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第1話 悪役令息は弟の失敗の責任を取らされる* 01-1.

 カルミア伯爵である父親、トム・カルミアは眉間に皺を寄せていた。 「レオナルド。よく来たな」  伯爵であるトムが普段から仕事をしている執務室に呼び出されるようなことに心当たりがない青年、レオナルド・カルミアは真っすぐにトムを見る。 「お前に頼みがある」  トムは手招きをして、レオナルドに近くに来るように指示をした。 「なんでしょうか」  それに対して、なにも疑うこともせずにレオナルドはトムに近づく。  ……手紙?  そして、トムの目線を追いかけるように机に置いたままになっていた便箋に視線を落とした。長々とした文章が書かれている便箋の内容に目を通すレオナルドを制止することもせず、トムはそれを読み終わるのを待っていた。 「……父上」  書類にはとんでもない内容が書かれていた。  すべてに目を通し終わったところでレオナルドは気まずそうに声をあげた。 「何かの間違いではありませんか? アルは騎士団員として節度のある日々を過ごしていると言っていたはずです」  レオナルドの言葉に対し、トムは大きなため息を零した。 「そうだ。アルフレッドの言葉を信じるのならば、この手紙は、侯爵家の言いがかりかもしれない」  トムは忌々しいと言いたげに便箋を掴んだ。  サザンクロス侯爵家から送り付けられた手紙には長々と文句が書かれている。それはカルミア伯爵家の三男、アルフレッド・カルミアが犯したとされる罪状に対する内容だ。 「だが、侯爵家の言い分を否定する権力はない」  王家に次ぐ権力を持つサザンクロス侯爵家の言い分は、たとえ、でっち上げられた嘘であったとしても本当のことのように扱われてしまうだろう。 「条件を飲まなければ多額の慰謝料を求めると書かれている。その上、国王陛下に伯爵家の取り壊しをお願いするとまで書かれている」  トムは手紙を握りしめた。 「サザンクロス侯爵家ならやりかねないのは、お前だってわかるだろう?」  忌々しくて仕方がないと言わんばかりの声をあげる。  権力の差が大きい。伯爵家といっても目立った功績をあげていないカルミア伯爵家では、王妃陛下を輩出したサザンクロス侯爵家に立ち向かうことはできない。

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