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第108話
9ー1 破壊獣
レクルスが神木の王となったことによって俺は、魔王城を挟んだ2つの世界を自由に行き来できるようになった。
シロアと再会を果たした俺をシロアは、黙って抱き締めた。
俺は、シロアのことも好きだ。
だけど、俺は、もうシロアの子供を産んでやることはできないだろう。
俺がそう言うとシロアは、笑った。
「たとえ、子を産まなくてもお前が私のただ1人の伴侶だ」
シロアの優しさが俺には、心地よく思われた。
だけど。
俺は、このときすでにシロアの子を孕んでいた。
そのことを俺が知るのは、もっと後のことだ。
シロアは、再会した後もとの世界に戻ろうとする俺を引き留めた。
「お前のもといた世界は、近々滅ぶ。それでも戻るのか?」
「ああ」
俺は、シロアに頷いた。
「俺のいるべき世界は、そこだから」
俺たちのいる世界を滅ぼす破壊獣とは、何なのか?
俺は、ガイたちに連れ戻されたときにその話をした。
だから、魔族も破壊獣を探しているわけだったが、まったくその影も形も見えなかった。
俺は、シロアに訊ねた。
「破壊獣って、何?」
「それは」
シロアが俺に話してくれたことによると、破壊獣とは、『渡り人』がもたらすものなのだという。
俺たちの世界とシロアの世界、どちらかに『渡り人』は、訪れる。
そして、『渡り人』の訪れた世界は、滅ぶのだという。
しかし、俺たちの世界では、そんな話はきいたことがなかった。
俺たちの世界では『渡り人』は、重要視されても決して忌むものでは、なかった。
シロアたちの世界とは、『渡り人』の意味そのものが違うのかもしれない。
だが、シロアは、『渡り人』がいつでも世界の終わりをもたらすのだという主張を変えることはなかった。
シロアの世界にいる星読と呼ばれる予言者たちもそう言っているのだという。
とすると、奥様が世界を滅ぼす破壊獣をこの世界にもたらすのだろうか。
だが、奥様は、ちょっと変わっているけど、世界を滅ぼすほど邪悪な存在だということはない。
「あの女自身が破壊獣なんじゃねぇの?」
テオは、そう言うのだが俺にはとても納得できることではなかった。
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