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楽園④
離れていく手を無意識に掴んでしまい、湯田の動きが止まる。
「なに、シノ」
「…」
「言わなきゃ分からない」
"わからない"?
わからなくたっていいよ。だって、これは俺の汚い部分だから。
「…なんでもない」
ごめん、と手をゆっくり離せば、諦めのような息を吐き乱暴に頭を掻いた湯田は今度こそ間名くんのところへ行ってしまった。
あぁ…行っちゃった…
「…」
「ねぇねぇ、シノ~」
名残惜しそうに湯田、見つめてたら遠慮なく矢沼が俺へアドバイスという名の凶器を刺し、胸を抉る。
"必死に縋って、綺麗な部分だけを愛されようとしてるでしょ?"
くいっと肩を引き寄せ急接近してきて耳元で囁かれたその言葉に、初めて矢沼を睨み付けた。
「…矢沼は、そんなに俺が嫌い?十葉くんと連絡先交換したから?」
「それは気に食わないんだけどね~。僕はシノのこと大好きだよ、シノの全部を雅貴に見せてあげたら満点なのに。そんなに信用ならない、僕の幼馴染は?」
そりゃ、簡単にすべてを信じるなんてできっこないよ、俺は。
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