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「……説得?」  ジェイドが見る限り、結婚に納得しているのはシェリルしかいない。  それもセドリックに嫁いだことで家族の一員になった義理の姉だ。  異常なまでにレオナルドを外に出さないように使用するセドリックの意向そのものに賛同していなかった可能性が高い。 「俺には納得しているようには見えないが」 「兄上は納得した」  ジェイドの言葉に対し、レオナルドは即答した。 「……そうか。あれが納得している顔か」  納得しているとは思えない表情をしているが、それをからかうようなことはしない。 「馬車を待たせている。行こうか」  ジェイドに声をかけられ、レオナルドは頷いた。  それから背中を向けていたセドリックたちに顔を向ける。 「兄上。アル。義姉上」  三人に呼び掛ける。  反応をしたのはセドリックとアルフレッドだけだった。シェリルは興味がないというかのように色を塗り終わったばかりの爪を見ていた。 「今までありがとう」  レオナルドの言葉に対し、セドリックだけが眉を潜めた。  結婚を控えた姉弟の言葉としては場違いのものではないだろう。  子どもに興味を抱いていないトムや社交界で忙しいアリシアに代わり、レオナルドの教育に関する取り決めの権限を任されたのはセドリックだった。  まるで親に向けるような言葉を口にした自覚はなかった。 「ジェイド公子。話を――」 「お二人とも、このバカはわたくしが抑えておきますわ。馬車を待たせているのでしょう? 早くお行きになったらいかがですか」 「痛い! シェリル! 痛いって!!」  セドリックがなにかを言おうとした途端、シェリルが躊躇なく足蹴りをした。  そのまま、自身の足をセドリックの足の上に置き、遠慮なく踏みつける。 「早く行ってくださらない?」  シェリルの表情は変わらない。 「レオナルド。わたくしもお客様の前で夫を殴る姿は見せられませんのよ」  抵抗をしようとするセドリックの後頭部掴み、今にも髪の毛を引き抜きそうな勢いだった。

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