1 / 1

観ている

「またあいつが消えた」 あいつはよく消える 捕まえたと思ったら居なくなる 誰もいない部屋 昨日の夜は熱く絡み合っていた。 それが淡い幻覚の様だった 「また居なくなったのか?」 大学の教室。授業後 友達と話していた 「いい加減別のやつ探せよ」 「俺はあいつが好きなんだ」 「執着しすぎ、だから消えちゃうんじゃないの?」 友達は笑ってバイトあるからと帰っていく。 頭を抱え自分の執着のせいなのかと思い悩む。 トボトボと歩き行きつけのゲイバーへ  「久しぶり、またいなくなったの?今回は長く持ったわね」 店長の皐さんが何も言わずともお酒を出してきた。それを一気に飲み干す。 「無理せずゆっくり待つといいわ、あの子はあれでも一途だから」 「はい」 今回はもう大丈夫かと思ったのに。 いつまでも繋がらない想い。 店長から聞いたのは愛着回避。 彼はそうなのだという。 好かれると逃げてしまう。深くまで愛されると自分はそこまで愛される価値なんてないと、回避しようとする。 それが好きな相手でも。 昨日は酒も入っていたせいでいつもより深く熱かった。それがスイッチになったのだろう。 「次いつ会えるのかな?」 「さあね、根気よく行きなさい。彼と付き合うなら覚悟が必要だって最初に言ったでしょ」 「そうなんだけどさぁ」 お酒が回り始めぐだっとテーブルに突っ伏す。 「寂しいよ、やっぱり」 それから数週間後、「居た」駅前で駆け出し前方で駅から出てきた男の元へ駆け寄った。 「有望(ゆみ)久しぶり」 「日向……久しぶり。どうしたの?」 明らかに挙動がおかしい。 方から斜めにかかるカバンの紐を掴み目を泳がせている。 「いや、見かけたからさ。少しだけハグフレ良い?」 「……ハグくらいなら良いけど」 人気のない道で抱きしめ合う二人。 「キスフレも」 「それは嫌です」 「そっかー」 と有望の背中を撫でた。 「会いたかった」 「ふーん」 そっけなく言いながらも背中に回った手に力がこもる。 名残惜しいが早めに離れた 「また近いうちに会おう」 「気が向いたらね」 有望と別れた。 ほんとはあのまま離れずホテルにでも連れ込んて犯したかった。 有望なら流れでついてきてくれて、やれただろう。 でも、きっとそれをしたら失ってしまう。 もうハグの相手もしてもらえなくなる。 あいつの気が済むまで離れて再開すればまた一緒に要られる。そう思っていた。 それから数週間後再び有望に会えた。 「有望、これを受け取って欲しい」 鍵を渡す マンションの鍵 「いつでも来て、住所はここ。小さい鍵は有望の部屋の鍵だ。好きに使っていいから」 このために新しいマンションに引っ越し、鍵の部屋を作った。有望会いに来たいときはいつでも会えるように。 しかし、「いらない。こういうのやめて」 鍵は突き返される 「僕にもう構わないで」 終わった。やりすぎた。会いたくてたまらなくて。それなら 「ちょっとやめて、離して」 ホテルへつれ込みむりやり犯す。 「これが済んだらもう終わりだ。有望にはもう構わない」 激しく犯し続け気付くと夜12時前。 5回はした。溜まっていたせいだ。 気持ちも性も溜め込んでいたから。 眠る有望を置いて、そっとお金を置き部屋を出た。 もう関わることはない。 そのまま皐さんのバーへむかった。 「え、うそ、別れたの?」 「はい、もう構わないでと言うので、ホテルでめちゃくちゃに犯してお金だけおいてきました」 心ここにあらずとはよく言ったものだ。心に何もなくなるとロボットのようになる。  「えー、やだー、殺されたりしないでよね」 皐さんは冗談混じりに言ったが、正直笑えない。ありえないことではない。 帰ろうと店を出ると有望が待っていた。開きかけた傘を閉じる。 「なに?」 「やっぱり、鍵、ほしい」 有望に鍵を渡して、駅へ向かう。 有望は後からビニール傘をさしついてきた。 タクシー乗り場でタクシーを見つけ乗り込む。 「来いよ」 有望に言うと有望も乗り込んで来た。 何が良かったのか分からないが、有望がそばにいてくれるなら今はそれでいい。 マンションにつき部屋に入り、有望の部屋を教えるとそこに入って早速鍵を閉められた。 「ちょっと辛い」 簡単な夜食を作り食べ終え、ビールを飲み干し、風呂へ向かった。 ドアを開けると、全裸の有望がいた。 有望は驚いて身を縮こまらせる。 「ごめん」 思わずドアを閉めた。 「有望の体。こんな明るいところで久しぶりにみた」 股間に手を伸ばすと反応している。さっきしてきたばかりなのに。 再びドアを開けると、有望はまた驚いていた。 「もう一回したい」 ズボンのボタンを外し有望を後ろから抱きしめた。 「やだ、さっきした」 「さっきはさっき、今は今」 当てがい一気に腰を打ち込むと簡単に入った。 「なんで?なんで?」 「むりやりされるのが好きだからついてきたんだろ」 「違っ。やだ」 有望が泣くのを無視して犯した。 愛なんて感じられない。 その行為に涙が出た。 有望を愛してるのに 「なんでそっちが泣くの?」 「有望をまた失うのが怖いよ」 有望は返事をしなかった。その日は一晩中おかし続け、次の日は休んだ。 起きると、有望は居なかった。 想像は出来ていた。 しかし、夜になると有望は帰ってきた。 「有望……」 「ただいま」 「おかえり」 その会話だけで有望は部屋に入って鍵をかけた。 その日は顔を合わせることなく次の日に目を覚ますと、有望は出掛けていてテーブルに封筒が置かれていた。 封筒には、今月の家賃とかと書かれていてその中にはお金が十万円入っていた。 「そんなに高い部屋じゃ無いって」 思わず笑えた。有望がこの部屋に住むことを望んで受け入れてくれた。それが素直に嬉しかった。 「どうしよう、すごい嬉しい」 お金は正直いらないが、返すと有望はまた気を使うだろう。そう思い貯金に回した。 「なに?よりを戻したの?それで、軟禁?」 「人聞きが悪いよ、あっちから鍵をかけてるんだから軟禁されに来てるの」 「ほんと分からない子ね。いい子なのにはかわりはないから大事にしてあげなさい」 「当たり前だろ」 皐さんと話してるとスマホが鳴った。 見ると有望からのメール 助けて、という文字とともに住所が書かれている。 「ごめん、皐さん付けといて」 「ちょっと!どうしたの?」 返事もせず店を出た 書かれた住所に行くと、でかい建物があった。 警備などはなく、中に入り有望に電話をかけた。 すると遠くで音が聞こえる。静かなビルの中歩くと音が奇妙なくらい響く。 「全く誰だ?友達か?」 男の声が聞こえ 「知らない」 と有望の声がした。 慌てて駆け出す。 「ほら、出てお前の声聞かせてやれよ」 「やめて!」 その声が聞こえると通話が繋がった。 それと同時に有望の喘ぎ声が通話口とトイレの中から聞こえてきた。 すぐさまトイレに駆け込み、ドアを強く叩く。 「ここを開けろ!」 「あ?今便秘中だ」 「遅漏なだけだろ」 そう言うと中の男は怒ってドアを開けた。それを殴り飛ばし、踏みつけた。 「有望、来い」 有望は泣きながら出てきて、すがりついてきた。 「俺は社長だぞ!」 「社長が何しても良いのかよ」 と日向は社長のはみ出し反り立ったそれと、顔が映るよう写真を撮った。 「この人係長だよ」 「じゃあこの写真を社長に送っといてやる」 「やめろ!」 男は慌てて起き上がろうとするが、それよりも早く逃げ出した。 外に出る前に有望の衣服を簡単に整え、外に出るとタクシーを拾った。 すると有望は安心し、笑い出した。 「おかしい、係長があんな姿で倒れてるなんて」 笑いながらも有望の目からは涙が溢れていた。 「有望、もう大丈夫だから。あれは会社の上司なの?」 「うん」 「なら仕事場は変えよう。新しい仕事を探せばいい」 「それは会社に迷惑がかかるから」 有望はそれだけ言ってその後は黙って泣いていた。 有望は仕事をやめ、新しい仕事についた。 その日から有望は少しづつ心をひらいてくれるようになり、順風満帆な日々が続くと思っていた。 しかし、有望はまた消えた。 今度はどこに行ったのか分からない。 鍵は置いていって居ないのでそのうち帰ってくるはず。 「あら、また居なくなったのね。いらっしゃい」 再び皐さんの店を訪ねていた。 勝手にお酒が出てくる。それに少し安心する。 「今回は何をしたのか全く心当たりが無くて」 「回避型はそういうものよ、まあ飲みなさい」 慣れては居るが、やはり居なくなるのは悲しいし寂しい。でも好きなことには変わりなく、待つことは苦ではなかった。 また数週間がすぎ、警察から連絡が入った。 「有望が……死んだ?」 「はい、身元確認をしたいのですが、携帯にあなたの連絡先しか入っていなくて、ご家族の方の連絡先をご存知ないですか?」 警察が言葉続けていたが、全く耳に入ってこなかった。 その後どうしたかは記憶にない。 いつの間にか葬式が終わり、部屋に一人残された。 有望が死んだことに現実味がなく。涙も出なかった。 有望は自殺したそうだ。 何があったのかは不明。森の中で首を吊り死んでいたそうだ。 有望は自殺なんてしない。 探偵にも頼み調査をしたがなかなか情報は見つからなかった。 手は尽くした。有望が昔勤めていた会社の前のカフェで休んでいると隣の席から会話か聞こえてきた。 「しかし、惜しいよな。吉信(よしのぶ)が居なくなってほんと社内に潤いがなくなってさ」 「でも首締めプレイってやりすぎただろ、さすがに。社長がなんとかもみ消してくれたみたいだけど」 「逃げた腹いせに社員全員でってやりすぎだよな」 「最後になるなら一発やっときゃよかった」 吉信、それは有望の本名。頭を締め付けられるような感覚がした。視界が歪み、しばらく立ち上がれなかった。 要約すると有望は前の会社の社長の他、社員に輪姦され、その内の一人が首締めプレイで誤って殺したと。そして社長がもみ消した。 全員殺してやる。 席を立ち店を出た。 準備を整え、会社に向かう。夜の警備が薄いのは知っている。 夜中に忍び込み、全員が出勤する時間を待った。 就業開始の時間。皆が各部屋に集まり朝礼をしている時に動いた。ガソリンを巻きながら階段を登り屋上につくとマッチに火をつけ、離れて投げ込んだ。 それは一気に建物内に燃え広がり、建物を焼き尽くした。 一足先に準備していた方法で逃げ出し、マンションに戻った。 これで終わりだ。 有望の部屋の前で足を止める。有望が来てから、死んでからも一度も入ったことはない。 そっと部屋を開けると、そこには盗撮したであろう写真が壁に貼り付けられていた。 そこにあるPCモニターには盗撮の映像がリアルタイムに映っていた。 その盗撮はこの家の中。 自分が有望を犯してる所だけではなく、料理をしているところ、テレビを見ているところ、風呂に入ってるところ、トイレ、洗濯機、食事、自慰をしているところ……。その写真が壁に一面に貼られていた。 有望は俺の事をずっと見ていたんだ。 それを知り涙が溢れた。嬉しさと、失った悲しさ。 写真から位置を逆算し、そこを探るとカメラが見つかった。 しかし、それはそのままそこに置いておいた。 有望が見ていてくれる気がしたからだ。

ともだちにシェアしよう!