突くたびに甘い快感が脳をビリリと貫く。 「トオル、俺、もうイキそうだ。」 「ああ、来てくれホムラ。君のを僕のナカでいっぱいにしてくれ。」 「ああ」 ホムラが僕のナカを満たし脈打っているのを感じる。彼が言ったのと同時に僕のモノからもトロトロと白い液体が滴っていた。 そこで目が覚める。 「夢か・・・。」 きっとホムラのことを考えて寝たからだろう。 時計を見ると朝の7時だ。 リビングに下りると朝食が並んでいた。 「おはよう。」 「ああ、おはよう。どうした?顔色が少し悪そうだけど。」 「なんでもないよ。いただきます。」 朝食を食べ終え服を着替える。 外をのぞくとホムラが待っているのが見えた。 「行ってきます。」 そう言ってドアを開ける。 「トオル、おはよう。」 「ああ、ホムラ、おはよう。」 生のホムラを前にし、下半身が膨らむのを感じる。まだ夢の余韻が残っているようだった。 「大丈夫か?」 「ああ、大丈夫。」 ホムラと他愛のない話をしながら学校へ向かう。 「じゃあ、昼休憩に、よろしくな」 「ああ、分かっているよ」 そう言って教室の前で別れる。教室の中はいつも通りがやがやとしていた。 昼休憩、ホムラが僕を呼びに来た。 「トオル、付いてきてくれ。」 「ああ。」 トオルについて中庭に向かう。 中庭にはもうすでに人がおり、少女が立っていた。 「ごめん、ミカ」 「あっ、ホムラくん、えっと後ろの人は?」 「ああ、こいつは幼馴染のトオルだよ。」 「えっ、あっ、どうも」 そう言って彼女は戸惑ったように頭を下げてきた。 確かに彼女からしたら意味が分からないか。告白した相手の答えを聞くときに、相手が幼馴染を連れてきているのだから。 「どうも」 僕も挨拶を返す。 「ミカ、ごめん、俺には付き合っている人がいるんだ。」 あれ、そんな断り方するはずだっけ? 「もしかして横のトオルさん?」 「ああ」 ちょっと待てどういうことだ。 彼女も少し混乱しているようだった。 「それなら付き合ってる証拠でも見せてよ。」 ホムラはおもむろに僕の方を向くと僕に口づけをする。 彼の舌が僕の口内を蹂躙していくのと同時に太ももホムラの熱いものを感じる。 「これで証拠になるかな。」 彼女は呆然とした様子だった。そして我に返ったと思うと駆け出していく。 「どういうことだ。ホムラ。」 「好きだ。トオル、付きあってくれ。」 「まて、説明をしろ。」 「前からトオルのことが好きだったんだ。昨日告白された話をした時、驚いてたろ。断るっていった時安心してたし。なんとなく、トオルも俺のことを好きなのは感じてたんだ。だから・・・。トオル、俺の事嫌いか?」 「いや、好きだけど・・・。そういうことじゃない。彼女が可哀そうだろ。」 「俺はトオル以外どうでもいい。それともミカのことが好きなのか。」 ホムラの目が心なしかハイライトを失っている気がする。 「落ち着け。ホムラ。俺もお前のことが好きだ。」 「ああ、良かった。」 そう言ってホムラに抱き締められる。同じホムラを好きな人間としてミカには憐れみを感じざるを得なかった。 「今日はここまで。」 そう言って話を終える。 「せっかく付き合えたのに。これからいい所じゃない。」 「そうだね。でもこれ以上は夜更かしになってしまうからね。お姫様は寝る時間だよ。」 「うーん。」 項垂れている娘の頭をもう一度撫でる。 「また、話してあげるからね。」 「うん、絶対だよ。約束だよ。」 「ああ、分かってるよ。おやすみなさい。」 「うん。おやすみ。」 部屋の電気を消す。 すうっと目からこぼれた液体が頬を伝う。 あの頃はもう二度と戻ってこない。

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