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上か下か
「益子くん忽那さんの連絡先おしえて。」
「葵の?別にいいけどなんで。」
「ちょっと、オメガ同士の話というかなんというか…」
「デリケートなかんじ?」
「すっごく!!」
朝来てまっすぐに益子の机に向かったことと、まさかの君付けで若干戦かれた。
そんなことはどうでもいいのだ。学に相談しようにも、多分まだ未経験だろうし、経験があるオメガで周りにいる人となれば忽那さんが一番いい。
何を聞くつもりかって?挿れたいのかどうかだよ!!
「ん、おーけ。きいちなら教えてもいいって。ほれ、」
「ありがたきしあわせ!!」
もらった忽那さんの連絡先に早速連絡を取る。折り入ってご相談したいことがあります、位の感じでいこうか。年上の人に連絡することがないからわからん。数秒後、既読がついたあとにキモかわいいおじさんのスタンプで待ってるときた。
「忽那さんのスタンプチョイスよ!」
「捗るオジサンスタンプだろ。俺があげた葵の名前のスタンプつかってくんねーんだよなぁ。」
なんでこんな微妙なものを選ぶのだろうかと益子は若干諦め気味である。僕は親しみやすくてすごく好きだけど、このオジサンの向こう側に儚げ美人がいるとは思えん。もしや新手の自衛なのでは。
「てか学でもよかったんじゃね?」
「学は挿れられたことなさそう。」
「あーーー、って葵に変なこと吹き込むなよ!?」
「大丈夫大丈夫!たぶんね!」
ぽちぽちと連絡を取り、早速今日の放課後に写真館に行く約束をとりつけた。ちょっとアルファには話し辛い内容だと伝えると、益子にはついて来ないように葵さんの方から言ってくれるようだ。
よしよし、万事順調である。益子には悪いが今日だけは忽那さんは僕のものである。
ご機嫌になった僕を疑わしげに見やる益子の視線はまるっと無視して、来る放課後の為に話したい議題についてまとめる為にノートを開いた。
現代文の授業?それはあとから学にノートを見せてもらうつもり満々なので大丈夫。
いつになく真剣な顔でノートを前に悩む僕を見て、益子が嫌な悪寒を感じたらしい。全く失礼なやつだ。
「なんのお構いもできないけど、」
「むしろ押し掛けちゃってすいません。」
所変わって写真舘。放課後迎えに来ようとした俊くんに忽那さんとこに行くと断わって、寄り道せずに会いに来た。
丁度窓際に置いた観葉植物を日の当たる位置に替えていた忽那さんが僕に気づいてくれてドアを開けてくれた。美人に迎えられるとは!益子は毎回こんな思いをしているのだろうか…。同じオメガでも、ちょっとどきどきしてしまう。
「なんかやけに真剣だけど、俺に話せることなら何でも聞くよ。」
「く、忽那さんは…」
「うん。」
「忽那さんは益子に插れたいとか思いますか!?」
余りにも張り詰めた顔で突拍子もないことを聞いたのがいけなかったのか、忽那さんはピシリと固まった。数秒後、ぎこちないながらもなんとか思考が戻ってきたようで、若干頬を染めながら聞いてきた。
「それはー、俺が上になる…ってことだよね?」
「ちんちんいれるほうですね。」
「ちんちっ…」
ぼっ、と着火したように顔を赤らめると手で隠された。うそだろう!?今時しもネタ言わない男子なんているのかと若干衝撃を受けたものの、そういやこれは益子のいう変なことを教えたに入るのだろうか…入るだろうな。後で忽那さんには益子に言わないようにお願いをしておこう。
「つまり、きいちくんは男子として経験してみたい、ってことだよね?」
「だって童貞非処女とかって微妙じゃないですか!?ステータスに乗るわけじゃないけど、気持ち的に…」
「あぁ、なるほど…わからないでもない、かなあ。」
淹れてくれたお茶を染み染みと味わいながら、話半分に聞かないでくれる忽那さんに甘えて思いの丈を伝えてみる。やっぱり僕の言ったことに思うところはあったようで、忽那さんにはそういう経験はないかを聞いてみた。
「俺はきいちくんからその話題が出るまでは意識してなかったかなぁ。」
おっと益子にとっては藪蛇だったらしい。というより益子の男らしさが忽那さんを安心させているのだろうか。そう考えるとまるで僕が俊くんを信頼していないみたいな感じになってないか!?
「ベベベ、別に僕が俊くんに満足してないとかそういうわけではなくて!」
「ん?好奇心でしょ?でも俺が悠也を押し倒せるかっていったら腕力で負けそう。」
「好奇心なんです!!あ、そうですよね。たしかに縛りつけるとかしなきゃうまく行かなさそう…」
確かに、忽那さんが喜々として益子を押し倒す想像は出来ない。むしろ益子に服を破られて美味しくいただかれる想像のほうがしっくりきすぎて納得してしまう。ということは忽那さんは抱かれることしかイメージできないということか。
「近所のえっちなお兄さん…」
「誰のこと?」
「アッナンデモナイデス。」
首を傾げて不思議そうにしている。まだ言ってなかったのかよ!!この感じだと益子も隠しているのだろう。まわりからはイコールでまさか自分につながっているとは思いも寄らないだろう。
「それでですね、俊くんにも言ったんです。やりたいって」
「んぐ、ふふ…断られたでしょ?」
「断られたし、変わりに据え置き型のオナホが届きました。」
「あっはははは!!!」
よっぽど面白かったのか楽しそうに笑う姿に、少しだけ意外に思う。儚げ美人、笑うと結構快活でギャップがすごい。もちろんいい意味でだ!それよりも据え置き型オナホで笑うということは形状も知っているということかな?なかなかにグロテスクな見た目だけど、まあ話しの流れだと笑うしかないよねぇ。
「んふふ、しかも番の両親公認…ふふふ、」
「え、めっちゃツボ浅くないっすか…益子の影響?」
「ぷ、くくっ…ごめん、っ…真剣な話なのにね…はぁ。」
「いや僕もなんかごめんなさい…」
やっと呼吸が整ってきたのか、ふぅ…と一息をついた。ニコニコしながら目尻の涙を拭うと、よしっ。と一つ何かを思いついたようだった。
「実際に使ってみてから考えれば?せっかく買ってくれたんだし。それに視野が広がるかもよ?」
「うっ…やっぱりそう思います…?俊くんが手伝う気満々なのがちょっとだけ嫌なんですよねぇ…」
「大丈夫大丈夫、抜き合いだとおもって。」
抜き合い。たしかに、抜き合いだと思えばいいのか。そうかもしれない。こういうのは捉え方の問題であるに違いない。絵面を気にしてるだけで、やってる本人たちは撮影しない限りは見ることもないだろうし、そう思うと少しだけ気が楽になってきた。
そうすると問題は育代をどうバレずに俊くんの家に持っていくかである。
普通のオナホに比べると遥かに大きいので、トートバッグに入れて持っていくしかなさそうだ。育代を?それこそ絵面ヤバすぎて少しだけ身震いした。
「ちょっと…俊くんのうちに行くときに持ってく方法もふくめて考えてみます…」
「なんか久々に男子高校生みたいな会話に入れて楽しかったよ!どうなったか教えてね!」
「無邪気!!」
ある意味大きな期待を持たせてしまった気がする。
ちなみに桃尻育代の件は益子には言わないようにお願いだけはしっかり忘れなかった。僕えらい。
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