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第4話

「もう少しで日が暮れるね!」 「ああ!もうすぐ降るだろ!!」 頬を紅潮させた人が町を行きかい、今日の星夜のメインイベント、夜空に降る星々への期待に心躍らせています。 数々の屋台が立ち並び、それに人々が列をなしていました。 より星々がよく見えるようにすでに木の上にや屋根の上にのぼっている人もいるようです。 うってかわって、静まり返った王宮で王は《《ひとり》》屋上に立っていました。 「今年も王はおひとりで星を見られるのか」 「ああ、そろそろお妃さまでも娶られたらいいのになあ」 「ほんとになあ。まあ、まだまだ後継ぎの心配はなさそうだけどな」 「確かに。年々若返っていらっしゃるようだ。しかし癒しを与える存在というのも、なあ」 「まあな」 屋上につながる扉の前で護衛に当たる兵士たちの会話も途切れ、再びしんとした静けさが戻ったそのとき。 「ああっ!降り出したぞ!」 「おおー!何度見ても神秘的な…」 国中がどっと沸きあがり、皆揃って空を見上げます。 漆黒の空の彼方から、ひとつふたつと星が現れ地上の人々に輝きを振りまきながら落ちてゆきます。 木々を照らし湖に反射する眩しい光。 やがてそれらは王宮の真上にやってきて、消え失せる直前、一層強い輝きを放ちます。 それによって屋上に凛と立つ王のシルエットがはっきりと照らされ、町の人々は思わず頭をたれるのでした。 あの偉大なる王が導くこの国の永遠の繁栄と平和を願って。 数えきれない星々はまだまだ降り続けました。 人々が騒ぐ大通り、そこから少し入った裏路地でフードを被った魔法使いは静かに輝く軌跡の走る夜空を見上げていました。 「ひい、ふう、みい………。もう50を越したか」 視線は流れる星々に向けたまま、ぼそりぼそりと周りには聞こえない声で話し出します。 「いつから、だったのかのう…。記憶がないとは歯がゆいもんだの。    のう、お前たちよ。おぬしらが言う王はそんなに魅力的なものかのう?  50人の愛した者たちの記憶を亡くし、何百年の時を生きる男はそれほどまでに…素晴らしい男か?   ___愛を知らぬ、いいや。愛を知れぬ哀れな男ではないか」 服の中から分厚い本を取り出し、骨のような指で古びたページをめくります。 1から始まる数字の横にそれぞれぽっかりと不自然に開いた空白。 その空白には恐らく、かつての魔法使いが丁寧にひとりひとりの名前を記していたのでしょう。自分だけでも覚えておこうと。 星になった彼ら彼女らは、その存在を残すことはできません。 ただの文字の羅列であるその名前ですら、全てが消え失せます。 老いた魔法使いが持つ、古びた本の1ページ。 そこに刻まれるただの数字だけが、唯一魔法使いにのみ認識できる星々の想いです。

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