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第1話

 俺、藤村蓮太郎(ふじむられんたろう)はUFOにアブダクションされたことがある。  アブダクションとは、哲学では結果を適切に説明するための仮説を導き出す推論のことだが、俺が言っているアブダクションとは『誘拐』『拉致』の方を指す。つまり、俺は宇宙人に誘拐されたことがあるのだ!  何言ってるんだこいつって思うのは分かるけど、俺もほんとそう思う。  あれは俺がまだ小学校低学年、8歳頃だ。学校からの帰り道、まだ明るい時間にも関わらずいきなり目の前が真っ白に染まり、気がつけば自分の頭上にでっかいUFOが浮かんでいた。  あれよあれよと言う間に、俺の身体はふわふわと浮き上がり、UFOへと吸い寄せられていった。  次に気が付いたのはUFOの中。俺は全裸で寝台に寝かせられていた。動こうにも両手が左右にベッドに紐で括りつけられ、足は大きくM字開脚させられた状態で拘束されて動けない。泣きそうな俺の横には銀色の光る肌に銀色の全身タイツみたいなものを纏った碧眼の美形宇宙人ーーUFOに乗っているならきっと宇宙人だろう。一応(仮)(カッコ仮)としておくーーが立っていて俺を見下ろしていた。 「ほへ〜〜」  状況は最悪なのに、美形の宇宙人(仮)にしばし見惚れてしまう俺。  美形は俺に手を伸ばし、サラリと俺の髪の毛を撫でた。はっと我に返り、今更ながら恐怖が押し寄せて身体に震えが走った。 「怖がらないで、可愛い人」  いや怖いわっ!!  てか何でコイツはフツーに日本語喋ってるんだよっ! 「ぼ、ぼ、ぼぼぼぼ僕は今から何されるの……?」 「ふふ……♡」  美形宇宙人(仮)はそれはもう地球ではお目にかかれないほど慈愛に満ちた顔で微笑みやがった。ふふ(はあと)、じゃねぇよ! 何をされるか分からない今の状態は恐怖でしかねえんだよ! 「大丈夫、痛いことはしないから」  そう言った宇宙人(仮)。しかしそいつの横にある台の上には鈍色に光る手術器具のようなものが置いてあり、俺は股間が縮み上がるような気がした。  いや、見るからに痛そうなんだけど……!?  宇宙人(仮)は笑みを浮かべながら薄手の手袋をして、台の上から鳥の(くちばし)のような形をした器具を取り上げた。そしてあろうことか俺のケツの穴にぐいっと嘴部分を差し込みやがった! 「ふゎ……♡♡♡」  ほら、高熱が出た時に座薬を入れられたような感覚分かるだろ? あんな感じがして思わずなんとも言えない声が漏れた。確かに痛くはない、痛くはないけど!   気持ち悪りぃ……!! この変態宇宙人(仮)(へんたいうちゅうじんカッコ仮)め!  もうめんどいから呼び名は変態でいいや!  変態は俺の穴の中に入れた器具の先端を開いて尻の穴を拡張させると、そこに細長いピンセットのようなものを差し込んだ。もうこの頃には俺は涙目で、気持ち悪さとゾワゾワした感じに身悶えしていて、何が何だかよく分からなかった。女の子だったら嫁に行けないレベルだ。  いつ、その器具を身体から抜かれたのか覚えていないほどに頭が真っ白になっていた。気が付くと俺の両手足の拘束は外され、目の前に変態のドアップがあった。俺はベッドで変態に抱きしめられていたのだ! 「あ、気が付いた? 私の可愛い人♡」 「うっひょお!」  あ。変な声出た。  目の前の変態が麗しすぎて逆に怖いっ!!   逃げようと身動ぎしたが、両手でがっしりと抱きしめられているためそれも叶わない。うっとりと俺の顔を見つめる変態。彼(だと思う)は俺の耳元で囁きかけた。 「……あと十年。十年経ったら迎えに行くからね」  ーーそこで俺の記憶は途絶えた。  俺はその時のことを夢だと思っていた。  下校途中の小学生がたくさん歩く道でUFOに吸い込まれたのに、誰も俺が連れ去られた所を見てないし、俺が地球上に居なかった空白時間はなく、時間が連続していたからだ。俺の後ろを歩いていた同級生のミチオくんはずっと俺が目の前を歩いていたと言っているし。  暑い時期だったし、頭がぼーっとして白昼夢でも見たのだろうと自分で勝手に結論付けた。  その後は面白おかしく「俺ってUFOに連れ去られたことがあるんだぜ〜」って小学生の頃は笑いを取っていた。そして中学に入る頃にはすっかり記憶の中から消していた。  ーーそれなのにさ。  まさか本当に迎えに来るとは思わないじゃん!?      それは高校の卒業式の日。  教室で先生の話を聞きながら卒業写真をぺらりとめくっていたら、いきなり窓の外が真っ白になった。  ようやく光に眼が慣れ、窓から校庭を見ると。    小学生の頃に見たUFOが着陸していた……。  それを見て、俺はUFOの中でされた事を鮮明に思い出した。  さぁっと血の気が引いた。 「な、なんだよあれ。イン◯ペンデンス・デイか!?」 「未確認飛行物体だ!」 「すっげえ」  一斉に窓のほうに集まる同級生たち。ざわつく教室。動揺する先生の声。  UFOの側面がパカっと開き、中から銀色の変態が下りてくる。 「ようやく時が来た。一緒に行こうーー私の運命の(つがい)ーー」  頭の中に声が響いた。  俺? もちろん逃げたぜ。  俺は誰にも気付かれないようにそっと教室を出て、男子トイレの個室へ隠れた。  顔が真っ白になり、手先に力が入らずに身体が震える。頭を押さえてずるずると便座に座って身体を小さくした。    アレは俺を連れ去りに来たんだ。これはアレだ。アイツに捕まって連れてかれたら絶対えっちなことされる! とうちゃん、かあちゃん、先立つ不幸をお許しください。ねえちゃん、隠してあったBLの薄い本勝手に読んでごめんなさい。まさか自分がBL本みたいに『番』なんて呼ばれるとは思わなかったよ! オメガバースかよ! え、古い? 今はDom/Subユニバース? 「びーえるのうすいほん……とは???」 「ぎゃあああぁぁぁぁ!!!」  鍵を掛けた筈のトイレの個室のドアが勝手に開いて、目の前に変態が立っていた。前には変態、後ろは壁。前門の虎、肛門の狼!! 捕まると俺の肛門がキケン! 「ヒ、ヒエェェェ! お〜た〜す〜け〜〜〜〜!!」 「私の愛し子は叫び声も可愛いねぇ♡」  ほら! そこの変態っ! ハートマーク飛んでる! うっとりしないっ!   俺なんて完全に日本人特有ののっぺりした薄い顔に黒縁眼鏡のボッサボサ黒髪よ? 髪整えて眼鏡外したら美少年ってこともないぞ? 腹がふにゃっとしてて身体も引き締まってなくて、基本引きこもりだから肌も生っ白いし、身長も平均くらいでどこにもうっとりする要素はないぞ!?  変態は僅かな隙間から逃げようとする俺を壁に追いやってバンっと手をついた。おお、これは壁ドンってやつじゃねえか。萌えるシチュだが俺は男だしここはトイレだしやってるヤツは銀色の変態だ。全然嬉しくない。 「さあ一緒に行こう♡ 蓮太郎には私の子供をたぁくさん産んでもらわないといけないからね♡」  やっぱりかーーーーーー!!  産めるかあぁぁぁーーー!!  変態が俺の肩と顎を掴んだ。グイッと顔を上向きにさせられ、高い場所からキスされた。  ああああ、顎クイからのキスーーーー!  俺のファーストキスを返せっ!  とか思ってたらぬめっと舌が入ってきて、歯列や上顎を舐められて、舌の付け根を厚い舌でじゅるんと吸われた。ふえぇ、こんなの知らない。は・じ・め・て♡  大人のキスに頭がぼーっとしたところで眼の前の空間が歪んで俺は意識を失った。  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  ーーその頃、教室では……ーー。 「あれ? オレたちなんで外なんか見てるんだ?」 「さあ……?」 「どうしたんだ? ミチオ。ぼーっとして」 「あ……、うん。小学生の頃行方不明になった藤村蓮太郎も一緒に卒業できたらよかったと思って……。俺は後ろ歩いていた筈なのに、いつの間にかあいつ、居なくなっちゃってて……」 「ミチオ……」 「あ、ごめん。でもさ、俺、まだあいつはどこかで生きているような気がするんだよね」 「あ、うん。俺も何故かそう思う」 「俺も」 「僕もだよ」 「おーい! お前らーー! 卒業で浮かれるのは分かるけど早く席に着け!!」 「あれ? ここにもう一つ席がなかったっけ?」 「気のせいだろ」 「そう……だよな……」  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  くちゅ。ぺちゃぺちゃ。じゅっ。くちゅくちゅ。ぐちゅん。  ……あれ? 水の音がする。俺、水道の蛇口締め忘れたのかな……?  はむはむ。ぐっちゅん。ちゅっぽん。 「あ、んっ♡ ああ……♡」  ああ、なんかすっげえ気持ちがいい……。声が出ちゃう。  もっと…もっとしてほしい……。  俺、どうしたんだっけ? ここは……トイレ…だったっけ……? 確か…トイレで……銀色の……。    …………パチリ。  俺は目を開けた。意識がはっきり覚醒する。  そうだ! 俺はトイレで宇宙人の変態に襲われたんだった!!   「ふぁ()♡ ふぇんふぁろ〜(れんたろう)♡ ひょうふぁく(ようやく)ふぉふぃた(おきた)〜♡」  うわあぁぁぁぁっ!! 変態が俺のちんこしゃぶってるーー!!  俺は真っ裸でベッドの上に寝かされており、変態が股間に顔を埋めていた。そう、俺は気を失っている間に変態に口淫(フェラ)されていたのだ!  「な、な、な、な、何してやがんだこの変態ヤロウ!」 「ふぁふぃって、ふぇんふぁろ〜をふぃふぉふぃよふしふぇるんふぁよ〜♡♡♡」  咥えたまましゃべるな! 何言ってんのか分かんねぇ!  寝ているうちにどれだけ舐められていたのだろうか。俺の股間がちゃんと上を向いて仕事をしていた。  俺は変態の頭を両手でぐーーっと押して股間から遠ざけようとした。  変態は仕方なく俺のちんこから口を離し、舌で唇を左右に端から端まで舐めた。  ぺろりん♡♡♡ 「蓮太郎のおちんちん♡ 美味しくいただきました♡♡♡」  こ、こ、こ、殺す。絶対コイツを殺す!!  俺は足で変態を思いっきり蹴っ飛ばした。    変態がうずくまっている間に逃げ道がないか部屋をざっ見渡したが、扉も窓もない。だだっ広い部屋にはベッドと、水差しが置いてある小さなサイドテーブルしかなく、逃げる場所も逃げるための道具もない。多分ここはUFOの中だ。サイドテーブルの中に凶器があればいいんだけど、きっと入っているのはアレだろうな……。ローションってやつ……。テーブルの上の水差しは、『声が涸れたね…。水飲みたい?』とか言われて口移しで飲まされるヤツっ!! 「もうっ。俺の嫁さんってば恥ずかしがり屋さんなんだからぁ♡♡」  銀色の変態が勃ち上が……じゃなかった立ち上がって喋りながら距離を近づけてくる。おい、銀色タイツに包まれた股間! てめえの股間も勃ち上がってるから近寄るなっ!  「俺はてめぇの嫁じゃねえぇぇぇ!!」  叫び声を上げながら、変態から距離を取ろうと狭い部屋の中を走って逃げる。壁にガンガン手を打ち付けても、出っ張りやスイッチを探しても、どこにもドアを開ける仕掛けは見つからない。変態はにこやかに笑ってこまねずみのように逃げる俺を見ていた。  そうこうしているうちに何故かどんどん身体から力が抜けていく。動いたからか、なんか身体が熱いような??? 「ふぇ♡ 何だこれ……♡♡」  その場に倒れ込みそうになった俺を変態が受け止めた。 「私のフェロモンだよ♡ ようやく効いてきたんだね、鈍感さん♡♡」 「ふふぁぁ……♡♡♡♡」  ふわりと変態が俺を優しく抱きしめた。変態の耳の下の辺りからものすご〜く良い匂いがして、ついつい俺は変態の首に顔を埋めてすーはーした。爽やかな森のような清涼感溢れる匂いがする。変態への嫌悪感はどこへやら。いい匂い〜。気持ちいい〜〜。すりすりすり。 「いつまでも変態なんて呼び方はやめて欲しいなぁ。私の名はフェン。フェン・ダイ・イツバイエル。フェンって呼んでね♡」 「へ? 変態いっぱいいる?」 「……………………これはもうお仕置きしてほしいってことでいいのかな、蓮太郎くん〜〜?」  耳を引っ張られた。  あわわわわ。だってそう聞こえたんだもん仕方ないだろー!  変た……じゃなかったフェンは俺をお姫様抱っこしてベッドまで運びポンと放り投げた。ふわふわベッドにポスっと落ちた俺の手を取り、指を絡めてベッドのシーツに縫い付けた。壁ドンに顎クイにお姫様抱っこに恋人繋ぎ。女の子の憧れを四つもやられちまった。俺は男だけどな!  あれよあれよと言う間にベッドから動けなくなった俺。くそっ、この変な匂いのせいで身体に力が入らねえ。頭の芯から痺れてトロンとしてしまう……。  力が抜けた俺の首にフェンの顔が近づく。抵抗しようとするが、力が入らなくて首をぶんぶんと振ることくらいしかできない。そんな可愛らしい抵抗はフェンの唇に防がれた。    ちゅ、ちゅう♡ ちゅ。ちゅ、ちゅう♡  フェンがネズミの鳴き声のような音を立てながら俺の首筋や鎖骨にキスを落としていく。キスマークを付けているのか時折ツキンとした痛みが走る。フェンの唇は首から鎖骨へ、そして脇の下を念入りに舐め、それから胸の方に下りてきた。次に来る場所の想像がつき、俺は情けない声を出した。 「そ、そ、そ、そっちはダメだって! うう、やめて…」  フェンはチラリと俺の顔を見た。その眼に情欲の炎が灯っているのを見た瞬間、さっきまで感じていた良い匂いがブワッとますます濃厚になって俺に届く。ガクンと力が抜けて身体が熱くなった。奥の方から血が沸騰するように身体の疼きが止まらない。フェンに唇で触れられている場所がどこもかしこも気が狂いそうなほど気持ち良い。こんな状態でーー。 「あ゛っ♡ だ、だめっ♡」  ーー乳首をパクってされたら死んじゃうって!! 「あんっ、ああ……♡ ああん♡♡ あ゛あっ♡ や゛ん♡♡」  口の中に乳首を含まれて先をかぷっと甘噛みされながらぺろぺろ舐められたり舌先で押されたりなんかされると頭が真っ白になって、自分の声とは思えないほど甘い嬌声が洩れ、甘美な刺激に逆らおうという気がどこかに飛んでいってしまった。片側だけの刺激に対し、もう片方の乳首がこっちも舐めて欲しいと疼いてピンと立った。 「ひどぃ、片側ばっか……♡ はぁ、やめっ♡」  フェンの手が俺の指からすいっと離れて乳首をキュッとつまんだ。片方は口の中、もう片方は乳頭をクニクニとつままれて、コリコリと捏ねられて、グニグニと押された。俺はシーツを必死に掴んで射精しないように耐える。初めてでキスイキなんてダメ! ぜったい!    フェンはサイドテーブルの引き出しから瓶を取り出した。うわ、やっぱり入っていたのはローションだったか!  ローションを取り出したフェンは俺の上から離れ、軽々と身体をひっくり返した。ぐるんと視界が反転し、うつ伏せになる。ぐえ。シーツに顔を埋めた俺の腹の下にまくらが押し込まれ、尻だけが高く上げられた状態になった。これじゃ大事な所が丸見えだ。足と足の間にフェンがいるので、足を閉じることができない。 「ふふ……♡ 蓮太郎のココってピンク色で小さく窄まっていて、すっごいきれい……♡♡」  そんな詳細な報告いりません!  手がさらりと尻のあわいを撫でてくすぐったさに悶えていると、ぬるっとした液体を尻の割れ目や陰茎に落とされた。フェンの指が後孔の入り口に触れ、ローションで指を濡らしてから襞を伸ばしていく。そして少し柔らかくなったところで濡れた指が少しずつ、少しずつ俺の反応を確かめるようにゆっくりと、傷つかないように中に進んでくる。気を遣ってもらえているおかげで痛みは全くない。  ぐちゅ♡ ぐりっ♡ ぐぎゅう♡ 「うう……、う、うう……。ぎぼぢわりぃ……」  痛くないけど違和感がスゲェ!  「すっご! 蓮太郎のナカ、グッチュグチュでぎゅうぎゅうで私の指を一生懸命食べようとすっごいうねってるよ〜〜♡♡♡」  だからそんな詳細な報告いらないって!!  指が一本ずつ増やされ、三本になったところで挟むようにぐりゅんぐりゅんと俺の中をかき混ぜて反応を探っている。あ、ヤバい。これ、BL本で見たことある! 前立腺探してやがる。この状態で前立腺押されたら俺、どうなっちゃうんだろう……。    そして恐れていたものが来た。  折り曲げた指がある一点を掠めた時、電流が走ったかのように身体が跳ねたのだ。 「はぅっ♡♡♡ あ゛ぁひぃっ♡」  くりゅ♡ 「あ、や♡ あ、ああん♡♡」 「はい、ここ気持ちいーね、れんたろー♡♡♡♡」  きゅっ♡ ぐりゅ♡ ぷくっ♡ 「あ゛っ♡ ああっ♡ や゛んっ♡♡」  そこばかりを責められて、押されるたびに面白いくらいに身体が跳ねて後ろに反り上がった。俺の陰茎はもうバッキバキで、とろとろと先走りが鈴口から溢れ出てシーツに溢れていった。でもさすがに指の刺激だけではイクことができなくて、自分の手で扱こうと陰茎に手を伸ばしたら、手を払われて枕の下に誘導された。 「んふ……、イきたいのに……。ひどい……」 「だいじょーぶ。前には触れずに後ろだけでイってみよ?」 「ん…………」  きゅっぽんと指が身体から抜かれた。喪失感でいっぱいになった後孔が、早くもっと大きなモノを入れて欲しいと自分の意思と関係なくヒクついた。流れてくるフェンのフェロモンの匂いを嗅ぐと、奥の方が寂しくなる。この時はフェロモンの影響でおかしくなっていたんだろう。率先して自ら腰を上げて、ここに挿れてほしいと尻たぶを持って左右に広げた。フェンは俺の痴態に笑顔で応え、指をパチンと鳴らした。すると着ていたはずの銀色の全身タイツがふっと消えた。銀色の短髪がさらりと落ち、銀色に光る肌が露わになった。  ーーーーそして俺はフェンの下半身を見て固まった。 「で、で、で、でっかい……。それもなんか俺たちのと違う!?」  これぞまさに、天高くちんぽ肥ゆる秋!!  ごっくんと唾を呑み込んだ。天を衝くようにそそり勃ったはとても大きくて子供の腕くらいありそうだった。それにあの形! カリはエラが張ったように大きくて、竿にはイボのような突起がたくさん付いている。どこの大人のおもちゃだよ!!     こんなの入らねえ! 絶対無理っ!!  あまりの大きさとその卑猥な形に肝が冷えた。まださっきみたいに理性が飛んでた方がマシだったよ……。逃げようとするが、ガッと腰を掴まれてるので逃げられない。 「そ、そ、それはっ、ぜってえ、、ムリぃっ!!」 「だいじょーぶ、だいじょーぶ。いっぱい解したし、れんたろーの中から愛液がいっぱい溢れ出てるから♡」  ん……? 愛液???  女の子じゃないんだから、そんなの出ないだろ? BL本のオメガじゃあるまいし。  そういえばさっきからなんか尻の中がベタベタとするような……。ローションだと思っていたけどこれは……? 「あれ? 言ってなかったっけ。覚えてる? 十年前に蓮太郎の一番奥に埋め込んだの。あれ、どの種族でも子供が作ることができる人工子宮なの。中が濡れるのもそれのおかげ。これに私の精液をたっくさん注ぎ込めば子供が出来るから」 「は???」  そしてフェンはこれ以上ないくらいの満面の笑みを浮かべながらバックの体位でペニスを俺の後孔に当てがった。 「がんばって赤ちゃん作ろうね♡♡」  ズンっ♡♡♡♡ 「う゛、びゃぁ゛ぁぁぁ゛♡♡♡」  亀頭がぐっと中に入ってきた衝撃で、前からドピュッと白濁液が飛んだ。軽くイったようだ。濡れているせいか後孔は切れることもなく無事なんだけど、入り口の皺がなくなるくらいギチギチに限界まで引き伸ばされているせいで圧迫感がすごい。息苦しくてはくはく息をしていると、息を吸うタイミングでフェンのモノが少しずつ俺の奥に向かって進んでいく。 「ダメっ♡ あああっ♡ んっい゛い……♡ やン♡ ん…あ゛んっ♡♡♡」   少し入っては止まって、また動いて。みちみちと音を立てながらどんどん中が広がっていく。頭の芯が痺れ、脳が溶ける。眦から流れ出た涙と、閉じられない口から出た涎と、生理的な鼻水で俺の顔はもうぐちゃぐちゃになっている。奥へと進むたびに俺の鈴口から精液が飛んだ。 「大丈夫? れんたろー♡ んっ♡ すっごい中が痙攣して締め付けてくる♡♡」  途中で中を犯すのを止めたフェンが俺に聞いた。じんわりとフェンのものが身体に馴染む。俺が大丈夫じゃないって言っても止める気はないクセに。  手が後ろから伸びて来て俺の乳首をつまんだ。強く引っ張られてクニクニ、コリコリとひねられて腰が揺れる。そしてフェンは世にも恐ろしいセリフを口にした。 「蓮太郎、これ、まだ半分しか入ってないからね♡」  え゛? こんなにキツくてまだ半分なの!?  俺の動揺のスキをついて腰を強く掴んだフェンは、勢いよく俺の尻へ向けて腰を打ち付けた。 「あ゛あ゛ああああ♡ あ゛ひっ♡♡♡ があぁ゛あああ♡♡♡♡」  剛直なペニスが一気に奥まで突き入れられて身体を串刺しにされると背中が後ろに仰け反り、足の先がピンと伸びた。同時に鈴口から今度は勢いよく大量の白濁液がびゅくびゅくと飛び出してシーツを濡らしていく。眼の奥でチカチカと星が明滅した。 「あれ? もしかして後ろだけでもうイっちゃったの? でもまだ私は出してないからもっとがんばろう♡ 蓮太郎の可愛い所が私の形になるまでじっくりと愛して犯し尽くしてあげるからね♡」  どちゅん♡ どちゅん♡ ぐるん♡ ぱつんぱつん♡ ぐっちゅん♡ パンパンパン!!♡♡♡♡ 「い、あ゛あ゛あ゛♡ んっ♡ あふっ♡♡ ああん、ああぁあ゛♡♡♡」 「あ、すごっ、れん、れんたろーの中すっごい。ぐちゃぐちゃに絡みついて離れない。ああ、すっごい気持ちいーね♡♡」 「ああっあ゛あ゛♡ だめっ♡ いまイったばかり…だからぁ♡♡ っびんかんになってる…がら゛あ゛あぁぁぁ♡♡♡」  中に入ったものをずるりと限界まで抜いて、勢いよく奥へ刺し貫く。そんな長くて早いストロークが続いた。ぐちゅぐちゅという水音と、皮膚と皮膚とがぶつかる音にいたたまれなくなる。ひと突きごとに奥の方へ奥の方へと挿入され、前立腺がペニスにゴリゴリと押され、あまりの気持ち良さにさっきイったはずの陰茎は再び勃ち上がっていた。  どっちゅん♡♡♡  フェンは最後にもう一度深く突き入れると、奥の隙間をノックするように小刻みにガンガンと打ち付けた。 「ほら、この先に人工の子宮があるから」  腕を取られ、グイッと身体を起こされて、背面座位になった。上に乗ったことで、ズルズルと自重で身体が下へと沈む。そこでフェンが下から上へ勢いよく打ち付けた。 「ああああああああーーーー♡♡♡♡♡」  ガツンという衝撃を受けたかと思うと、細い道をこじ開けて最奥にフェンの肉杭が届いた。  ぱちゅん♡ 「ほら、蓮太郎」  ぱちゅん♡ 「私の子を、孕んで♡」  ぱちゅん♡ がつん♡ 「蓮太郎、私の♡♡」  ばちゅん♡♡ 「子供を、いっぱい、産んでね♡♡♡」  下から突き上げられるたびに、どちゅどちゅと中が抉られていく。過ぎたる快楽は拷問と同じで、気持ちが良過ぎて気が遠くなってきた。もう身体は限界で、力が入らなくてただガクガクと揺さぶられた。目の前にぱちぱちと星が飛んでは消える。  ♡パチュパチュガンガンガンパツパツパチュンパチュン♡ 「あ゛あ゛あ゛あ゛♡ ダメっ♡ またイくっ♡♡ イっちゃうっ♡♡♡ やあぁ゛ぁあ゛あ゛……♡♡♡♡♡」 「くっ……♡♡♡」  俺がイったと同時に後孔を締め付けたのか、その衝撃でフェンも中でイったようだった。熱いものが身体の中にダクダクと注がれているのが分かった。ああ、熱い。身体が焼け付きそうだ。きもちい、い…………。  そうして俺は意識を手放した。    どれくらい意識を失っていたのだろう。  俺が起きた時、目の前にあったのはものすごい美形の顔。シミやシワひとつない銀色の肌。身体の中から発光しているようで眩しい。下半身にまだ違和感がある。  って。  なんでまだ繋がったままなんだよーーーー!!!! 「あ、おはよう。蓮太郎」 「おはようじゃねえぇぇぇ! なんでまだ挿れたままなんだよおおぉぉ!!」  俺が起きた気配を感じたのかぱっちりとフェンが眼を開けた。口の端でニヤニヤ笑っているのがムカつく。シーツが何の液なのか分からないものでベタベタして気持ち悪い。はい、全部俺の中から出たやつなんだけどさ。カピカピになっていないところを見ると、気を失っていた時間は短かいようだ。 「うみゅっ」  いきなり口づけられて変な声が出た。  口の中に肉厚な舌がうにゅるんっと入ってきて、繋がったままの敏感な身体は快楽に堕ちた。  じゅうじゅう舌を吸われて絡められて、身体の芯が痺れ、飲み切れない唾液が口から流れ落ちた。  やっぱりこいつキス上手い……! キスだけでとろけそう……。  男としての矜持がガラガラと崩れるような気がした。唇を離すとお互いの口と口の間に唾液が糸を引くように伸び、それをペロリと美味しそうにフェンが舐める。 「ずっと栓しておいたから蓮太郎の子宮はそろそろ私の精液をたっぷり飲み込んだよ」 「ンんっ……!!」  ずるりと大きな陰茎が俺の中からゆっくりと出ていった。その刺激でまたイきそうになって甘い声が洩れた。どろりと中から大量の精液が溢れて俺の太腿を濡らし、やっと抜けた安心感と喪失感がない交ぜになった。 「じゃあ次は正常位ね♡」 「え。」  恐ろしいことを言ってから俺を仰向けでころんとベッドの上に転がすと、フェンは両膝の裏を持ち上げて抜けたばかりの後孔に熱い肉杭をぐいっと突き刺した。  もうむりいぃぃぃぃ!!!!  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  で、俺はこんな感じだった。  俺の話を聞いた目の前の狼獣人はぶるぶる震えながら泣きそうな顔で俺を見た。 「大丈夫大丈夫。最初は大変かもしれないけど、だんだん気持ち良くなってくるから」 「そ、そ、そ、そうでしょうか……」 「うん。それにさ……」  そこまで話した所で俺を呼ぶ声がユニゾンで聞こえた。 「「お・か・あ・さ・ん〜〜!!」」  フェンにそっくりな銀色の肌を持つ双子が俺の身体にダイブしてきた。  びっくりしている狼獣人に俺は幸せそうに微笑みかけた。 「子供、すっごく可愛いから! 俺は今、とっても幸せ!!」  …END…  ***** 【補足】  [前には変態、後ろは壁。前門の虎、肛門の狼!!]  正式には[前門の虎、後門の狼]である。一つの災いを逃れても別の災いにあうたとえ。  ことわざの漢字と意味を間違って使っているようだが、前にも後ろにも動けない今の状況と、後門と肛門が同じ読みであり、銀色変態に襲われて自分の肛門が危ないということもあり、このことわざが出てきたものと考えられる。本人はちょっとうまいことを言ったなぁと思っている。  [天高くちんぽ肥ゆる秋!!]  知っての通り、[天高く馬肥ゆる秋]のもじり。  フェンのちんぽが天を向いて大きくなっているのを見て思いついたらしい。今は秋ではなく冬だけど、細かい所は気にしていないらしい。

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