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後日猥談 ─初夜─17(終)
なんだか急に、〝やっぱり好きだなぁ〟と思った。
きっと他の誰も知らない自然体のりっくんを、僕だけが知ってる優越感にも浸ってしまった。
「りっくん……好き……」
「えっ……!」
腕に力を込めて、ぎゅむっとりっくんに抱きついて甘える。
僕が告白する時は、りっくんの胸に顔を埋めるのがテッパンだ。……恥ずかしいから。
「あの……これは誘われているんでしょうか。俺も好きです、とお返事したあと、どうするのが正解なのかな」
「ど、どうするのがって……っ」
見上げた僕の顎が、りっくんの人差し指でクイと持ち上げられる。
分かんないフリで問いかけといて、僕より先に正解を導き出してる濡れた瞳とぶつかった。
あ……りっくん、さっきの目になってる……。
大人げないからがっつかないなんて言ってたけど、ホントはもう一回……したいと思ってるんじゃないの?
僕のお腹に押し当ててるモノが全然治まってないし、ていうか治まる気配が無いし、何ならカウパー溢れてきちゃってるけど。
でもりっくんは簡単にワガママを言えない大人で、りっくんにとってのプライオリティは僕……たとえそうだとしても、自分からは言えないんだ。
だったら、僕が言ってあげるしかない。
僕にとってのプライオリティは、りっくんだから。
「りっくん。僕なら大丈夫だよ」
「……大丈夫とは?」
「わ、分かってるくせにっ」
「きちんと言ってもらわないと分かりません。あ、いえ……きちんと誘ってくれないと俺は気付きません」
「〜〜……っっ!!」
りっくんが意地悪だ……!
わざわざ言い直してまで、僕に言わせようとしてる!
顎を捕らわれていてそっぽを向けない僕は、〝李一先生〟の顔で下半身をギラつかせてる意地悪な恋人を、精一杯の照れ隠しで睨みつけた。
それでもりっくんは、「ん?」と首を傾げるだけ。
僕が〝誘う〟まで、無言を貫く気らしい。
……仕方ない。
年上の恋人のワガママを聞いてあげることくらい、僕にだって出来る……!
「り、りっくんさえ良ければ、もう一回……する?」
視線を外すことも許されない熱量で、見つめられていた。だからしょうがなく、僕はほっぺたを真っ赤にして〝誘った〟。
すると何秒か見つめ合った後、みるみるうちにりっくんの口角が上がって、目尻は下がっていった。
「誘わせてごめんなさい、冬季くん! 素直で純粋な君が好きです! 愛しています!」
「僕もだよ、りっくん……って、もうゴム着けてるし!」
「すみません、堪え性が無いもので……っ」
「もう……っ! それなら最初からそう言いなよ! 僕がりっくんを拒否るわけないの分かってるでしょ!」
勢い任せに両足を開かれた僕がそう叫ぶと、りっくんはしれっとこう返してきた。
「分かっていますし、卑怯だとは思います。やはり俺はスパダリというやつにはなれません。うだつの上がらない三十路手前の、見かけ倒しなただの歯科医師に過ぎないので」
「なっ……」
「けれど冬季くんへの気持ちだけは誰にも負けませんっ。これから毎日、俺は冬季くんに愛情を注ぎ続けます。君の過去の記憶を塗り替えるつもりでいますからね。覚悟していてください」
「…………っっ!」
自分を過小評価しているりっくんは、僕がいくら持ち上げても無駄なんだろうと思う。
ただし、僕にとっては重要なセリフを付け加えたところはさすがだった。
……覚悟、しておくよ。
たぶんりっくんは〝スパダリ〟じゃなくて〝ヤンデレ〟属性だから。
僕が不安を与えたら最後、今よりもっと激しいとんでもない束縛が始まる。
それも悪くないかも……なんて考える僕は、ヤンデレ彼氏からのキツ〜イ束縛を喜んでしまえる、新しい傷を増やさない自傷〝メンヘラ〟。
つまり僕らは、誰が何と言おうと相性抜群ってわけだ。
「りっくん、……大好き」
「俺も、冬季くんのことが大好きです」
気持ちを伝えたら、すぐに同じ想いが愛おしい微笑みつきで返ってくる。
さらに、僕の肩口の痣に口付けたりっくんは、現在も過去も未来もすべてをひっくるめた「愛しています」の言葉までくれた。
──僕は幸せだ。
生まれ落ちてから今日までも、これからも、ずっと。
後日猥談 ─初夜─ 終
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