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突然の失恋②

 彼女よりも可愛くて、仕事も出来て、優しい人が相手でも、いつも長くは続かない。  『やっぱりこの子は、史織じゃないから』などという身勝手な理由で、別れたくなってしまうのだ。  30歳までお互い独身だったら嫁に貰ってくれと、いつも冗談交じりに言われていた。  事ある毎に大好きな彼女がそんな風に言ってくれるものだから、途中から、僕もすっかりその気になってしまった。  そうこうしているうちに、あっという間に過ぎ去った29年と365日の人生。  照れ屋で不器用な子だから、彼女よりも少し早い僕の誕生日が来たら、自分からサプライズでプロポーズをしてやろうと企み、明日を密かに心待ちにしていたというのに。  ……期日を迎える少し前に、その口約束はあっさり無効となってしまった。 ***  その翌日。仕事終わりに、半ばやけくそで訪れた結婚相談所。   勝手に購入した婚約指輪を単なるプラチナとして二束三文でリサイクルショップに売っ払った金を使い、自分への誕生日プレゼントとして、お試し的な感じでデータマッチングコースに登録するためやって来たのだ。  そしてそこで再会したのは、そう。……高校時代のクラスメイトにして学内のヒエラルキーの頂点に君臨していた男、早乙女(さおとめ) 遼河(りょうが)だった。  とはいえやたらと目立つ彼の事を僕は知っていたけれど、高校を卒業してからもう10年以上経っているのだ。  彼の方は恐らくド陰キャ代表みたいな地味な僕の事なんて、覚えてすらいないだろう。  そう考えたから、知り合いのいる相談所に多少の気まずさを感じながらも、早乙女くんだとは気付かないふりをして登録の手続きを済ませた。

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