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第81話

 6ー12 神木の王  「この木は、死にかけているんです」  クロネが俺の背後から声を発した。  俺は、クロネの方を振り向いた。  クロネは、儚いほどに美しく俺に微笑んだ。  「これは、この世界をささえるもの。魔王城と一対となるこの世界の柱です」  魔王城と?  俺が問いかけるように見上げるとクロネが続けた。  「本来、この木にも魔王城と同じように核となるお方がおられるのですが、この木には、もう何百年も核となる者が現れませんでした」  そうなんだ。  俺は、滅びゆこうとしている木へと近づくとそっとその幹へと触れた。  すると。  ぽぅっと辺りが白く輝く光に包まれたかと思うと、俺の回りに小さなもふもふが集まってきた。  何これ?  その綿のようなものたちは、俺を取り囲み包み込んでいく。  何?  俺がちょっとしたパニックになりつつあるのに気付いたクロネが声を発した。  「お前たち、やめなさい!」  クロネの声にもふもふが一斉に飛び散っていった。  クロネは、ぼんやりと立ち尽くしている俺に言った。  「あれは、この木に住まう精霊たちです。悪気はないので許してやってください。決してあなたを脅かそうとしたのではありません」  クロネは、俺に語りかけた。  「ここにあなたを招いたのは、理由があります」  そうだろうとも。  俺は、クロネをじっと凝視した。  俺には、ききたいことがいっぱいあった。  クロネは、俺の手をとると、顔をよせて囁いた。  「あなたの身ごもられたお子は、我々が何百年も待ち続けたこの神木の王なのです」  マジで?  俺は、ばっとクロネから身をひいた。  クロネは、俺を引き寄せるとなおも耳元で告げた。  「あなたは、これから多くの魔族の血をひく子供たちを生むことでしょう。その子たちの誰もがこの世界にとって欠かせない存在となることでしょう」   なんですと?  俺は、クロネの方を見た。  クロネは、にっこりと微笑んだ。  「どうか、お忘れなきよう」    俺は、ゆっくりと目を開いた。  そこは、俺のカナンの村の家の寝室で俺は、そこに横たわっていた。  「大丈夫か?ティル」  心配そうに見つめるハツ様の姿に俺は、はっとして起き上がった。  掛布を捲る。  膨らんだ腹に触れると俺は、ほっと吐息をついた。  よかった。  子供たちは、無事だ。  

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