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第17話
「ごめん。仕事の用で、手が離せなくて」
「大丈夫です」
即答する。全然、大丈夫だから。そんなに申し訳そうな顔をしないで。相良さんは眉毛をハの字にさせて、「ごめんね」と言う。
「俺、このあと仕事なんだけど……あと10分で出なきゃいけないんだ。その前に」
相良さんが口を閉ざす。なにか、言いにくいことでもあるんだろうか。ちょっと躊躇ったあとで、相良さんは人のいい笑顔を浮かべて言う。
「連絡先交換しない?」
「えっと……」
僕が少し戸惑った素振りを見せると、相良さんもわたわたとし始める。
「あ、の。変な意味じゃなくて。なんていうのかな、またお酒でも飲みながら話が出来たらって思って。こんなおじさんは、嫌かな?」
おじさんなんかじゃないよ、と言いたくなった。僕は誰かと、それも昨日会ったばかりの人と連絡先を交換していいものかと悩む。でも、これからも長く仲良くしてもらいたいし……そう考えた僕は、自らSNSアプリのQRコードを見せていた。
「これ、僕のです。読み取ってもらってもいいですか?」
なんか、恥ずかしい。相良さんは「よかった」と安堵して、カメラをかざす。そして、今度は相良さんがQRコードを見せてくれた。すかさず、カメラに収める。連絡先、交換しちゃった。やばい……嬉しい。
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