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98日目

「む、むりだ……っ、こんなの!」 雲雀の件も落ち着き、残るは俺一人になった。どこに引き取られるか決まっていないのは不安ではあるが、それよりも今はもう一つの方がよほど心配だった。つまり、ここ数日ずっと繰り返している後孔のことだ。 なんとか二本目までは入ったが、うまく解れる気配がない。気持ちいいかと聞かれたら、それはもう全くで、痛みや違和感の方が強すぎる。 それでもなんとか三本目が入り、ようやくここまで来たかと安堵したのもつかの間。あまりの狭さに突っ込んだままの指はぴくりとも動かない。 「あーもう、なんで、こんな……っ!」 女将さんに聞かれたら叱られるような悪態を散々吐き、冷えきった指先を必死に動かそうとする。なんて悲しい努力なんだ。 しかし、明後日には周が戻ってくる。その時、きっと今までどこで、何をしていたか話してくれるだろう。内容によっては夜が明けてしまうかもしれない。そうなったら、俺たちに与えられた時間は想像以上に短いのかもしれない。 百夜目に床入りする、とは言っているし、お互い理解はしている。でもその先は何も決まっていなかった。 「……くそっ」 胸の奥がツキンと痛む。陰間として周に抱かれるのだ。その先なんて期待してはいけない。分かっているのに切なくなる。雲雀は女将さんたちに愛されているのに。 俺は、誰を愛せばいいんだろう。 こんなにも感傷的になるのは、きっと、雲雀たちを見ているからだ。無条件に愛し、愛されている。それが羨ましいのだ。 でも俺の場合、そこに紛れもない欲が混じっている。執着とも言えるだろう。だから苦しいのだ。涙が溢れて止まらない。こんなにも切なくなるのなら、誰かを好きになんかなりたくなかった。 「はー……っ、うっ」 枕元に置いていた香袋に鼻先を近づける。もう随分と薄くなってしまった白檀は、それでも熱を起こすには十分だった。 「あ、まね、っ」 好きになりたくなかったなんて、そんなの嘘だ。周でよかった。周を好きになれてよかった。たくさんのことを教えてくれて、溢れんばかりのものを与えてくれた。 未来というものが輝かしいのだと、もう忘れきっていたことを思い出させてくれた。それだけで、もう。 「ん、あ」 不意に、内壁がひくりと蠢いた。周のことを思う度に奥へ奥へと誘ってくる。白檀の香りを体内に入れると、またキュゥと締め付けてくる。 まるで、俺の体が周を求めているかのように。 「あ、あ、っ、やだ、なにこれ、っ……!?」 今までと明らかに自分の体が変化していた。痛みはない。違和感も、感じられない。それまで頑なだった内壁は一気に緩み、奥から春水が溢れてきた。指先に絡みつくヒダは、無数の舌先みたいにしゃぶりついてくる。 息をする度に中は締め付けられ、吐き出す度に甘やかな声が漏れていく。堪らず口を塞いだが、喘ぎ声を制御することはできなかった。 「んーっ、んぅ、う、っ、うぅっ……!」 気づいたら指を激しく動かしていた。粘ついた音が大きくなっていく。腰が震えて、視界が涙で潤んだ。 やだ、どうしよう、中で感じるなんて、おれ、そんな。 「んぁ、あ、ああ……っ!」 身体中に甘い痺れが走った。目の前がチカチカする。もう少しで絶頂に辿り着けそうなのに、そのあと少しが物足りない。 きっと、この奥だ。もっと奥。俺の指じゃ届かいところに触れられたら、もう何も耐えられないだろう。 「あと、ふつか……ながいな……」 中途半端に快楽の残った身体は、逆に言うと何もかもを刺激として受け取ってしまう。深く息をした途端、またしても中が指を締め付けてしまい、再び喘ぐことになってしまった。

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