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第2話
さて、王が治めるこの国にはひとつ不思議な行事がありました。
毎年、1年に一夜だけ『星夜』と呼ばれる祭りが開かれるのです。
言葉の通り《《星が降る》》、世にも不思議な夜です。
空の彼方、どこかからパッと現れた数え切れないほどの星々は物凄い勢いで王宮に向かって降り続けます。
さらに不思議なことに、王宮にぶつかる、と皆が悲鳴をあげるところで、ふっ……と全てが消えてしまうのです。
その不思議で美しい光景はこの国でしか見られないということで、近隣の国の王族から気ままに漂う旅人まで様々な人が国に集まり大騒ぎ。
屋台や出し物をする者も出て、国民の1番の楽しみでした。
王とラフェルも出逢ってから毎年、王宮の屋根から2人で寄り添いながら降ってくる星を眺めていました。
王宮に仕えるものたちも、これまで独り寂しげだった王が幸せそうなことを陰ながら泣いて喜び、王宮中が幸福な雰囲気に包まれていました。
今年も星夜が近付いたある日。
王は隣で眠っていたラフェルがすすり泣く声で目を覚ましました。
「ラフェル……?どうしたのだ」
「ずっ……ぐすっぐすっ……っ」
いつでも笑顔で涙を見せることがほとんどないラフェルが止まらない涙を零すその様子に、賢王と言われる王も動揺します。
「一体どうしたというのだ……」
左手で背をさすり右手で涙を拭い、必死に慰めているとようやくラフェルが嗚咽まじりに話し出しました。
「王様が、王様がっ……!」
ラフェルの話によると、どうやら王が死ぬ夢を見たというのです。
動かなくなった王にすがりつき泣きわめく自分の姿も見た、と。
夢と現実が混同しているのか、王の寝巻きの裾を握りしめ再び泣き出すラフェルに驚きつつ、宥めるようにその背にゆっくり手を滑らせる王。
「私はお前を遺して死ぬなどせぬよ」
「はい……はいっ……!」
「だからお前も私を遺して死ぬなよ」
「はいっ約束ですっ……!」
2人はきつく抱き締めあって眠りにつきました。
ただの夢とその件は収められたかに思われたのですが、ラフェルはその後も毎日のように自分より先に王が死ぬという想像に心を囚われるようになりました。
愛するものが死ぬ恐怖というものは胸を掻きむしりたくなるほどもどかしく苦しいものでした。
王はそんなラフェルの様子を王も気にかけながらも、星夜の準備に追われ充分にラフェルに寄り添うことが出来ませんでした。
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