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第1話 ことの始まりはキミの言葉。
「杉原先輩は泳げますか?」
この辺りの学校がプール開きをする6月中旬に、叶とウィンドウショッピングしてたときに、下着屋が水着屋に改装していたのを見て口にしたのかな。
「泳げるけど、何で?」
「私……泳げないんです」
だよね、間に『は』入ってるし。
でも『は』が入ってなくても何となく分かるよ、叶は結構運動音痴なほうだもんね。
「あっ!!ですがだるま浮きは10秒位出来ますよっ」
叶は必死になって言っても……そんなんじゃ自慢にもなんないよ?
「それいつの話?」
「小学六年生の頃に出来るようになりました」
ちょー可愛く言ってるし、実際ちょー可愛いんだけどね、今叶は高二だよね。
「中学は?」
「えっと…虐めに……合っていましたし、身体に痣が合ったので……っ保健室で仮病を使って寝ていました…」
やっぱそうだよね……叶を虐めていた俺の義弟『亮』が憎い。
「ですが私立中学に転校してからは、父さんがプールの授業に参加しなくて良いと言われて、それからは入ってないです」
「……」
親父さんは叶がまた虐められないように護ってるんだろうけど。
うちのガッコには元々プールがないから、俺は何の疑問もなかったな。
「プールとか…海とか、水に触れるって夏らしくて良いですよね」
まるで水に恋い焦がれてるみたいな遠い目をしている叶を見ていたら……誘うのは嫌なんだけど、つい言いたくなっちゃって……やっぱし俺は言葉にしてた。
「俺と夏休みにプール行く?」
「!!行きますっ」
「でも多分叶は人酔いするよ?」
「……ですよね。うちには流石にプールないですから」
俺はそれのほうがビックリだけどね。
『諦めなよ』なんて言いたくない……叶は箱入りだから色々挑戦して欲しい。
けどカレシとしては超絶美少年の笹倉 叶の裸とか着替えとか水着姿とか回りに見せたくない!!
でも……叶の水着姿は見てみたい!!
だから、つい邪な心がまた口から出てた。
「試しに行くだけでも行ってみる?」
絶対に芋洗い状態で叶の人酔いは避けられないかも知れないけど、冷たいプールに入れば少しはマシになるかもしれない。
「はいっ!!」
こうして叶と俺で夏休みにプールデートの約束をした。
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