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口寂しさを、紛らす方法
「お前なぁ‥‥‥ただでさえ食が細いのに、んなもんばっか食ってるから、更に飯が食えなくなるんだろ?」
付き合い始めたばかりの恋人 ケンイチが手にしていた板状のチョコレートを奪い取り、ほんの少し苛立ちながら言った。
床に押し倒し、じっと顔を覗き込む。
すると長い前髪の下、ケンイチの瞳が戸惑ったように揺れた。
怖がらせたいワケじゃ、ない。
勿論びびらせて、支配したいワケでも。
だけどやはり甘やかし過ぎるのは良くないと考え、わざといつもより少し強めの口調で告げた。
「なぁ‥‥‥俺、怒ってるんだけど?」
すると彼はほんの少しだけ口角を上げ、笑った。
恐らくそれは他の人間からしてみたら、気が付かないほどの小さな変化。
しかし滅多に表情を表に出さないケンイチの笑顔に、つい一瞬見惚れた。
その隙をつくように彼は俺に向かって両手を伸ばし、襟ぐりを掴んで引き寄せると、唇をキスで塞いだ。
突然の事に驚き、再び見下ろすと、ケンイチは真っ白な肌をほんのり赤く染め、珍しくちょっと大きな声で言った。
「だって‥‥‥だって、口がさみしいんだよ!」
は?なんだよ、それ。
‥‥‥突然のデレは、ずる過ぎんだろ。
「ったく。飯はもう、出来てるから。
‥‥‥後でちゃんと、食えよな?」
彼以上に真っ赤であろう顔を隠すため、ケンイチの小さく華奢な体を強く抱き寄せた。
【…fin 】
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