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第12話 C-01 和磨×Nao ⑥

 「どうしよう」 トイレの言い訳も時間の限界あるしずっと現場離れて隠れてるわけにもいかない。  「はぁ、、早く終わらないかな」  さすがにいい加減トイレを離れてぷらぷらと外へ出る。駐車場で時間潰しの方法を一生懸命考えていた。  「こんにちは。お弁当お届けにきました」 車が駐車場に入ってきて、ロケ弁の配達のお兄さんに声をかけられた。  「これどこに運んだらいいですかね?」  「あー…じゃぁこっちへ」 出演者、スタッフ全員分の弁当となれば20個程あってあってそこそこの重量だ。  「手伝いますよ」  「あっすいません、ありがとうございます」  エレベーターで3階へ上がり、スタジオ隣の控え室までお弁当を運んで長テーブルいっぱいに置く。お箸やおしぼりも別で渡され、下っ端ADらしい仕事をこなす。  「ありがとうございました。伝票にサイン貰えますか?」 渡された伝票に名前を書いてると、隣のスタジオから漏れる声と漂う異様な雰囲気を察したお兄さんに小声で何か言ってくる。  「あー…これって何かの撮影中ですか?……ドラマとか?」  「……まぁそんな感じですね。はい、これ」  「ありがとうございます。これ領収書です!またよろしくお願いします」 隣のスタジオをチラチラと横目で見ながらエレベーターで乗り込んで目があったお兄さんに一礼した。    無理もない。健全な男子ならAV撮影現場に鉢合わせしたものなら興味深々にもなるだろう。 現に友人達には"タダでそうゆうの間近で見られるなんて、おいしい仕事だな"なんて数え切れない程言われた。以前までの僕なら同じように思っていたかもしれないけど今は全く違う。  それは好きな人が出ていなければの話――  結局は彼と僕を繋ぐのは仕事場イコール"セックス"ありきでしかない。悲しいくらいわかり易い関係なんだ。  そんなことで結局、お弁当によって再び地獄の空間へ連れ戻された。丁度いい。しばらくこの準備をしていた事にして逃げ切ろうと、ビニールの中のお弁当を開けてみる。食欲のない日に限って嫌がらせのように、そこそこ高級な中身の贅沢な弁当だった。  「はい!じゃぁ、一旦休憩で!」 聞こえたその声に控え室の椅子から立ち上がり、スタッフが流れ込んで来るのを待機する。  「あれ?岩咲、ここにいたの?……お腹はもう大丈夫?」 嘘ついた先輩に本気で心配されて居た(たま)れない気持ちになった。  「お疲れ様です。あっ、良くなったみたいです。すいません、抜け出して……」  ぞろぞろと他のスタッフも入ってきてお弁当に群がり少し遅めのお昼休憩が始まる。  「それなら良かった。あっ、この後の撮影少しスケジュール変更あって少し早めに終われそうだよ」  「そうなんですね、よかったです。あっ、先輩もお弁当どうぞ。僕ちょっと監督達に届けてきます」  それは好都合だ。あとはやるべき事をならないと。監督、女優さん、そして彼のお弁当を三つ持ってそれぞれの控え室に届けに行く。  監督を探していると彼と話している姿見えた。スケジュールの確認をしている様子だ。少し離れて見守っていると、数分して会話を終えた監督が歩いてくる。  「監督お疲れ様です。これお弁当です」  「おっ!ありがとう」 受け取った監督はスタジオを出ていくと彼と二人の空間になる。急に緊張感が増して唾を飲んで、息を吐いて平常心を保つ。  「Naoくん、お疲れ様。お弁当持ってきた」  「ありがとう」  「今日少し早く終われそうだってね」  「うん。その分、明日の撮影が長引くかもって言われたよ。俺、2日連続の撮影だって知らなかったからちょっと焦ったけど」  渡したお弁当の上に明日の台本を置いて言った彼。少し困惑した表情の彼だが相変わらず僕には笑顔を向けてくれる。  Naoくんごめん。明日の撮影を伝えなかったのは僕だ。今日はどうしても一緒にいたいから。自分勝手を許して欲しい。  「この近くにいいホテルあるかな?明日も撮影なら近くに泊まった方がいいからさ」 その言葉を待っていた。言うなら今しかない。  「じゃぁさ、も、も、もし宿泊先決まってないなら……うちに泊まらない?家ここから近いから。そうしたら、あ、明日も楽だと思うし!」  とうとう言ってしまった。緊張して呂律(ろれつ)が上手く回ってないけど、こんなに勇気を出したのは大学の時に好きだった女の子に告白した時以来だ。  彼の自宅は遠く撮影の度に都内まで電車で2時間かけて来ている。撮影が連日の場合、近辺のホテルなどに泊まっているのは知っていた。 だけど……突然誘って来てくれるのか。 彼の中で僕の位置付けはどこかわらないけど、現場でたまに会うだけレベルの男の家に来る補償はない。(イチ)(バチ)かの賭け。  「じゃぁ、、お邪魔しようかな。今から泊まる場所探すのも大変だし」 少しだけ間があったが思いの外あっさり承諾した彼をじっと見つめて、ハッと我に返る。    「あっ!本当に!?あ、あ、安心して!四畳半一間のボロアパートじゃないから!部屋も2つあるし!お風呂も付いてるから!」 ADなんてきっと安月給で風呂なしボロアパートなんだろって思われてたら(しゃく)だし、何より気が変られたらそれそこ困る。  「ハハハっ。キミって面白いよね。泊めてもらうんだから文句は言わないよ。じゃぁ、ごめんけどお世話になります」  「ううん。全然ホント平気だから!こちらこそよろしく」  騙すような様なやり方してしまったけど、自宅に誘う事はなんとかクリア出来た。嬉しさと何だかわからない感情を必死に抑え込んで、残りの撮影がスタートした。  

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